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第6章「後悔の先にあるもの」

「あ、あの師匠が?!本当か?!」
「本当だとも。一時期、六は何を思ったのか、熊を育てるのにハマってね。
外国の田舎で、人間に迷惑をかけないようにして、熊と生活してたこともあるよ。」
「師匠は、変わってるなぁ。いや、あの師匠のことだから、修行も兼ねての趣味っぽいけどな。」
「それもあるだろうね。あの六のことだから。自分としては、あの時は六のおかげで、
熊を間近に見れて、楽しかったから、覚えてるよ。あいつらも、信頼し合うと、
可愛いものだよ。本気でじゃれつかれると辛いとこもあるけどね。」
「へぇー意外だな。しかし、師匠が熊と戯れる姿か・・・」

俺は、十と他愛もない話をしていた。きっと十は俺に気遣って、
こういう話をしてくれているのだろう。
少しでも気持ちが、良い方向に落ち着くようにと。
そのおかげで、俺も変に感じていたイラつきが、すっかり落ち着いていた。
にしてもだ、もし師匠が熊を飼育していたことが有ったと、
セアが知ったら、大騒ぎしそうだな。
セアの家でも、一時期、虎がいたんだよな。キュアートが、絶世の美女の側には、
そういう可愛いペットがいるものなのよ♥とか言って。
虎と言う肉食動物を、さも、ただの猫のように扱う、キュアートもキュアートなんだが、
キュアートの眷属達の中で一番、セアが、その虎を大事にしてたような気がするな。
熊を飼う師匠に、虎を可愛がることが出来るセア。
うん。お似合いの夫婦になれそうじゃないか?
俺は、心の中では、そう思うが、師匠に言えば、怒られるだろうな。
師匠は、どこまでセアに自分の過去を話したりしているんだろうか?
セアの恋路ではあるが、応援してやりたいんだよな。
師匠にだって、自分を想ってくれる存在は、いつかは必要だと思うから。

「十二、自分からも聞きたい事があるんだが。」
「ん?なんだ?」
「六と最近一緒にいる、セアって眷属なんだが・・・」

俺がまさにセアと師匠の仲を考えていた時に、十が、ドストライクで俺に、その話題を振ってきた。

「セアって子は、本気で六が好きなのか?」
「ああ、本気で好きだぞ。キュアートからも、付き合ってもいいと承認は得てる。
何より、俺も、その話し合いをした時に立ち会ってるからな。」
「そ、そうなのか?十二が立ち合いを?」
「あの時の師匠は、キュアート、セアの2冊を自分だけで
対応するのはきついって言われてな。それで俺がな。」
「なるほど、そういうことか。六は、前までは、女が本当に、
大の苦手だったからな。
最近は、それが無くなったから、いい感じだとは思ったんだ。」
「だよな。きっと、セアと言う、存在のおかげだと思うぞ。」
「ふふ、だからか・・・最近、女物のプレゼントの相談を自分に
してきたのは・・・」

十は、俺と会話中に何かを思い出したらしく、フッと短く笑う。

「どうしたんだ?十?」
「あ、いや、十二だから言うけど、六本人や他の本喰人には
内緒にしてくれよ?」
「え?ああ。」
「六にも、やっと春が来るかもしれないな。ついこの前あったら、
相談されたんだよ。」
「へ?相談って?」
「女物のプレゼントは何がいいかってね。
最近の女性は、何を喜ぶのかさっぱりわからないから、
相談に乗って欲しいと、言われたんだ。
あの六が、女性にプレゼントだなんて。自分も、最初は腰を抜かしそうだったよ。」
「十に、師匠は、そんな相談してたのか?!」

俺も、十から話を聞いて、同じく腰を抜かしそうになった。
師匠も、やっとセアの気持ちに答えるのか?
俺は、どうしてだか、ニヤニヤしてしまいそうになるのを、必死に隠した。
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