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第7章「思い出していくほどに・・・」

「オスカー様とキュアート様だ!」
「オスカー様はいつもイケメンだな。」
「キュアート様は、いつ見てもお美しい・・・」

オレは遠巻きに、母上が現在の夫であるオスカー様とフログベルデ家が、
起こしている事業の視察を仲睦まじい姿でしているのを見守る。
周りの取り巻きは、もっぱらオスカー様と母上の外見を褒め称える。
美男美女のおしどり夫婦としても、母上はこのイギリスではちょっとした有名人でもあるのだ。
マスコミが勝手に取り上げているとも言えるが。

「ここ最近は、どんな感じだ?」
「はい。最近は生産が追いつきそうにないので、機械を増やそうかと検討しております。」
「まぁ♪それは良い事ね♪ねぇ?貴方?♥」
「うん。そうだな。キュアート。」

母上達は今視察に来ている会社の上役達と、会社の現状などを報告され、
それに答えていた。
事業に関することは、オスカー様がはきはきと答えられ、母上の方は、
頑張っている従業員達に労いの言葉をかけることが多い。
美人な上に優しいと、母上の評判は上々である。
それに、母上はあるサプライズをすることが好きなのだ。

「今年は皆には、「幸福の王子」をプレゼントするわね♪
私の大好きな本の1冊なの♪ぜひ、読んで欲しいわ♪」
「キュアート様。毎回、私共に有難い心遣いを有難うございます。
従業員達も全員喜ぶと思います。」

上役の1人が、母上の言葉に深く頭を下げ、感謝する。
本を1冊プレゼントするくらい、大袈裟だと思うだろう。
しかし、母上のプレゼントは本だけではないのだ。
今回も、本の間には、日頃の感謝を込めた手紙とお金が入っているだろうな。
母上は、こうして本と一緒に何かをプレゼントするのが大好きなのだ。
だから、従業員達も喜んで、母上からのプレゼントを受け取る。
子供が居る者は本は子供に、お金は親である自分が、と言うわけだ。
別にその本を売ってしまったって、母上は特に気にされることもないだろう。
相手に喜んで欲しいから、母上はするだけなのだ。
なので、見返りなども一切求めないし、夫であるオスカー様にも迷惑はかけない。
あくまで自分の気持ちからと言う事で、本もお金も、母上個人の資産から出ている。
そんな母上だから、基本、フログベルデ家に関係する従業員達は
母上に友好的だ。

「キュアート。また私に内緒でプレゼントを用意してたのかい?」
「うふふ。だって、今年はあの本がプレゼントに向いてると思ったんだもの♪
それに、あの本の作者の名前も貴方の名前と同じ、オスカーだしね♪」
「ふぅ。君と言う女性は・・・」

オスカー様はちょっとだけ呆れたように見せたが、顔は優しく、少し照れられたようだ。
母上はただただ笑顔で、オスカー様の側で楽し気にされていた。
この様子を見て、従業員達も穏やかに見守っている。
母上の人の心を掴む術は、本当に長けているなと、オレはいつも思う。
本好きを増やすと言う行為にも一役買ってるし、自身の好感度も上手にあげる。
母上が変に人気が出てしまうのも仕方がないかもしれないな。
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