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第1章「下巻の奴等」

俺は仕方がなく、50冊目の男を家にあげることにした。
1階の古本屋は昼休みと言う事で、店を一時的に閉じた。
正直言えば、本当は俺の本拠地に敵かもしれない本喰人などを
招き入れたくはない。
だが、あの時は、あれ以上俺達の会話を聞かれたくないし、
何かのはずみで、俺達の戦いが開始されれば、それこそ大騒動になりかねないので、
トワの提案に従うしかなかった。
俺はイライラしながら、50冊目の男を睨んでいた。
しかし、50冊目の男は、さっきからトワしか見ておらず、
俺の事は眼中になかった。
その態度がますます俺をイライラさせたのは言うまでもない。

「あのさ、私は十二の眷属なの!だから、貴方と恋人になるとか無理だから、諦めて!」
「それは知ってるよ♪でも、12冊目が、僕と取引してくれて、
君を受け渡してくれるって言えばさ、君は僕の恋人・・・
いや女にだって出来るんだよ?知ってる?」
「え?そ、そうなの?十二・・・?」

50冊目の男は、トワに陽気な感じでそんな話をした。
トワは、まだ、俺達の契約や取引の事は詳しく知らない。
俺は、そういう話をまだトワにしたくなくて、隠していたのに、
このチャラ本は、あっさりとトワに話してしまった。
俺はますますと不機嫌になる。しかも、こいつは自分より上の
クラスである、中巻クラスの俺に対して、礼儀というモノが全くない。

「あーもうー全く・・・トワにはまだ話す気なかったのに・・・」
「本当なの?十二?」

心底、不安そうな顔でトワは俺を見ている。
もしかしたら、取引によっては、自分は引き渡されてしまうのではないかと、
心配しているのかもしれない。だが、安心しろトワ。
俺はこういう常識がない奴は大嫌いだから。絶対に取引はしない。

「本当だ。そういう取引も出来なくはない。」
「ね?言っただろう?」
「でも、お前と取引するなんて、「俺は」一言も言ってないよな?」

陽気にトワにウィンクしている、50冊目の男に、俺は敵意を
露わにして言ってやった。
流石に、俺の敵意を感じた50冊目の男も、俺にたじろぐ。

「い、嫌だなぁーそんなに怒らないでよ!僕が悪かったからさ!
中巻クラスの12冊目にちゃんと挨拶しなかったのは、
謝罪するからさ!ね?とりあえず、落ち着こう?」
「ふん。本当にわかってんのか?お前は、俺の眷属を気軽に
勧誘しやがったんだぞ?良かったな?俺が上巻クラスの奴とか
じゃなくて?え?」

俺は、ここぞとばかりに、50冊目の男を再度睨んでやった。
短気な本だったら、とっくに争いになっていたかもしれない。
いくら50冊目の男が、それなりの力を有してると噂になってる存在でも、
下巻が上巻クラスには、ほぼ勝てない。奇跡でもない限り。
もちろん、俺だって、上巻でなくても、中巻の上位にいる存在だ。
それなりの力はあると自負はしている。

「悪かったってば!今度、ちゃんとお詫びにお土産持ってくるからさ!機嫌直しってって!」

俺は、そう言われて、やっと話を聞いてやることにした。
トワは相変わらず、俺の後ろに隠れて、50冊目の男を睨んでいたが。
50冊目の男から、意外な言葉を聞くことに俺はなった。
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