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第5章「見え隠れする本質」

俺は、あの悪夢を見た次の日、師匠に自分の気持ちを素直に話し、
1日休みを貰う事にした。
こんな俺を見たことがない師匠は、本気で心配してくれた。
断食からも解放され、俺は何かを忘れるように、必死に飯を食べたのだが・・・
身体が食事を拒否する。久しぶりにあの悪夢を生々しく見た所為だろう。
俺は何度か食べては吐いてを繰り返し、疲れてしまった。
過去の克服したと思っていた、食事への拒絶が、また再発しそうで、
俺は怖かった。
このまま、あの時のようになったら・・・今度は、この拠点の中で、
俺が一番の足手まといになるだろう。
それどころか、トワさえ守ってやれなくなる。
強くなる為に修行をしていたはずなのに、トラウマが再発して、
逆に弱くなったのでは、洒落にもならない。
俺は、自分で出来ることはないかと必死に考えた。

「夢で36冊目を見た所為かな・・・無性に今、36冊目に会いたいな・・・」

俺は、18の奴から、取り戻した36冊目の身体の一部に、
今すぐにでも会いに行きたくなった。
36冊目の身体の一部は、俺の拠点に大事に保管してある。
一緒に、こっちの拠点に持ってこようか、考えもしたのだが、
こんなにも長居をするとは思っていなかったので、置いてきていたのだ。

「36冊目・・・まさか、俺が留守番させてるから、怒ってるとかないよな・・・?
だから、あんな夢を久しぶりに見せたとか・・・
って、流石に俺の思い込みすぎるか・・・36冊目が居たら、
きっと怒るな・・・酷いよ・・・12ちゃんってな。」

俺は自分で自分の考えに力なく笑ってしまった。
命を懸けて俺を守ってくれた恩人に言うべき言葉じゃないな。
俺は、今、自分でも情けない程の状態だ。
ここまで、冷静に、ちゃんとした考えが出来ないなんて。

「十二!!起きてる?!大丈夫なの?!!」

俺がぼけーっとして、ベッドに寝ていると、トワが深刻そうな声で、
俺の部屋のドアを叩く。
トワはさぞ心配しているのだろうなぁ・・・
もしかして、師匠に俺の様子を聞いてしまったのか?

「どうしたんだよ・・・トワ。そんな声出して・・・」

俺は、いつも通りに振る舞おうとしたのだが、いつもの調子の
声が出なかった。
トワは俺の返事を待たずに、俺の部屋に入り、俺がベッドで、
ぐったりしていると、ギョッとした顔し、今度は急に大泣きしながら、
俺の側に寄ってきて、俺にすがりながら更に大泣きしている。
おいおい、俺は、別に大病した人間とかじゃないんだぞ?
大袈裟だな・・・トワは・・・

「どうしたんだよ?そんなに泣いて?」

俺は、俺に泣いて、しがみついてくるトワの頭を撫でてやった。
まるで、トワまで子供返りしているみたいだな。

「どうしたんだよ?じゃないよ!昨日から、調子悪そうって、
六の師匠さんが言ってって、それにゴートンとか二四までも、
深刻そうな顔しているしさ・・・
不安になるなって言う方が無理でしょ!!!
今だって、こんな顔色が悪い、十二を見たことないもん!」

トワは、泣きながらも、器用に俺に怒ってくる。
1日具合が悪いくらいで、ここまで心配してくれるとか・・・
トワは本当にいい子に育ったかもな・・・
それとも、ゴートン達と関わった事が良かったのかもしれないな。
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