このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第6章「後悔の先にあるもの」

「終わったようだな。」
「1冊目か。ああ、終わった。今回のこの戦いはな。」

俺は、俺の側に寄ってきた1冊目を見てから、再度、15冊目と16冊目の方を見た。
もう、彼らが何かを喋ることは、今はない。
2冊達と最後の戦いをして、最終的には俺が勝ちを治めたのだ。
そして、2冊達は、本の姿になって、沈黙することになった。
だから、今回の戦いで、死んだわけではない。もちろん、俺も、
こいつらを共喰いせずに済んだ。
本の姿にならなければならない程に激しい戦いはしたが。

「俺が思っていたよりは、12冊目は大暴走はしなかったな。
俺は、お前が15冊目と16冊目を、もし「喰う」ようだったら、
それを阻止する為に、最悪の手段として、こいつらの様に、お前も、
一時的に、本の姿にしようと思っていたんだけどな。」
「俺自身も、驚いてるよ。過去のあの時の様に、大暴走したら、
断食中でもあった、俺の事だ、もしかしたら、俺は平気に
共喰いしたかもしれないってさ。」
「けど、12冊目はしなかった。彼女の言う通り、お前の本質は、
あの過去の12冊目のようには戻らないと言うわけだな。」
「そのようだな。」

俺は、1冊目と会話をしながら、15冊目と16冊目を拾い上げ、
大事に抱えた。
どうやら、俺が心配しなくても、1冊目は共喰いを止めてくれる予定だったみたいだな。
にしても、こいつらを、このまま、ここに放置は出来ない。
8冊目が回収しに来るだろうからな。2冊目側にこいつらを奪われてたまるか。
こんな状態にしてしまったのは、俺の所為だが、俺はこいつらを
どうしてだか見捨てることが出来なかった。

「なぁ・・・1冊目。」
「何だ?」
「15冊目と16冊目は、どうして、今回のこの戦いに応じたんだ?
2冊目からの許可もあると言っていたが、どういうことだ?」
「それは・・・今はここで気軽には、話せないな。」
「2冊目の「目」でもあるか?」

俺は辺りを見回して、1冊目に聞くと、1冊目は静かに頷いた。
それはそうか。2冊目も、どうにかして、この戦いを見守っていてもおかしくないからな。
もし、仮に自分が見なくても、8冊目に観戦させて、結果くらいは聞くだろう。
いや、今の俺なら、2冊目自身が、この戦いを見ていたと思う。
一瞬だけ、2冊目の気配らしきものを感じたからな。

「12冊目、そいつらは、どうする気なんだ?」
「俺が貰い受けるよ。俺が勝ったんだからな。2冊目だって、
文句は言わないだろ。多分。」
「お前が持っていくのなら、文句は言わないだろう。
2冊目は、お前に共喰いさせたかった節もあっただろうからな。
だから、余計に15冊目と16冊目を、今回の戦いに使ったに違いない。
12冊目とは面識も何もない、15冊目と16冊目だからこそな。」
「面識もない本喰人だから、共喰いもしやすいだろうって?
あーあ、確かに、あいつなら考えそうだな。」

俺は1冊目の話を聞いて、呆れた。そういう嫌味な気遣いを
するのも、昔と変わってないな。2冊目は。
初版本世代のままの俺なら、喜んだかもしれないが、今では逆効果もいいところだ。

「12冊目、今回はこれで悪いが別れるぞ。」
「え?何だ、聞きたいことが沢山あったんだが・・・」
「悪いな。俺には俺で、すべきことがある。それに、12冊目は、
元の場所に戻らなきゃいけないだろう?」
「あ、そうだよな。さて、どうしたものか・・・」

俺は、1冊目に急に連れて来られた、この闘技場を見渡し、途方に暮れた。
44/60ページ
スキ