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第1章「下巻の奴等」

18は大きな何者かの口の中にいた。もちろん、これは幻だ。
現実にこんな巨人のような存在はいない。
18も恐怖に怯えていても、それはわかっている。
わかっているのだが、それでも、ここから抜け出せないことも、わかっている。
そう、これは呪いなのだ。36冊目の。いや、正確には俺の。
巨大な歯が、18を嚙み砕こうと動き出す。その歯音は、嬉しそうであった。

「あ・・・やっと、今度は喰べれる側になれたんだ・・・嬉しいな・・・」
「喰われる?!俺様がだと?!!」

18はこの時に気づいた。36冊目の口の中にいるのだと。
今度は立場が逆転したことを。
そして、咀嚼が始まる。容赦ない、咀嚼が。18は幻の中で、
どんどん自分の身体がバラバラに、粉々にされていくのを感じる。
耐え難い苦痛に、18は泣きながら懇願する。助けてくれと。
18にとっては、無限に続く痛みだと絶望している頃だろう。
俺も、非情になりきれなければ、こんな能力は使えなかった。
ましてや、俺は共喰いを嫌っている。もちろん、今もだ。
けれど、18は好んで、共喰いをしているのだ。ならば、どうせ、
いつかはされる側になることもあろう。因果応報と言ったとこだ。

「ゆるじでぐれぇえ・・・おれがぁわるがった・・・」

黒い靄が晴れた時、18は全身がボロボロで血まみれだった。
そして、ばたりと倉庫の床に倒れ込んだ。もう完全に戦える状態でない。
俺はすぐに18の側に行き、18の腹に手を突っ込み、ある物を取り出した。
それは、36冊目の本体の一部だ。俺は18の身体の中に
36冊目がまだ残っていることを信じていた。
俺の勘は見事に当たったようで、安心した。

「36冊目・・・救い出すが遅れて、ごめんな・・・」

俺は大事に、36冊目の本体の一部を、服の中にしまいこんだ。
俺の長年の復讐はここで見事に果すことが出来た。
今頃は俺の顔も、かなり穏やかになったろう。

「あの・・・12冊目?」

50冊目が、オドオドとした顔で俺を見てくる。
やっぱり、怖がっていたか。そんな調子じゃ、上巻同士の
戦いなんて、見てられないんじゃないか?
俺は、変に50冊目を心配してしまい、笑ってしまった。

「安心しろ。もう戦いは終わった。18も、あれじゃー
しばらくは何にも出来ないだろうよ。でも、お前らに頼みたいことがある。」
「な、何?!」
「18を適当な船に乗せて海外に送り出すのを手伝ってくれ。
あんな奴が日本にいるんじゃ、俺も、お前らも安心して、過ごせないだろ?」
「うん!そうだね!喜んで手伝うよ!!」

50冊目は俺が、普段の俺に戻ってることに安心したのか、
いつものチャラ男っぽい笑顔で、俺の提案に乗ってくれた。
俺は強制的に18を本の姿に変え、何重にも特殊な紙で梱包し、
何処か遠い国に行きそうな船に、50冊目と一緒にこっそりと18を投げ込んだ。
あれで流石に数十年は日本に来ることはないだろう。
いや、出来るのなら、もう今後二度と俺に関わろうとしないでくれると有難い。
俺は、50冊目と24冊目も連れて、俺の本拠地に帰ることにした。
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