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第5章「見え隠れする本質」

10冊目と師匠が仲がいいのは俺も聞いてはいる。
友と言うのも、嘘ではないと思うが、どこまでの友情が師匠と10冊目にあるのかまでは、
俺も詳しくは知らない。
と言うか、こんなに近くに居たのなら、師匠の元を訪ねて来てもいいような気がするが・・・
10冊目は、警戒心が強い本なのか?

「こんな場所での話は、何なので、場所を移動しませんか?
いい店があるのですが・・・」
「いい店?」

俺は10冊目の誘いに警戒をしたが、大事な話と言うのも気になり、
10冊目の誘いに乗る事にした。
これで、もし10冊目が敵らしい動きをすれば、ある意味で、
師匠も敵だと確定出来るかもしれない。
俺は、そうなって欲しくないと心の中で思いはするが、今後の事も、
考えると、この誘いを無駄にしない方がいいと思った。

「わかった・・・。その店に案内してくれ。」

俺は少し不機嫌な顔になってしまったが、10冊目とその店に向かった。
サキの店から、歩いて10分ほどで行けるBarだった。

「おい・・・ここって・・・」

俺は、10冊目を見て眉を顰めた。俺達は本喰人だ。基本、人間の食べ物は食べない。
食べたとこで、俺達、本喰人には栄養にならないし、
無理に食べても拒絶して吐き出してしまう事がほとんどだろう。
だから、もし人間の食事をどうしても取らなきゃいけない場合があるのなら、
本喰人の能力を使って、食べているフリをするしかない。
それは、もちろん酒でも同じだ。
俺は、最近、人間が食事をする場所に行くことが、
全然無かったので、食事をしているフリをする為の能力が
すっかり退化していた。
と言うか、こんな店に同じ本喰人に案内されるとは、俺も予想出来んわ。

「悪いが、俺は酒は飲めないぞ?最近、そういう能力を使う事もなくて、
そのフリも全く出来ないし・・・」

俺は正直に10冊目に、話をしたが、10冊目は気にした様子もなく、俺に言う。

「12冊目は、無理に飲むことはない。そのフリする為の能力が、
無くても大丈夫だ。この店は確かにBarだが、自分達が
用事があるのは、このBarで貸して貰える個人ルームだから。
自分は、ここのBarの常連なんでね。大丈夫さ。」
「そうか・・・ならいいが。」

俺は、10冊目の言葉を信じて、一緒にそのBarに入った。
1人のいかつい中年のバーテンダーが10冊目を、チラっと見る。
昔に流行った、ちょい悪オヤジ的な感じの男だった。
おじさま系が好きな女には、モテそうな雰囲気はある。

「なんだ・・また客連れか?」
「ああ、いつもの部屋を借りるよ?」
「いいぞ。開いてる。」

10冊目とそのバーテンダーは短いやり取りをして、10冊目は店の奥に俺を案内した。
確かに、10冊目達のやり取りは、言葉の通り、常連が店の者と交わす雰囲気のものだった。
俺は、10冊目に案内された個室で、椅子に腰かけ、10冊目の話を聞くことする。
一体、どんな話を俺にすると言うのやら。
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