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第5章「見え隠れする本質」

「別に、何かの病気になって死ぬってわけじゃないんだから、
そんな泣くことないだろ?」

俺は、泣きじゃくるトワの頭を再度、撫でてやった。
それで、少しは泣き止むと俺は思ったのだが、トワは余計に
泣いてしまい、俺は困る事になる。

「おい・・・どうしたんだよ?そんなに不安なのか?」
「ぐっす、ぐす・・・不安に決まってるでしょ!上手く説明出来ないけど、
今日の十二は変・・・」
「変って・・・失礼な奴だな。」
「だって、変としか言いようがないんだもん・・・っぐすん」

トワは、俺の部屋で2冊きりなのと、人目がないのもあって、
俺に余計にべったり甘えてる。
俺も、今日は少し弱ってる状態なので、怒るにも怒れなかった。
それに、トワに変と言われても、仕方がないかもしれない。
俺自身も、あの悪夢を見てから、何か気持ちが落ち着かない所為で、
変な気分のままだった。

「今日は・・・私が看病してもいい?」
「看病って・・・俺は病気じゃないって・・・」
「けど、十二だけにしとくのが、凄く不安なんだもん・・・」
「うーん・・・困ったなぁ・・・」
「私が居たら、邪魔・・・?」

トワは、今でも泣きながら、心配そうに俺の顔を覗き込む。
今日は、俺もおかしいかもしれないが、トワもおかしいな。
俺がこんな感じだから、眷属でもある、トワにも、ここまで影響が出てしまうのか?
これはよくないなぁ・・・俺がしっかりしないと・・・

「トワ。一旦、俺達の拠点に戻らないか?」
「え?」

俺の提案にトワが、びっくりした顔になる。

「私はいいけど・・・十二は、体調大丈夫なの?」
「少しだるいくらいで、全然動けないわけじゃないから、大丈夫だ。
それに、ここまで、こっちにいると最初は思わなかったから、
全然、何にも用意出来ないで来てしまったからな。
このタイミングで、1回帰るのもいいかもしれない。」
「それなら、私は、十二の判断に従うよ?」
「じゃあ、俺は今から師匠に事情を話してくる。トワは、ゴートン達に、
1回、拠点に帰るかもしれないって話をしてこい。
後、四四にも、一緒に帰るか聞いてみてくれ。」
「わかった!ちょっと話してくるね!!」

トワは、さっきまで俺が心配で泣いていたが、俺が少し活動的になって、安心したのか、
少し笑顔に戻り、急いでゴートン達の所に向かった。
これを機会に、俺も、少し気持ちを切り替えた方がいいな。
自分の拠点に帰れば、気分転換にもいいだろう。
思えば、自分の拠点を、放置しっぱなしなのも、良くなかったしな。
何より、36冊目の元に1回帰りたかったのは事実だ。
36冊目の身体の一部とは言え、それがまた他の本喰人に奪われたら、
俺は間違いなく、今の俺でいられなくなりそうな気がする。
何か、別の存在になってしまうような・・・
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