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第1章「下巻の奴等」

「ふぅ・・・泣くなよ、トワ。」

俺は、泣いているトワの頭を撫でた。随分、久しぶりな気がする。
こうしてトワの頭を撫でるのは。最近は、子供扱いするなと、
怒ってくるのでしなかったが、思えばあれも、俺に成長しているんだと
見せたかったのかもしれない。

「十二・・・」
「トワ。俺はお前を手放す気はないよ。」
「本当?」
「ああ。今の俺には、トワが必要だし、それに「取引」とかの話も、
いつかはするつもりだった。
だけど、トワには、まだ早いと思ったんだよ。」
「なんで?トワは役立たずだから?」
「違うよ。トワがもっと大人になって、自分の事をちゃんと
考えられるようになったら、話せばいいと思ったんだよ。」

俺は出来るだけ優しくトワに教えてやった。ちょっと前の3歳児
くらいの頃のトワを俺は思い出していた。

「じゃあ・・・十二のとこに居てもいいの?」
「ああ、今はまだな。」
「でも、いつかいなくならないとダメ?」
「いや、それはトワ。お前が自分で決めろ。俺は強制しない。」
「十二・・・ありがとう・・・」

トワは久しぶりに、俺に甘えて、最初に出会った頃のように抱きついてきた。
俺は今日だけは、トワが甘えてくるのを許してやった。
この調子だと、50冊目にきつい言葉を言ったり、さっさと
追い出したのは、この話を俺と早くしたかったからかと、俺は思った。
数分後に、気持ちが落ち着いたのか、トワはいつものトワに、
戻っていた。

「でも、十二はこれから、どーするの?」
「どうするって言ってもな。いつも通りに、「特殊な本」を探して、
力を温存するしかないな。前よりは、俺も弱くはなってないはずだ。」
「けど、24冊目は、18冊目の所為で、かなり強いみたいだよ?」
「そうだな・・・50冊目が嘘ついてなければな。」
「そっか・・・あいつ、嘘ついてるかもしれないもんね。」
「そうだとしても、結局は俺達のすることは、いつもと変わらないさ。」
「うん!じゃーいつも通りに仕事しよう!」

トワは、そう言って張り切り出した。最近は、パソコンまで俺に
強請って買わせて、良い買い取り相手を探すほどだ。
これは、いずれは、俺がトワをどうこうするんじゃなくて、
あっさりとトワに捨てられる方が早いのではないかと思った。
特殊小冊子にしては、トワは本当に優秀だ。
もしかしたら、トワは俺達と同格の本喰人になれるかもしれない。
俺も聞いた話だから、詳しくはわからないが、俺達の存在は、
ある数まで減ると、数を補おうとするように、増えることもあるらしい。
その中で一番有力なのは、特殊小冊子の格上げだ。
それが本当であれば、トワも長生きすれば、俺と同格か、
下手をすれば上になれるかもしれない。
なんか・・・そう考えると、俺はトワがちょっと怖くなった。
この感じで、どんどん成長したら、俺の上をいきそうだから。
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