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番外編

それはまだ、フェニックスが1匹だけで自由に気ままに、
後の幻獣界になる異空間を飛んでいた頃の話。
色々な存在が、この異空間が出来た事を知り、様子を見に来ている感じだった。
その異空間が出来るまでは、ほとんどの幻獣が、渋々と言った形で人間界に
隠れ住んでいる状態が多かったので、多くの幻獣が、この異空間の存在を喜び、
どうにか自分達の世界にしようと、活発的になり始めていた。
特に行動を起こしたのは、バハムート達ドラゴン族である。
ドラゴン族は結束力も高く、力も知識も数も凄かったので、
その高い能力などを使い、その異空間を魔族などの悪い種族から奪われないように、
することが出来たのである。
そして、同じ仲間である幻獣を、どんどん勧誘して増やしていく。
人間界で暮らすには、力が弱い幻獣や、元々戦いが嫌いな幻獣達は、
すぐにバハムート達側の仲間になり、その異空間には、順調に幻獣が増えていった。
そのおかげで、その異空間は幻獣達の住みやすい空間に変化した。
力が弱い幻獣や戦いが嫌いな幻獣達は、戦う能力が低いだけで、
代わりに補助的な能力や特殊な力を持っている者が多く、カーバンクルなどがその代表である。
そうした幻獣達の力により、最初は大地も海も何も無かった、
その異空間に、土台となる大地が出来て、海や川も出来るようになり、
幻獣界の基本の自然が完成すると、尚、多くの幻獣達が、
自分達の世界を良くしようと活動していく。
フェニックスも、自分の持つ回復の力で、自分と気が合う幻獣には
力を貸したりして、一緒に幻獣界を良くしていった。
ただ、この頃のフェニックスは、ドラゴン族だけは苦手であった。
特に、最近、やたらと自分にちょっかいを出して来る、あのドラゴンが・・・

「フェニックス!ここに居たか!」
「はっ!」

フェニックスが、幻獣界で自分の寝床をどこにしようか、楽しく悩んでいる時に、
運悪く、バハムートに見つかり、フェニックスは、すぐに嫌な顔になる。

「また貴方ですか、バハムート。何ですか?今日は?」
「そんなに会ってすぐに露骨に嫌そうな顔をすることもないだろうが。」
「嫌な顔するな・・・ですか。それは無理だと思いませんか?
貴方は、初対面の時から、いきなり自分の仲間になれ!とか言って、
私を攻撃してきたんですよ?それで好意を持てと?」

フェニックスは思い切り冷たい表情でバハムートを見る。
バハムートは、気まずそうな顔になり、フェニックスを見返す。

「あの時は本当に悪かった。ドラゴン族は、好敵手に逢うと、
つい戦いたくなってしまう習性があるんだ。
俺も若気の至りとは言え、いきなり他種族である、フェニックスと
戦おうとしたのは、
悪かったと思っている・・・だから許してくれないか?」
「・・・・・・・」

バハムートはいつもの謝罪の言葉を述べて、フェニックスに許しを請う。
しかし、フェニックスは、厳しい顔をしたままである。
初対面の印象が悪すぎた為に、フェニックスは、未だにバハムートを
許してやろうと言う気になれなかったのだ。
それに、バハムートが、この異空間を治める為に、フェニックスの力を欲しているのも、
影の噂でフェニックスは知っている。
つまり、親し気に近寄って来て、自分を喰うのが目的とも考えられなくないのだ。
だから、フェニックスは余計にバハムートを警戒し、嫌っていた。
バハムート本人は、フェニックスを喰う気などなかったのだが、
この当時は悲しい誤解が生まれていた。

「ん?今日はどこに行くんだ?」
「何故、それを貴方に言わなければならないんですか?」

フェニックスは楽しい気分を台無しにされ、すぐにその場を離れようとした。
それをすぐにバハムートに気付かれ、フェニックスは素っ気ない態度を取る。
バハムートはフェニックスの態度に更に悲しそうな顔をした。

