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エピローグ

「これは、過去にラリイが使っていた玩具で♥後、それから、
こちらは、赤ちゃんだった頃のラリイが、大好きだった離乳食の
レシピですね!♥
後、こちらの服は、私の親友のグリフィンの里の者がくれた服でして♥
大事に保管してありましたから、全部今でも使えますよ♥
どうでしょうか?セロリア?使って貰えますか?♥♥♥」
「はい!大事に、この子、アディリスにも使わせて頂きます♪」
「そうですか♥有難うございます♥♥♥
いやー♥にしても、アディリスは大人しい良い子ですね♥♥♥」

フェニックスは、アディリスが産まれてから、この調子で、
セロリアを全面的にサポートしていた。
今日もアディリスを大事そうに抱きしめて、セロリアの代わりにあやしていたくらいに。
セロリアも、最初のうちは、戸惑いもなくはなかったが、義理の父に当たる
フェニックスの行動に、今では感謝していた。
慣れない土地での子育て。ましてや、セロリアは幻獣界では、ただ一人の人間である。
そして、慣れない土地での出産は、セロリアの身体に大きな負担が、掛かったのも無理はなく、
アディリスを産んだ最初の1年は、セロリアの健康状態は芳しくなかったのもあった。
でも、フェニックスもラリイも、そんなセロリアを労り、無理をさせることはない。
何より、フェニックスは喜んで、初孫のアディリスの面倒を見ているのだ。
初孫の世話をしつつ、セロリアの体調にも気遣い、自分のほとんどの仕事は、
今、息子のラリイが大半、行えるまでになっていた。

「で、ラリイはですね♪このレシピで野菜嫌いを克服しまして♪
あ、そうだ!セロリアにも、我が家秘伝のカレーを教えないとですね♪」
「そうだったんですね♪あの彼が、野菜が嫌いだったなんて♪
秘伝のカレーですか?!わ、私なんかで、作れるでしょうか?」

フェニックスは、セロリアが体調の良い日は、子育てのコツを、
教えながら、ラリイの過去の話をした。
前世にラリイに教わった、ジンジャーシロップを入れた、紅茶を飲んだりしながら。
セロリアは、アディリスを通じて、更にフェニックスとの親子の関係を深めていく。

(最初は、怖い方だったら、どうしようと思ってたけど、来た時から、優しくしてくれて。
こうして、今では、アディリスの面倒まで・・・私の体調も気遣ってくれて・・・
本当に優しいお方だわ。私は本当に良い義父に恵まれたのね。)

セロリアは、心の中で、いつもフェニックスに感謝していた。
ただ、ラリイからすると、何もかもが喜べる感じでもなかった。

「フェニ・・・また、私の過去を、セロリアに話しましたね?」

セロリアのいない場所で、ラリイは親であるフェニックスを、少しだけ半目で見る。
フェニックスは、素知らぬ顔で、ラリイに微笑む。

「ん?どうしたんですか?ラリイ?何か不都合な事でも?♪」
「いえ・・・なんでもありません。」

ラリイは、フェニックスに言いたい事が山のようにあるが、黙った。
どうせ、止めて欲しいと言っても、聞かない親であることを、ラリイが一番知っていたからだ。
セロリアは、ラリイが仕事から帰って来る度に、嬉しそうに、今日は、
フェニックスから、ラリイの過去のあれを聞いただの、これを聞いただの言ってくる。
その度に、ラリイは、恥ずかしい思いをさせられていたのだ。
セロリアも、何も全部話さなくてもいいものを、ラリイの過去が
知れて嬉しいのか、つい話してしまうから、余計に厄介であった。

「フェニが、私の事で共有出来る存在が増えたことが嬉しいのはわかるが、
度合いがなぁ・・・」
「ラリイ?今日は、仕事疲れたでしょ?さぁ、ご飯にしましょう♪
今日はセロリアと、我が家の秘伝のカレー作ってみたんですよ♪
ね?アディリス♥」

