第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

「私には同僚で親友だった、木本(きもと)と言う男がいました。
私と歳が近いのと、木本も読書が趣味だと言う事もあり、私達はすぐに仲良くなりました。
木本も肆方院様には良くして貰っていたと思います。」

八百代は木本と言う人物の話を始めた。話す表情はまだ若干悔しそうな顔ではあったが、
この話をしない事には、お互いが先に進めないのは、わかっている様子だった。
何より、警備室にあるラジオから、当人が未練を訴えていたのだから、話す他ないだけれど。

「木本は・・・あいつは、ある事件を起こしたんです。」
「ある事件ですか?」
「はい。木本はこの会社からある本を盗み出し、挙句の果てに最後は自殺してしまったのです。」
「まぁ・・・そんなことが?」
「そうなんです。私も肆方院様も、どれだけ悲しんだことか・・・
なのに、会社にいる他の奴らが、本を盗んだのは、お前もだろう!
と私に変な言いかがりを言い出してきて・・・
私が、木本と仲が良いのもあって、本を盗んだ共犯者だと勘違いされて・・・」
「そんな酷いことが・・・」
「私に変な言いがかりをつけてきた奴らは、きっと私に嫉妬していたんだと思います。
ただの警備員の私が肆方院様に良くして貰っていたから・・・」
「でも、それなら肆方院って人は、貴方を庇ってはくれなかったのですか?
貴方が本を盗むような人じゃないって、わかってくれていたのでは?」

私は四堂なら、事の真相なんて、すぐにわかるだろうと思った。
普通の人間のついた嘘なんて、四堂であればすぐに見抜くだろうと。
しかし、私の予想と違い四堂は彼を庇う事をしなかったらしい。
どうしてだろう?やっぱり、彼も共犯だったのか?
私が訝しむ顔をすると、八百代は困った顔で私に弁明する。

「本当に私は共犯なんかじゃないんだ!私だって、どうして木本がこの会社にあった本を盗んで、
更には自殺までしなければならなかったのか、その理由が知りたいくらいだ!」
「八百代さんは、木本さんがどんな本を盗んだとかは、ご存じなんですか?」
「確か、ある有名な魔導書の写本です。その元の魔導書の名前は忘れてしまったのですが、
木本はその本の存在を前々から知っていたようで、肆方院様に
その本を譲って欲しいと、散々頼んでいたらしいです。
譲るのが無理なら、せめて1日でも良いから貸して欲しいとまで。」
「木本さんって人からしたら、かなり重要な本だったようですね。」
「そうだったみたいです。でも、その本はもう1人のこの会社の設立者だった・・・
えーっと名前は、そうだ!ツヴァイ様だったかな?
あの方が所有する本だから、自分では勝手なことは出来ないと、
肆方院様にきっぱりと断られたようで・・・」
「なるほど。木本さんがどんなに欲しがっても、無理だったわけですね。」
「はい。だから、最後は盗んだのだろうと、会社の者達は言ってました。
その当時の警察にも、そう話したと思います。」
「盗んでまで欲しかった本か・・・」

いったいその本は、どんな内容の本だったのだろう?
ある有名な魔導書の写本と言う事だが、その木本を言う人は
仮に盗んだとしても、自身が読むことが出来たのだろうか?
魔導書なんて海外の物だし、言語によっては、現代の様に
ネットとかパソコンとかがないから、翻訳するのが難しそうだけど・・・
木本と言う人物は西洋の魔術に興味でもあったのか?
私は八百代から聞いた話に頭を悩ませた。
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