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第5章「見え隠れする本質」

「12冊目。無駄な話は一切省いて、単刀直入に聞くけど、
最近、変わった夢を見たりとか無かったか?
例えば、自分の記憶にはない、過去の自分を追体験してるような夢とか?」
「え?」

俺は10冊目から、ここ最近の俺の状況が、まるで分っているかのような質問をされ、
心の中では激しく動揺しそうになった。だが、それで相手に悟られるのはマズい。
まだ、10冊目が敵か、味方かもわからないのだから。

「待て、10冊目。その質問に答える前に、俺も先に聞きたいことがある。」
「なんだ?」
「どうして、10冊目が俺の夢になんかこだわる?
それを知ったとこで、10冊目に何の得があるんだ?
その答えが納得出来るものじゃなければ、俺は何も話す気はない。」

俺は10冊目にきっぱりと、そう言い切った。
でなければ、俺も自分の夢の話をするのは、躊躇うに決まってる。
10冊目が敵だったら、自分の何か弱味になることを、ベラベラと
喜んで喋る事になるわけだからな。

「最近見た、夢の所為で、今の12冊目が疑心暗鬼になっているのは、自分もわかるつもりだよ。
今の12冊目は、誰か敵で味方か、それが一番知りたいんじゃないかい?」
「どうして、そこまで言い切れる?」

俺は少しでも自分が不利にならないように、10冊目の言葉の1つにも、
細心の注意を払い、変に自分の感情が出ないようにした。
10冊目は、少しだけ、俺との会話に悩み、何かの結論を出したのか、俺に言う。

「まず、自分が敵じゃないと分かって貰う為に、12冊目が、
知りたがっているであろう、初版本世代の話をしようか?」
「な・・・んだと?10冊目は、その初版本世代と言うのを、
知っているのか?」

俺は、自分の感情が出ないように、必死に抑えているつもりだったが、
流石にその単語には反応してしまう。
あの夢で、2冊の奴と会話している時に出てきた単語だ。
気にならないわけがない。

「まず、最初にそれを教えてくれるなら、俺は大人しく、10冊目の話を聞こう。」
「では、話すよ。どのみち、話さなければならない話だしね。
この際、順序は関係ない。まず、最初に12冊目の信用を得ることが大事だと自分は思うからね。」
「10冊目を信用するか、どうかは、まだ別の話だろ?
とにかく、その初版本世代の話をしてくれ。」

俺は10冊目を急かして、早く初版本世代の話を聞きたがった。
きっと、それが分かれば、俺の中での疑問もかなり解決される気がする。
その分、今まで俺が知り得なかった、嫌な自分の過去も知ることになりそうだが。
でも、今のこの疑心暗鬼の中で、師匠や、キュワートと、
関わりに疑いを持ち続けなくて、済むかもしれない事に、俺は救いを感じた。
敵かどうかは、やっぱり白黒つけたいもんな。
それに、二四達の事だって、何かわかるだろう。
俺は、今までに関わってきた、仲間達が敵であって欲しくない。
それが正直な俺の今の気持ちだった。
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