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番外編

「本当に、本当に俺に協力してくれるのか?!!」
「はい。今まで、貴方の言葉を聞き入れることもせず、私は意固地に
なってました。本当に申し訳ございません。」

フェニックスは、親友のラリイの死後、まだ不安定な状態の幻獣界に戻り、
ある程度の準備をした後に、フェニックスは自身でバハムートの元に出向き、
頭を下げて、バハムートに協力することを願い出た。
これには、バハムートは長年想い続けた恋人と付き合えるような感じに大喜びし、
バハムート側の幻獣達は、誰もがフェニックスが仲間になることを
反対したものはいなかった。
むしろ、イルルヤンカシュにせよ、リヴァイアサンにせよ、
大歓迎のムードで、フェニックスが、内心ビビるほどの凄さでもあった。

「良かったな!義兄貴!あのフェニックスが、やっと義兄貴に心を
開いてくれたようだ。」
「おお!やっと、俺の誠意が分かって貰えて良かったぞ!」
「しかし、バム。だからと言って、調子の乗るなよ。
フェニックスが何をきっかけにして、協力してくれるようになったのかはわからないが、
バムの態度次第では、また失望されて捨てられるかもしれないぞ。」
「イル!こんな喜ばしい日に、縁起の悪い事を言うな!」
「いや、イルルヤンカシュの言う通りだぞ、義兄貴。もし幻獣界を
治めていく存在になるのなら、威厳と言うものも大事にして貰わないとな。」
「リヴァまで、そんな事を言うのか・・・」

バハムートは、義弟や親友達に諫められ、ちょっと不貞腐れる。
フェニックスはそれを見て、内心笑う。
ドラゴン族達の仲の良さに、微笑ましい気持ちになる。
親友のラリイとの日々が無ければ、フェニックスはバハムート達の
このやりとりに何も感じるものがなかっただろう。
それだけ、過去のフェニックスは冷めた気持ちの持ち主だった。

「では!俺は早速フェニックスとだけで話をしてくる!お前達はついてくるなよ?」
「はいはい。好きにしろ。フェニックス。こんな奴だが、今後はよろしく頼む。」

意気揚々とフェニックスを連れ出そうとするバハムートに、
苦笑いしながらイルルヤンカシュはフェニックスにそう言った。
フェニックスの方も、クスっと笑って、イルルヤンカシュの言葉を承諾して、
バハムートと共に、バハムートの住処に移動した。

「あいつらを交えて話しするのも悪くはないとは思ったんだけどな。
でも、今後のお前との取り決めで、外野が多いのもなんだろ?
俺は、お前と本音で話し合いがしたい。だから、俺の住処に来て貰ったんだ。」
「そうですか。お気遣い有難うございます。バハムート。」
「フェニックス。再度、しつこいかもしれないが、聞くが本当に
俺に協力してくれるんだよな?」

バハムートは真面目の顔で、茶化すこともなく、フェニックスに確認してくる。
フェニックスも同じように真剣な顔で頷き返す。

「はい。バハムートに全面的に協力させて頂きます。この幻獣界を安定させ確立させる為に。」
「それは実に有難いし、助かる。この幻獣界は、まだまだ不安定だ。
それに仲間に加えたい幻獣も数多くいる。その中には説得するのに苦労する幻獣もいるだろう。
気難しいラムウ兄弟姉妹達に、プライドが天より高いと噂のアレキサンダーに、
その弟で知略に富んで曲者と評判のオーディン。
他にも人間界に逆に住み着く奴らもいるだろうからな。」
「そうですね。すぐに解決しなさそうな問題ばかりです。
ですが、私は私なりの力を持って、全力でバハムートを支えていくつもりです。」
「本当に嬉しい限りだ。でも、どうして急に協力する気になった?
人間界に一時的に暮らしてたようだが、その影響なのか?」

