第6章「後悔の先にあるもの」

「では、私は先に拠点に帰ってますね。」
「送ってやれなくて、ごめんな。気をつけて帰れよ。」
「大丈夫です!私だって、ちゃんと自分の身くらいは守れますから。」

俺と師匠は、四四が拠点に帰るのを見送り、四四が気配が消えたのを確認してから、
俺は師匠から、気の鎮め方を教わった。
師匠と座禅を組み、師匠の呼吸と自分の呼吸を合わせ、意識を鎮める。
師匠の気の流れを感じ、俺も自分なりに真似る。
変に昂っている気持ちを、とにかく静めて、邪念を払う。
俺は、瞑想しながらも、つい、さっきの事を思い出してしまった。

「四四。お前の事だから、大丈夫だと思うんだが、今の俺のこの状態を、
二四やゴートン、特に一番トワには、言わないで欲しいんだ。」
「わかりました。トワちゃん達には言いません。」
「助かる。じゃないと、トワなんか、心配して、この洞窟に来てしまいそうだからな。」
「トワちゃんなら・・・きっと、そうなっちゃいますね。
十二の事は、いつも心配してますから。それに、もし今の十二を見たら、
怯えて泣いてしまうかもしれません。」
「だろうな・・・俺は、そうなって欲しくないんだ。無用に泣かせたくない。」
「十二は、本当にトワちゃんの事を大事にしてるんですね。
いいなぁ。トワちゃん。」
「おいおい。からかうなよ、四四。トワは俺の眷属だから、
変に心配かけたくないだけだ。」

俺は四四に、そんな風に言われ、つい恥ずかしくなってしまった。
何を照れているんだ俺は。自分の眷属を大事に思う事は、
何も恥ずかしいことでもないのに。
俺が、ついさっきの出来事を思い出し、内心で恥ずかしくなっていると、
師匠から低い声で注意される。

「十二。お前から雑念を感じるぞ。しっかりと、拙者に合わせて、無心になれ。
でなければ、本当にしばらく洞窟暮らしになるぞ?」
「申し訳ありません、師匠。気をつけます。」

俺はヤバい!と思い、急いで無心になるように心掛ける。
師匠から、しっかり気の鎮め方を学ばないとな。
やっと断食からも解放されるのに、洞窟暮らしになったら、
自分好みの本が「喰べ」れないではないか。
そんな悲しい事態だけは、絶対に避けなくては。
俺は、再度、気持ちを落ち着かせて、師匠の気の流れに合わせた。
長い長い時間を師匠と座禅を組み、瞑想していたと思う。
だが、師匠から声を掛けられ、お前は合格だと言われた時には、
まだ1時間くらいしか過ぎてないぞとも、師匠に言われた。

「良かったな、十二。思ったよりも、全然早く、お前の気は静まったようだ。」
「師匠。有難うございます。お手数をお掛けしました。」
「何も気にすることはない。お前は、格段に強くなった。
こんなに喜ばしいことはない。お前も今日で、修行は卒業だ。」
「え?師匠と手合わせは、しなくていいんですか?」
「今回はしない方がいいだろう。」

俺は師匠から、まさか手合わせもせずに、卒業して良いと言われ、拍子抜けしてしまった。
むしろ、師匠は俺と戦ってみたいのではないかと、思っていたので意外だった。

「恐れ多いですが、俺は師匠と戦ってみたかったのですが・・・」
「拙者もな、本音を言えば、今の十二と戦ってみたいと思っては
いる。だが、今回は止めた方がいい。」
「どうしてですか?」
「互いに歯止めがきかないかもしれないからだ。
互いが本気になってしまったら、どちらかが死ぬまで止めれないかもしれん。
十二、それくらい、今のお前は自分が思っているよりも強くなったはずだ。
今なら、十二は、拙者と互角に戦えるはずだ。本気の拙者とな。」
「お、俺がですか?本気の師匠と?」

俺は師匠の言葉を疑いそうになってしまった。俺は強くなったとは思うが、
それでも本気の師匠と互角に戦えるまで、強くなったとは思えてないんだけどな。
しかし、師匠の顔を見ると、師匠の顔は真剣そのものだった。
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