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第1章「下巻の奴等」

結局、50冊目との話は、平行線のままで、何も決まらず。
今日の所は、とりあえず、帰って頂くことにした。
俺よりもトワの方が強く追い出した感じであるが。

「明日も来るから!来れればだけど・・・」

と、50冊目は、何やら意味あり気な言い方をして、渋々ながら帰っていった。
とりあえず、今一番に願うのは、あいつが他の敵対してる奴等に、
俺の本拠地を教えないかどうかだ。
教えるようなら、どんな状況であれ、もう協力出来る間柄にはなれない。
俺はそう考えていた。
俺が、今後の事を考えて、黙ってソファーに座っていると、
トワは、俺の側に寄って来て、俺の横に座った。
俺は、邪魔くさいなーと思って、トワを見えると、トワの顔は、深刻そうな顔で、
すぐにも何かあれば、泣きそうな顔でもあった。

「ねぇ・・・十二?」
「ん?何だよ?」

いつになく真剣なトワの声に、俺も考えるのを止めて、トワに向き合った。

「あのチャラ本が言ってたことだけどさ。」
「ああ。」
「もし、今後、十二が私をいらなくなったら、他の本に、
私を引き渡すとかあるの・・・?」

トワは、そう言って、悲しそうな顔で俺を見ている。
どうやら、あの50冊目の言った、「取引」について、
かなり気になっていたようだ。

「どうしてだ?」
「どうしてだって・・・そりゃ、気になるよ。十二は今まで、
そういう話とかしてくれなかったし、私も考えるの怖かったから、
聞かないで来たけどさ。」

トワは俺から顔を反らし、更に話を続ける。

「でも、今後は考えなきゃダメだよね?十二も、誰かと戦ったり、
話し合いしたりするんでしょ?その時に、私の存在が使えるなら、使うのは
当然だと思う。思ってはいるけど・・・」
「トワ・・・お前・・・」
「けど、私は、まだ十二のとこに居たいよ・・・本当は迷惑かけてるの知ってる。
私はまだ生まれたばかりで、役に立ってるのかもわからない。
十二と喧嘩だってするし・・・それに・・・ううぅ」

トワはここまで言うのが精一杯だった。トワは顔をぐしゃぐしゃにして、
大粒の涙を零していた。
トワは50冊目から聞いた話で恐怖を感じたのだろう。
今後、俺がいつ突然に、トワを誰かに引き渡すのではないかと。
外見こそ、10代の少女だが、トワはまだ産まれて1年も経っていない。
人間の子供より知能はあると言っても、俺達、本喰人からすれば、
幼児であることに変わりはない。
俺は、トワを傷つける為に、「取引」や「契約」の話をしなかったのではない。
もっと、トワがしっかりと成長してから、話すつもりだったのだ。
本当ならこんな状況だから、もっと早くに話すべきだったかもしれない。
俺も最初は、トワをしっかりと面倒を見る気はなかった。
が、トワは俺が思ったよりも優秀で、成長も早い。
そして何より、俺が愛着を持ってしまったのだ。トワに。
普段は恥ずかしくて、そんな事言えないが。

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