バハムートは、気になっていたことを、単刀直入にフェニックスに聞いた。
フェニックスは少しだけ悲しそうな顔になったが、すぐにバハムートの質問に答えた。

「図々しいのは百も承知して、実はお願いしたいことがございます。バハムート。」
「なんだ?」
「バハムートには全面的に何でも協力致します。そのかわりに、
幻獣界が無事に確立したら、人間界との関りを断ち切るのだけは、
止めて貰えないでしょうか?」
「何?それが、お前の願いなのか?フェニックス?」
「はい。それが私の願いです。」

バハムートは、フェニックスがこんな事を願うとは思わず、心底驚く。
あの大の人間嫌いだったはずのフェニックスに何があったのかと。

「どのみち、完全には人間界との関係は断ち切れはしないと俺は思ってはいる。
でも、わざわざ、そう言うと言う事は、人間界と言うより、人間と関りを止めるなってことか?」
「はい。そう思って頂けると良いかと。」
「何故だ?お前は、過去は大の人間嫌いだったはずだ。
なのに、どうして急に人間の肩を持つ?今後の幻獣界においても、
人間達と付き合っていって、得になるような感じがしない。
それに、俺は真っ先にお前が人間との関りを拒否すると考えていたのに。どうしてだ?」

バハムートは、やや捲し立てるようにフェニックスに言う。
フェニックスは黙ってバハムートの言葉を聞いていたが、
バハムートの言葉が終わったタイミングで自分の意見を語り出した。

「確かに、過去の私は人間を見下していました。軽蔑もしてましたし、大嫌いでした。
けど、そんな私の価値観を変えてしまう程の人間に、私は出会ったのです。」
「何?お前の人間への価値観を変えてしまう程の?」
「はい。私はその人間と親友になり、彼が死ぬ間際に、ある約束をしたのです。」
「約束?どんなものだ?」
「生まれ変わった彼と、幻獣界で平和で幸せに暮らすと。」
「?!!」

フェニックスの言葉を聞き、バハムートは絶句した。
あの大の人間嫌いのフェニックスを、ここまで変えた人間が居た事に、バハムートは驚愕したのだ。

「だ、だから、人間達との関りを断ち切って欲しくないと言う訳か。」
「はい。でなければ、私は生まれ変わった彼・・・私の息子にするつもりなのですが、
その存在を否定することになってしまうからです。」
「なるほどな・・・」

バハムートは表面上は納得したように見せてたが、内心は戸惑っていた。
しばらく幻獣界で姿を見かけないなーと思っていたら、
人間界でそんな体験をフェニックスがしていたとは、流石に
バハムートも想像していなかったのだ。
これには、バハムートも気軽に返事をするわけにはいなかった。
だが、フェニックスがやっと協力してくれると言う事に、水を差すこともしたくなかった。
バハムートは悩んだ末に、他の仲間にも相談させて欲しいと、
フェニックスに頼む。
フェニックスは、ただ静かに、バハムートに頭を下げて、

「どうか、良い方向に向かうようにお願いします。」

とだけ言った。
それを見たバハムートは、フェニックスの望む形にしてやろうと心に決めた。
正直言って、バハムートも人間は信用してないし、好きではない。
けど、心待ちにしていた協力者であるフェニックスのささやかな
願いくらいは、叶えてやりたいと本気で思ったのだ。
良い願いではないか。新しい家族と平和に幸せに暮らしたいと言う願い。
バハムートはフェニックスの心情が、温かいものに変わった事を喜ぶべきだとも思った。
それが、人間によってだとしても。
そして、そのフェニックスの願いは、意外にもあっさりと承諾された。
リヴァイアサンや、イルルヤンカシュも賛成し、後に仲間になる
オーディンも悪い事ではないと言ったからだ。
ただ、ラムウ側だけは反対したが、バハムートの説得で、渋々従う形となって、
幻獣界は無事に確立され、人間に関わることも良しとされる。
して、バハムートは、あんな親馬鹿になるフェニックスに、
後に苦しめられるようになるのであった。
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