フェニックスは上機嫌に、初孫のアディリスを背中におんぶして、
ラリイに微笑んでいた。
これには、ラリイも言いたいことがあっても、何も言えなくなってしまう。
子供や、妻を一番助けてくれているのは、現状、親であるフェニックスなのだから。
多少の不満は我慢しなければなるまいとラリイは思った。

「わかりました。フェニ。着替えたら、すぐに食堂に行きます。」
「はい♪すぐに来て下さいね!ラリイ♥」

軽い足取りで、フェニックスは、初孫のアディリスを連れて、
食堂に向かった。
ラリイは、そんなフェニックスの後ろ姿を見送り、自分が赤ん坊だった頃も、
親のフェニックスはこんな感じだったのかと、再認識させられた。

「わぁ♥海鮮カレーって、こんなに美味しいものだったんですね♪」
「良かったです、セロリア♪喜んで貰えたのなら♪
ラリイはどうですか?美味しいですか?」
「はい。いつものフェニが作ってくれるものと、同じで美味しいです。」
「きゃう!あぅあぅ!♥」
「おや?アディリス?貴方も食べたいんですか?♥」

セロリアの腕の中に居る、笑顔のアディリスを見て、フェニックスは楽しそうに笑いかける。
セロリアも同じように、息子のアディリスを見て、微笑む。

「アディリス。赤ちゃんの貴方には、今度、赤ちゃん用のを作ってあげるからね♪
今日は、こちらの赤ちゃん用の野菜カレー食べようね♪」

セロリアは、器用に自分の食事しながらも、アディリスにも、ご飯を食べさせていた。
フェニックスの指導が良かったのもあってか、セロリアは、
順調に子育てが上手くなっていった。
ラリイは、そんな今の自分の家庭を見て、幸せを感じる。
シルヴィルを失った時、ラリイは今後、誰も愛せないかもしれないと本気で考えていた。
フェニックスを悲しませることになるかもしれないが、生涯独身でいようと
決意しかけた時に、ラリイは、セロリアに出会う。
実際、セロリアとの最初の出会いはそんなに、特別なものではなかった。
ラリイがある用事で、人間界で馬を走らせ、急ぎ幻獣界に帰ろうとしていた際に、
馬でセロリアを轢きそうになってしまったのだ。
その時に、セロリアは足を怪我し、動けなくなってしまったので、
ラリイはやもなく、急ぎの事情もありで、セロリアを幻獣界に
ある自分の屋敷に、つい連れ帰ってしまった。
足の怪我が治った後も、セロリアは、訳があって、人間界に
帰りたからず、幻獣界で働かせて欲しいとラリイに願い出る。
ラリイも、変わった人間の女だなぁ・・・くらいの軽い気持ちではあったが、
セロリア当人が望むならと、自分の屋敷で働かせることにした。
それから、色々なトラブルが起こりながらも、セロリアの積極的な行動力に
次第に惹かれるようになり、セロリアの豊かな感情に触れていくうちに、
ラリイの人間としての感情にも良い効果を与え、ラリイは、
最後には、セロリアを愛している自分に気付いたのだ。
セロリアの方も、最初は恩人くらいにしか感じていなかったラリイに、
まさか最後は愛されるとは思わず、人間界を離れる躊躇いなどありながらも、
最終的にはラリイの愛を受け入れ、幻獣界のラリイの家に嫁ぐことになる。
セロリアも、ラリイと同じで、本当は生涯独身を貫く予定だった。
家庭の事情で祖母と2人で暮らしていた、セロリアは、小さい頃から教会に
世話になっていたのもあり、自分は将来はシスターとして生涯を
生きていくつもりだったのだが、祖母の急な提案で、かなり年上の金持ちの男と
結婚させられそうになり、それで嫌で人間界に帰りたがらなかったと言う経緯があった。
セロリアは、いつも厳しい祖母に嫌気が差していたのもある。
自分の気持ちを、何も考えずに、結婚を決められそうになって、
初めてセロリアは、祖母に反抗し、ある森に逃げ出した時に、
運よくラリイと出会い、幻獣界に来たのであった。
そうして、ラリイと夫婦になり、フェニックスからも、他の一部の幻獣達からも、
暖かく幻獣界に迎い入れられたのである。
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