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第6章「後悔の先にあるもの」

俺は目を瞑り、ひたすらと精神を集中させ、静かにしていた。
洞窟の中には、俺以外は誰もいない。時々、風の音が響くだけで、
それ以外は、静寂だった。
しかし、そんな中で俺はある気配を感じて、すぐに目を開けた。

「ん?誰かがいる?」

俺は目を開けて、俺の側に誰かがいることを確認する。
そこには、俺の知らない顔があった。金髪の長髪で、深い緑色の瞳をした、
涼し気な顔をしている男だった。だが、俺はすぐにわかる。
そいつは俺と同じ本喰人であると。しかも今のところは、
相手には殺意は無さそうなので、俺も、すぐに戦闘態勢にはならないで
警戒だけをして、静かに話しかけた。

「誰だ?」
「随分、久しぶりになるな、12冊目。俺は1冊目だ。」
「え?ま、まさか?!1冊目?!」

俺は、自分が全く想像していなかった1冊目の登場に、流石に驚いてしまった。
他の本喰人なら、まだ誰かしらが来ても、おかしくないだろうと、
考えていたが、まさかの1冊目とは、俺も予想していなかった。
1冊目と出会うには、3冊目から話を聞いてからだと、俺は勝手に考えていたからだ。

「驚いたな。あんたと会うには、俺は3冊目に最初に再会してからだと思ってたよ。」

俺が目を丸くしたままに、今の1冊目を見ると、1冊目は
何とも言えない顔で、俺をじっと見ていた。

「俺もな、すぐにお前と会う気は無かった。だが、3冊目から連絡が来て、
12冊目が過去の自分を思い出したと聞いてな。」
「そうだったのか。じゃあ、もしかして俺の過去を話しに来てくれたのか?」

俺は1冊目から、自分の過去を知れるかもしれないと淡い期待をしていた。
のだが・・・

「いや、まずは俺は12冊目、お前を確認しなければならない。」
「え?俺を確認?」

俺は1冊目から、唐突にそんな事を言われて戸惑う。
確認って何だ?俺が過去の様な残虐な俺に戻ってないかってことか?
仮にそうであっても、どうやって確認するつもりだ?まさか?
俺は、1冊目が、そんな話をし出すので、流石に戦う体制になった。

「嫌な冗談だと思いたいが、1冊目と戦うとかないよな?」

俺は、的中して欲しくない事態を1冊目に、恐怖で一瞬、
震えそうになるを堪えて言った。
そうなってしまったら、余りにも俺には分が悪すぎる。
俺は断食7日目だ。体力的に長期戦どころか、短期で戦う事になっても、
キツいだろうし、逃げ出そうとしたとこで、それも無駄だろうな。
1冊目の戦い方は知らないが、そうであっても、俺を今、
この場から逃がすことを1冊目は絶対にしないだろう。
どうしてだか、俺は、そんな雰囲気を1冊目から、ひしひしと感じていたのだ。
向こうに殺意や敵意は無いのに、嫌な気持ちにさせられる。
ねっとりとした悪意のようなものが、纏わりつくような。

「12冊目は、過去と同じに、勘は鋭いようだ。だが、戦うのは俺ではない。」
「な、何だって?じゃあ、誰と戦えって言うんだ?」
「15冊目と16冊目だ。」
「は?」

俺は、1冊目の言葉に、再度目を丸くする。15冊目と16冊目と戦え?
今からか?しかし、どうやってだ?
少し悩む俺に、1冊目は右の指をパチンと鳴らす。
俺は、1冊目と一緒に、知らない場所に移動していた。
そこは、どこかの国の過去の闘技場なような場所で、人気はなかったのだが、
ある奴らは居た。
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