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第7章「思い出していくほどに・・・」

「今後はイーリスの活動が大事になってくると、オレは思っている。
イーリスは、母上の秘書みたいな仕事もしてるからな。
それに同じ女の本同士だ。オレやヴァンダムがついていけない場所での護衛は、
イーリスお前に任せるしかない。」
「わかってます、ノウェム兄さん!私は前よりもしっかりと、
母上を守れるように頑張ります!」
「うん。オレはイーリスを信頼してる。それに、イーリス1冊だけじゃない。
オレ達は眷属が多いからな。お互いに助け合って、母上を守ればいいんだ。
イーリスも、困ったことがあったら、すぐにオレに相談しろ?いいな?」
「はい・・・ノウェム兄さん。」

オレの言葉に、イーリスは顔を少し赤くして、嬉しそうにする。
我が妹ながらに、この態度に、オレは少し可愛いなと思ってしまう。
いや、イーリスだからこそかもしれないな。
イーリスには、時と場合によっては、オレと夫婦のフリをすることもあるからな。
人間の社会で暮らしていく上では、どうしても必要になる偽装もあったりするのだ。
特に上流階級の人間の相手だと、パートナーはいないのかとか、
その手の話題は良く出てくるので、うざいと思う事も度々ある。
それに、妹達はオレが言うのも何だが、母上の影響もあってか、
魅力的な女の本ばかりだ。
人間の男が、イーリスに言い寄るのも1度や2度ではない。
過去に、イーリスにストーカー行為をしてくる馬鹿な男が居た時は、
オレはヴァンダムと一緒になって、その馬鹿な男に地獄を見せてやったこともあったな。

「そうだ。明日の仕事の話もしなければいけないな。」
「明日は、母上はフログベルデ卿と一緒に数社ほど自社を視察しに行き、
夜は夫妻で、ドイツに本社があるエーヴィヒカイト出版社の
レセプションパーティーに参加予定でしたね。」
「うん。そんな日程のはずだ。」

イーリスは、いつも持っている手帳を広げて、スラスラと明日の母上の日程をオレに教える。
オレも確認はしてあったが、イーリスと情報が正確に共有されているかを知る為に、
黙って最後まで聞いていた。ちゃんと情報は共有はされてるようだ。

「自社に視察に行くのは、大して問題ではないだろうな。
オレも、どの会社の建物内部には詳しいし、イーリスもその点は大丈夫だろうと思う。」
「はい。大丈夫です。」
「問題は、最近フログベルデ卿が資金援助した、あの会社だな。」
「ええ。母上の為にその会社に資金援助して、少しでも良い本を集めるのに役立てば、
とのことでされたんですが・・・」

イーリスは手帳を閉じて、苦悩した顔になる。

「あの会社は、私の調べた限りですが、裏で悪い噂があるみたいです。
それに・・・背後に2冊目が居そうな・・・そんな嫌な気さえします。」

イーリスは、前にもオレに話したように、もう一度その話をオレにした。
イーリスのその嫌な気は、ある意味では当たった。
その会社は、まだ2冊目と関りがあるかどうかわからないが、
2冊目が動き出したことだけは確かだったのだ。
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