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第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

「よし!行こう!」

私は自分を奮い立たせる為にそう声を上げて、式神達と同時に動いた。
敵は、どれが本体の私かわからずに、とにかく自分の近くに来た、
私の式神達に攻撃しようとする。
ただ、さっきの敵と同じ格好をさせた式神と違い、私の姿をした式神達は、
器用に敵の攻撃を避けて、敵を混乱させてくれる。
この調子でいけば、もう少しで上の階へ戻れる階段に近づけそうだ。
私は自分に敵の意識が向かないように、慎重に行動した。

「うん!今だわ!!」

私は、自分の姿に似せた式神達を上手く使役して、敵を階段から離れた場所に誘導し、
私は階段への道を確保し、一気に階段に向かって走った。
敵が階段に向かう私に気付いた時には、すでに遅く、私が階段で
上の階に戻るのを阻止する事は出来なかった。
普段は激しい運動などしない私は、上の階になんとか逃げ延びて、少し呼吸が乱れてしまう。

「はぁはぁ・・・あの敵は、どうやら上の階までは追って来なさそうですね。
ま、まだ私の式神達と相手をしているのもあるでしょうけど。
ふぅ・・・とりあえず、上の階に戻れて良かった。」

私はポケットからハンカチを取り出し、軽く汗を拭いて、次の行動に出る。

「次は、建物から出る為の出入り口を探さないと・・・
最初に入ってきた、あの扉から普通に出れれば、いいんだけど・・・」

私は周りを警戒しながら、目的の扉を目指して、軽く走った。
上の階には、敵らしい敵もおらずに、私は目的の扉の前まで、すんありと来ることが出来た。

「やはり、ホラーの定番で、そんな簡単には、ここから出してくれないですよね。四堂。」

私は最初に入ってきた扉を開けて、外に出ようと試みたが、扉は何もしても動きそうになかった。
私は自分の能力を使い、開けようともしたのだが、出来そうにもなく、
よく調べると、特殊な鍵がない限りは、この扉は開きそうになかった。
そうなれば鍵を探すか、または別の出入り口を探すしかなさそうだ。

「うーん・・・どうしましょうか・・・
どっちの方が早く脱出が出来るでしょうか?この試練を四堂が
楽しみたいとも考えているのなら・・・」

やっぱり鍵を探すべきだろうと、私は思った。
無理矢理にでも、別の出入り口を作り出すことも不可能ではなさそうだが、
それでは、四堂としては、そんな解決方法では面白みに欠けるだろう。

「ホラーゲームとかなら、敵から逃げたりしながらも、謎解きするのも重要な要素ですからね。
あんな敵も、用意されているのなら、四堂の仕掛けた罠を
能力を使って強制的に抜け出すより、セオリーを踏んだ方が、無難そうですね。」

私は開かない扉の前でそう結論を出した。
あの四堂が仕掛けた罠だ。無理矢理に脱出すれば、
何かしらのペナルティがあるかもしれない。
酷い場合には、結局試練が失敗扱いされる恐れもある。
四堂は、ホラーに関係することで、ズルをするのを、
物凄く嫌っていたことを私は思い出した。
特にホラーゲームなんかで、謎解きをちゃんと自分で解決せずに
進むのとか嫌いだった記憶がある。
私が謎解きで唸っている四堂に助言した時さえ、怒ったこともあったっけ?
私はそれを思い出して、ちょっとだけ苦笑いしてしまった。
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