第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

私は資料室から出て、廊下に居た。
上に戻る為の階段の方に、顔を向け懐中電灯の光と当てると、そこには禍々しいオーラを放つ、
影で出来た人型の存在が立っていた。
人間で言うとこの目の部分からは、怒りを感じるような赤い光が、
ギラギラと光っていて、懐中電灯の光を当てる私を、睨んでいるようだった。
私はそんな存在を目の前にしても、恐怖を感じることもなければ、
慌てることなく冷静に考える。

「なるほど・・・これらの資料を手にして、建物から出ようとしたら、
四堂の仕掛けた罠が発動するようになっていたんですね。」

四堂の最後の言葉は、この事を言っていたのだと、私は確信した。
つまり今、私の目の前にいる敵を、どうにか対処して、
私が手にした資料を持って、この建物から出ろと言うのだろう。
それが、四堂の私への試練・・・
つまり、あの敵を対処出来ずに、捕まったりしたら、
私は四堂に課された試練は失敗に終わると言う事だろう。

「それにしても、困りますね。
上の階に戻りたいのに、それを妨害する様に階段の方向に、あの敵がいるなんて・・・」

敵は私を睨んではいたが、すぐに襲って来ると言う感じではなかった。
向こうも、私の様子を窺っているようだ。

「有名なホラーゲームのように、あの敵をこっちにおびき寄せて、
巻いて逃げながら、私が階段の方に行けるようにするしかないですね。」

私は頭の中では、そう考えたが実際に上手くやれるかは、正直不安だった。
あの四堂が作り出した敵だ。一筋縄ではいかないだろう。

「それに・・・敵から逃げれても、手順を踏まないと、建物から出られないようにしてそう・・・
あの四堂が罠にかかった獲物を簡単に逃すわけないもの・・・」

私は四堂の考えが、嫌と言う程、自分でも理解出来てしまって、陰鬱な気分になる。
四堂は、ホラー映画も大好きだが、それと同じくらいに、ホラーゲームも大好きな男だ。
きっと、この手の罠に何かのホラーゲームの要素を取り込んでいても、全然おかしくない。
そうなれば、簡単に逃げるだけでは、この罠は突破出来なさそうである。
四堂がホラーゲームをする際にも、いつもいきなり難易度を
ベリーハードとかで平気でやる男だったりするからだ。

「過去に最後に連絡して来た時に、あの当時にハマっていた、
ホラーゲームありましたね・・・
あれは確か・・・タイトルは思い出せないけど、ゲームの内容が、
小説家が奥さんを救う為に、闇の存在と戦うゲームだったような?」

私は目の前の敵を見て、何となく、過去に四堂が私にもやった方がいいと、
しつこく勧めてきた、ホラーゲームを朧気ながらも思い出していた。
確かに、あの当時に四堂がハマっていた、あのホラーゲームは面白かったと私も記憶している。
話の最後もどんでん返しな感じで、私も最後はすっかりとハマって楽しんでいた。

「と、過去を思い出してる場合じゃないですね。
今のこの場を切り抜けないとだわ。」

私は現実に意識を集中し、敵をもう一度観察することにした。
敵はググググと獣のような低い唸り声を上げている。
私の存在には敵も気づいてはいるが、一定の距離まで近づかなければ、
向こうから動く気はないようだ。
私は敵の様子を見ながらも、この敵にどう対処しようか考える。
四堂の性格も一緒に考えながら。
四堂であったのなら、この敵をどんな風に動かすだろうか?
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