「初対面の態度が悪かったと言え、ここまで嫌われるとは・・・
どうしたら、お前は俺を許してくれるんだ?」
「さぁ?永遠に許さないかもしれませんね。」

フェニックスは、バハムートに冷たい言葉で返事し、優雅に空に飛んだ、
フェニックスは、その力を欲しがられ、人間以外にも、一部の幻獣から、
稀に命を狙われることがあった。
フェニックスを食べれば、永遠の命が手に入る。
そんな、根も葉もない噂に惑わされる存在が、この頃は幻獣達の中にもいたのだ。
だから、フェニックスは自分の身を守る為にも、自分に接してくる存在を
厳しく見定めるのも、仕方がない部分はあった。
結論的にはバハムートが初対面の時に、軽い気持ちでフェニックスと
手合わせしようとしたのがいけなかったのである。

「待て!頼む!もう少しだけでいいんだ!俺の話を聞いてくれ!」

バハムートは逃げ去ろうとする、フェニックスを追いかけようとしてくる。
フェニックスは、心底嫌な顔をし、バハムートから逃げようと、
急スピードで
身を隠せそうな場所を探す。

「しつこい・・・ドラゴン族で1、2位を争う存在と聞くが、
あんなにも、うざったい性格をしているものなのか?
幼稚すぎる気がするが・・・」

フェニックスは、バハムートの性格が理解出来ず、イライラする。
この頃のフェニックスには、バハムートなりの情が理解出来なった。
それが分かるようになるのは、フェニックスが人間のラリイと出会えるまで。

「くっ・・・毎度毎度、しつこいなぁ・・・」

フェニックスは、30分近くもバハムートに追い掛け回され、
疲れが出て、うんざりしているとこに、多くの洞窟の出入り口を見つけ、
その洞窟の中の1つに急いで入り、身を隠す。

「ここなら・・・どうにか出来そうか?」

息を潜めて隠れようとするフェニックスに、背後から、何かが声を掛ける。

「誰だ?俺の住処に来たのは?」
「?!」

フェニックスは驚き、自分の背後を確認すると、そこには、
バハムートの親友にして、最大の相棒である、イルルヤンカシュが居た。
フェニックスは、すぐにしまったと思った。バハムート側の
最大の味方と出会ってしまったのだ。
フェニックスは敵意のある顔でイルルヤンカシュと対峙する。
自分をすぐにバハムートに引き渡すだろうと考え、失望していた
フェニックスに、イルルヤンカシュは意外な言葉を掛けてくる。

「また、あいつに追い掛け回されていたのか?不死鳥よ?
なら、俺の住処の奥に隠れるがいい。匿ってやろう。」
「何故?」
「嫌か?信じられないのなら、俺は構わん。ただの俺の気まぐれなだ。
どうするかは、お前の好きにしろ。」
「・・・・・・・」

敵意を向けるフェニックスに対して、イルルヤンカシュは、
静かに笑い、フェニックスにそう言う。
フェニックスは、悩んだが、バハムートの気配を感じ、
居ても立っても居られない嫌悪感に負けて、イルルヤンカシュの言葉を信じて、
すぐにイルルヤンカシュの住処の奥に隠れた。
そして、数分もしない内に、バハムートが顔を出した。

「イル!フェニックスがここに来なかったか?!」
「バム・・・俺の住処に来たと思ったら、第一声がそれか?
こんなとこに、あのフェニックスが来るわけがないだろう?
それより、お前は、最近、フェニックスに執拗に構いすぎだ。
それでは、仲良くしたいなんて言っても、あのフェニックスの性格上、逆効果だと思うぞ?」
「だが、イル。早く仲直りするに越したことないだろう?」
「バム、それはお前の意見だ。フェニックスは俺達、ドラゴン族とは違う。
繊細な存在だ。力づくで、解決しようとしたら、逆に心閉ざし、
この問題は解決出来ないままだぞ?」
「うぅう・・・イルまで、そう言うか・・・」

バハムートは、辛そうな顔をして、自分が悪いのにも関わらず、
イルルヤンカシュを恨めしそうに見つめる。
イルルヤンカシュは、苦笑いし、そんなバハムートを宥める。
その対応は、慣れ親しんだものだと、フェニックスは2匹の会話で察した。

「いずれ、時が解決するだろう。バムの真剣な気持ちが、
フェニックスに伝わるまでは、無理に関わるな。それが一番だと俺は思うぞ。」
「わかった。今日はもう諦めることにする・・・」
「うむ。そうしろ。じゃなければ、過去のリヴァイアサン
みたいな長期の喧嘩になるぞ?あんなことがまた起きて欲しいのか?」
「うぅ!それは嫌だ!あいつも、ドラゴン族の癖に頑固だったからな!」
「なら、今日はこれくらいにして、反省して来い。」

