俺や師匠は、玄関で長話になるのが嫌で、少しの会話でトワ達を押し切り、各自部屋に戻った。
俺は、それからすぐにシャワーを浴びて、身を清め、新しい服に着替えた。
いや、やっと着替えられたと言う方が正しいな。

「困ったな。今の俺は、前の俺より、少し身体がデカくなったみたいだな。
ゆったり着たいと思って買った服があったから、どうにか着れたが。
今度、新しい服を買いに行かなきゃな・・・」

俺は自分の部屋にある鏡を見る。トワの言う通り、俺は少し老けたようだ。
とは言え、見た目は３０になったかな？くらいで、そんなに大差ないように俺は思うんだが。
それでも、トワにしたら、大騒ぎなんだろうな。

「はぁ・・・さて。トワに何を言われるか心配だが、二四達の所に
行って、話すべきことは話さないとな。
途中で無理矢理に話を終わらせたから、トワは不機嫌になってそうだが、
俺もボロボロな姿なのに、玄関で長居なんかしたくなかったから、しょうがないよな。」

俺は頭を搔きながら、トワ達が待ってるであろう、居間に向かった。
トワは、四四と何やら喋っていたが、不機嫌にはなっていなさそうだった。
俺が居間に来たのに気づくと、俺の顔を見て、少し不安そうにする。
なんだ？どうしたんだ？
俺は、てっきりトワは不機嫌になるのではないかと心配していたのに、
不安そうな顔をされるとは思わず、戸惑う。

「十二、お、おかえりなさい。さっきは、ごめんなさい。
すぐ、着替えとかしたかったよね？」
「え？あ、まぁーな・・・」
「次から気を付けるから・・・だから、もう怒らないでくれる？」
「へ？俺は、別に怒ってはないぞ？」

トワは玄関のやり取りで、俺がかなり怒ったと思ったらしい。
俺は怒ってるつもりなど、全くないのに、トワは、そう感じたようで、
それで、すぐに俺に謝罪したそうだ。
俺は、少し困った顔で四四を見ると、四四は困っている俺を、
察してくれたようで、
俺の代わりにトワに声を掛ける。

「ほら？言ったでしょ？トワちゃん。十二は、全然怒ってないって。」
「で、でも・・・さっきは、すっごく冷たい感じがしたんだもん。
今までの十二じゃないくらい・・・」
「それは、今日の修行とかで、十二は、内面的に急激に変化しちゃったから、
それで、トワちゃんは、そう思っちゃっただけだよ。
トワちゃんは、十二の眷属だからね。十二の変化に、
敏感になってしまうのは、仕方がないことだよ。」
「そうなんだ。四四ちゃん、有難う。」

トワは、そう言って、四四に胸に甘える。まるで、四四は、トワの母親のようだな。

「四四、ごめんな。うちのトワが、甘えん坊で。」
「うふふ。いいえ。トワちゃんは、私の大事な友達だから、
全然平気です♪」
「おい、トワ。とにかく、四四の言う通りだからな？
俺は怒ってないから、四四に変に迷惑かけるなよ？」

俺もそうトワに話して、トワの頭を撫でてやった。
トワは、チラっと俺を見て、少し顔を赤くし、また再度、
四四に甘える。
やれやれ、師匠に気の鎮め方を習って、大丈夫だと思ってたが、
少しでも強い感情が出ると、こうしてトワは、わかってしまうみたいだな。
気をつけてやらないといけないようだ。