このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

「私には同僚で親友だった、木本(きもと)と言う男がいました。
私と歳が近いのと、木本も読書が趣味だと言う事もあり、私達はすぐに仲良くなりました。
木本も肆方院様には良くして貰っていたと思います。」

八百代は木本と言う人物の話を始めた。話す表情はまだ若干悔しそうな顔ではあったが、
この話をしない事には、お互いが先に進めないのは、わかっている様子だった。
何より、警備室にあるラジオから、当人が未練を訴えていたのだから、話す他ないだけれど。

「木本は・・・あいつは、ある事件を起こしたんです。」
「ある事件ですか?」
「はい。木本はこの会社からある本を盗み出し、挙句の果てに最後は自殺してしまったのです。」
「まぁ・・・そんなことが?」
「そうなんです。私も肆方院様も、どれだけ悲しんだことか・・・
なのに、会社にいる他の奴らが、本を盗んだのは、お前もだろう!
と私に変な言いかがりを言い出してきて・・・
私が、木本と仲が良いのもあって、本を盗んだ共犯者だと勘違いされて・・・」
「そんな酷いことが・・・」
「私に変な言いがかりをつけてきた奴らは、きっと私に嫉妬していたんだと思います。
ただの警備員の私が肆方院様に良くして貰っていたから・・・」
「でも、それなら肆方院って人は、貴方を庇ってはくれなかったのですか?
貴方が本を盗むような人じゃないって、わかってくれていたのでは?」

私は四堂なら、事の真相なんて、すぐにわかるだろうと思った。
普通の人間のついた嘘なんて、四堂であればすぐに見抜くだろうと。
しかし、私の予想と違い四堂は彼を庇う事をしなかったらしい。
どうしてだろう?やっぱり、彼も共犯だったのか?
私が訝しむ顔をすると、八百代は困った顔で私に弁明する。

「本当に私は共犯なんかじゃないんだ!私だって、どうして木本がこの会社にあった本を盗んで、
更には自殺までしなければならなかったのか、その理由が知りたいくらいだ!」
「八百代さんは、木本さんがどんな本を盗んだとかは、ご存じなんですか?」
「確か、ある有名な魔導書の写本です。その元の魔導書の名前は忘れてしまったのですが、
木本はその本の存在を前々から知っていたようで、肆方院様に
その本を譲って欲しいと、散々頼んでいたらしいです。
譲るのが無理なら、せめて1日でも良いから貸して欲しいとまで。」
「木本さんって人からしたら、かなり重要な本だったようですね。」
「そうだったみたいです。でも、その本はもう1人のこの会社の設立者だった・・・
えーっと名前は、そうだ!ツヴァイ様だったかな?
あの方が所有する本だから、自分では勝手なことは出来ないと、
肆方院様にきっぱりと断られたようで・・・」
「なるほど。木本さんがどんなに欲しがっても、無理だったわけですね。」
「はい。だから、最後は盗んだのだろうと、会社の者達は言ってました。
その当時の警察にも、そう話したと思います。」
「盗んでまで欲しかった本か・・・」

いったいその本は、どんな内容の本だったのだろう?
ある有名な魔導書の写本と言う事だが、その木本を言う人は
仮に盗んだとしても、自身が読むことが出来たのだろうか?
魔導書なんて海外の物だし、言語によっては、現代の様に
ネットとかパソコンとかがないから、翻訳するのが難しそうだけど・・・
木本と言う人物は西洋の魔術に興味でもあったのか?
私は八百代から聞いた話に頭を悩ませた。
15/86ページ
スキ