イルルヤンカシュは、穏やかな雰囲気のまま、バハムートを送り返した。
バハムートの気配がすっかり消えてから、イルルヤンカシュは、
住処の奥に隠れた、フェニックスに声を掛ける。

「不死鳥?いるか?今なら、あいつもどっかに消えただろう。
帰るなら今のうちだ。」
「・・・・・・」

イルルヤンカシュは、奥から出て来た、フェニックスをチラっと見て、
すぐに目を閉じ、気軽に寝そべった姿勢のままになった。
フェニックスに必要以上の興味はないと言ったこの態度が、
逆にフェニックスには戸惑う結果になった。

「どうして、私を庇ったのです?」
「ん?別に深い意味などない。ただ、俺が勝手にお前に同情しただけだ。」
「同情?」
「ああ。あいつは悪い奴ではないんだが。時に、良い意味でも
悪い意味でも行動力がありすぎでな。
自分と他との関係性に、すぐに結果を求めたがる癖がある。
今回の様に、不死鳥とすぐに仲良くなりたいとかな?」
「・・・・・・」
「ドラゴン族同士なら、基本、そんな考えでも、問題はないかもしれなないが、
と言っても、全てがそうではないだろう?
俺も最初は、あいつの言動を受け入れていたわけではないからな。」
「意外ですね。貴方は、あんなバハムートの親友たる存在だと、
噂では聞きましたが?」

フェニックスは、ほぼ初対面である、イルルヤンカシュに、
疑いのある眼差しで、会話をする。
イルルヤンカシュの好意的な態度すら、この時のフェニックスには、
素直には信じられなかった。

「今は親友になったと言うだけの事だ。最初からではない。
それに、俺とて、最初はあいつの事はうざいと思ったものだ。
とにかく、陽気で行動的なのはいいのだが、なんと言うか・・・
空気が読めないとこもあったり、俺よりも若さ故なのか、
無鉄砲なとこもあったりで、今でも苦労はさせられている。」
「なのに・・・付き合うのですか?」

フェニックスは、そんな関係は損なのでは?と疑問に思いながらも、
イルルヤンカシュに聞く。
イルルヤンカシュは、穏やかな雰囲気のままで、フェニックスに答える。

「そうだな。嫌な思いも、苦労もさせられても、あいつは俺にとって、今は大事な親友だ。
俺が、逆にあいつに助けられたことだって、大いにある。
お互い、背を預けて戦った事も、何度だってあるほどにな。」
「・・・・・・」
「不死鳥。今はあいつが嫌いなのは、俺もわかるつもりだ。
だから、すぐじゃなくてもいい。
あいつが、幻獣達の為に、お前と言う存在を必要としていることだけは理解してやって欲しい。
後、ドラゴン族全てが、バハムートみたいな性格のドラゴンじゃないってこともな?」

イルルヤンカシュは、小さく笑い。そして、黙った。
フェニックスは、イルルヤンカシュの言葉を受け、考える。
しばらく沈黙した後で、フェニックスは短く、礼を言って、
イルルヤンカシュの住処から飛び去った。

「イルルヤンカシュですか・・・あのドラゴンは、私が今までに知る、
ドラゴンの中で、一番理解力がある存在かもしれませんね。
バハムートとも対等にいられる存在でもありますし・・・今後、
顔見知りくらいになっても、損はないかもしれません。」

フェニックスは、今後のイルルヤンカシュとの関係を考えながら、
早く自分の隠れ家を探そうと決めた。
それから、フェニックスは何度がイルルヤンカシュに助けられ、
両者は、今現在の親友関係になるのである。
イルルヤンカシュは、どんな形でフェニックスを助けても、
決して恩着せがましいことはしなかった。バハムート側の仲間に
なれと言った、勧誘も絶対にすることはなかった。
それが、フェニックスの信頼を早く得ることに繋がり、
バハムートとは対照的なイルルヤンカシュの性格が、
次第にフェニックスには心地良いものになった。
この事が、フェニックスは生涯、イルルヤンカシュに感謝することになった経緯である。
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