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第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

私は唾を飲み込み、覚悟を決めた。
この四堂の試練に失敗は許されない。二四とゴートンの為にもだ。
私がここで何か今後に有力な情報を手に入れて、彼らの元に戻らなければ。
私は気を引き締めて、再度、目の前の資料室のドアと向き合う。
ドアを開ける前に、私はドアに耳を押し当て、部屋の中の物音を確認してみる。

「特に部屋の中に蠢くモノは・・・無さそうですね・・・」

私はドアから耳を離し、今度は自分の式神を数体用意した。
そして、慎重にドアを開け、すぐ部屋には入らずに、その場に留まり、
部屋の中を懐中電灯の光を当てて確認する。
資料室と言うだけあって、部屋の中には、たくさんの本棚が綺麗に並んでいた。
とりあえずは、ドアを開いたら、即座に罠が発動する感じでは
なさそうだったので、私は安堵する。

「我が式神よ、我に代わり、部屋の中を確認せよ。」

私は、部屋の中に先に自分の式神を入室させて、部屋の隅々まで調べさせた。
お札で作った私の式神は、蝶の様にヒラヒラと、けど早い速度で飛んでいき、
部屋の中をグルグルと数体がそれぞれの角度で飛び、
部屋の中の確認して、数分もしないうちに戻って来た。
式神達に特に異変は無かった。

「入室したくらいでは、この部屋に細工された罠は、発動しないみたいですね。」

私は、そう自分に言い聞かせるように言ってから、資料室に入った。
四堂は急に無口になって、何も言わなくなる。
ただ式神を通して、鋭い視線だけを異様に感じるようになった。
四堂は真面目に私の行動を、見ていると言う事だろう。
私は緊張が増す感じはしたが、それでも今は気にせずに、色々と資料室の中を物色した。

「ここの本棚は商売とかに関するものばかりですね・・・
こっちは・・・日本の歴史の本かな?後は・・・あ・・・」

私は複数ある本棚の中で、1つの本棚に並ぶ数冊の本のタイトルに、目を奪われた。

「これですね・・・本喰人とそれに関する資料・・・」

私はその本棚の前に立ち尽くすと、四堂の式神が私の側に寄って来て、会話を始めた。

「良く見つけたね。四四。どうやら、ここにまだ、この資料が残っていると言う事は、
2冊目からすれば、この資料は彼には不要なものらしいね。」
「この資料を確認したかったから、四堂は私に、この建物に来させたんですか?」
「そうだよ。いずれは、どうにかしなければと私も考えていたんだ。
回収出来たらと思ってはいたんだけどね。けど、私は今は中国にいるだろう?
だから日本にいる四四に頼もうと思ったのさ。物が物だからね。」
「そうだったんですね。」
「四四が無事に、その資料を回収することが出来たのなら、
その資料の中身を見ることを、私が許可しよう。
そう・・・無事にその資料を回収して、建物から出られれば・・・だけどね。」
「え?」

四堂は最後にそう言うと、自分の式神を消して、私の目の前から
いなくなった。
私の周りには、後味の悪い沈黙だけが残る。
私は気になるタイトルの本を、素早く全て回収して、急いで建物から出ようとした。
このまま、この建物に長居をしたら良くないことが起こる。
私は四堂の最後の言葉で、直感的にそう思った。
早く・・・早くこの建物から脱出しなければ・・・
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