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第7章「思い出していくほどに・・・」

お母様と六ちゃんの話し合いが終わり、六ちゃんはノウェム達と
一緒に屋敷の警備やらを確認しに行った。
当の私は、お母様に呼び止められて、私と2冊きりで話がしたいと言われたので、
お母様の部屋に残る事になった。

「セア。貴女、六と一緒に生活していて、特に異常はない?」
「特に何もないわ。お母様。」
「そう・・・ならいいのだけれど・・・」

お母様は不安そうな顔をして、視線を落とす。
私はお母様の態度が気になって、どうしてそんな事を聞くのかと、
質問した。すると・・・

「セア。貴女は本気の本気で、これから先、何があっても、
6冊目を愛していける自信があるのよね?」

お母様は真剣な眼差して、私にこう聞いてきた。
私は一瞬だけ、ドキっとしたけれど、すぐにお母様と同じように
真剣な顔になり、頷いて見せた。

「その顔は本気のようね。なら、今のセアにだけ話すわ。
私が知っている、2冊目側の仲間だった頃の六の話をね。」
「?!」

私は、お母様の言葉に絶句した。お母様は六ちゃんの記憶にない過去を知っていたの?!
絶句してしまった私に、お母様は静かな口調で淡々と話し出す。

「六の性格は、基本的には変わらないわ。けど、そうねぇ・・・
昔は、もっと厳格な性格だったかしら。自分にも他人も。
後、昔の六は本喰人でも人間でも「女」と言うモノを、物凄く嫌悪してたわ。
2冊目側の仲間になっていた時は、何よりも激しく憎んでいたって感じね。」
「あの・・・六ちゃんが?」
「そうよ。あの6冊目がよ?」
「今は、あんなに穏やかで優しい雰囲気になっているのに・・・」

私はお母様の話を聞いて悲しい気持ちになった。
確かに初対面は厳しい感じはあったけど、でも憎まれているとまで感じたことはない。

「セア。ここからが大事だから、しっかり聞きなさい。
昔の6冊目は、共喰いを平気するような本だったわ。
しかも、狙うのは女の本ばかり。あれは、好き好んで喰べていたのではなく・・・
そう・・・何か義務で喰べているような感じだったわ。」
「え?あの六ちゃんが・・・共喰い?しかも女の本を?」

私はお母様の話に言葉を失った。過去の六ちゃんは、「女」と
言う存在が憎いあまりに、女の本を狙って共喰いしていたような
本喰人だったってこと?
私は、流石にお母様の話であっても、すぐに信じる気になれなかった。
そんな話は、嘘であると、悪い冗談だったと言って欲しかった。
けど、お母様の顔は、最初と同じで真剣なままで、悪い冗談などではないことがわかる。

「この話は、もちろん過去の話。今の六は私が見ても、
そんな残酷なことするような本喰人では無くなったわ。
でもね・・・セアも、もう知ってるでしょうから言うけど、
今の六には、その頃の自分の記憶が一切ないの。
思い出そうにも思い出せないって言うのも、私も知ってるわ。」
「どうして、今の六ちゃんは、その頃の自分を思い出せないの?
お母様?」

私は心配そうにして、私の手を優しく握ってくれるお母様に聞いた。
お母様は悲し気な顔になって、首を横に振る。

「それはわからないわ。3冊目が言うには、誰かに記憶を封印されているのではないかと
言う話だけれど、それが本当なのか、確かめようがないの。」
「じゃあ・・・もし六ちゃんが何かの弾みで、過去のその自分の記憶を取り戻したら・・・」
「そう・・・最悪、真っ先に狙われるのは、セア・・・貴女なのよ。」

お母様に言いづらそうにしながらも、この話の本題をやっと私に話した。
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