エピローグ
あれから、さらに数年の時が経った。
フェニックスは、少し諦めかけていた願いが、今日、ようやく叶い、
歓喜に震えていた。
フェニックスの腕の中には、今、小さい生命が居る。
そう、待ちに待った「初孫」の誕生であった。
「ああ・・・セロリア。よく、よく頑張ってくれました!
こんなに元気そうな子を・・・ラリイの子をよく無事に産んでくれましたね!」
「フェニックス様・・・そんなにも喜んで頂けて、私も幸せです。」
フェニックスにセロリアと呼ばれた女は、まだ出産して、すぐだったのもあり、
弱々しい感じではあったが、フェニックスの言葉に泣きながら微笑んでいた。
当のラリイも、側で嬉しそうにしている。
妻が無事であったのと、子が産まれたこと、親であるフェニックスが、
あんなにも喜んでくれたことが、ラリイも嬉しかったのである。
「セロリア・・・よくやってくれたな。」
「貴方・・・良かったわ。」
セロリアは、夫であるラリイから、そう言われて、穏やかな表情で目を瞑った。
あれから、ラリイは幻獣界で、親であるフェニックスの仕事を本格的に補佐する仕事に付き、
オーディンと幻獣界の警護をすることもしていた。
そんな中で、ラリイは人間界に行った際に、ある人間の女と出会い、
どういうわけか、自分の屋敷に連れ帰ったのである。
フェニックスも、最初はかなり驚いたものの、ラリイにも、何か訳があるのだろうと、
しばらく様子を見ていたら、2人はいつの間にか恋仲になり、最後は結婚に至った。
そして、現在は、こうして初孫が誕生したのだ。
ラリイの結婚は、当初は幻獣界に波紋を呼んだ。
それは幻獣界で純粋な人間が、嫁として迎い入れるべきなのかと言う事で、
最初は揉めたのだが、あの大の人間嫌いであるラムウが、最終的には、
認めたことで、事を収まったのである。
ラムウは、ラリイに貸しがあったのだ。過去に、ラリイが死に掛ける程に
虐められるきっかけを作ってしまった事に、罪悪感はあったのだ。
それに、ラリイが幻獣と結婚したがらなくなったのも、自分の所為だとわかっていた。
だから、表面でこそ、人間など受け入れられぬとは言ったはいたが、
最後には、フェニックスの家系に口出しは出来ぬと、わざと引き下がった。
おかげで、セロリアは初の人間の嫁として、幻獣界で無事に暮らせることが出来たのである。
セロリアは、活発的な性格で、ラリイとは正反対な感じの女だったが、
感情も豊かで、元はシスターでもあったので、正義感も強く、慈愛もある女だった。
ラリイを、良い意味でも、悪い意味でも、振り回しはしたが、最後には、
恋愛に頑なだったラリイの心を開かせたのである。
もちろん、フェニックスも、セロリアについては、自身で
調べられる限りで素性を調べたりもした。
愛する息子が、どんな女の結婚することになるのか、気にならないわけがない。あのフェニックスが。
「セロリア・・・これは運命なんですかね・・・前世のラリイが、
愛した女性。
あのフェロニア国のエスカティーナ王女の子孫とは・・・
だからこそ、今のラリイは惹かれて、幻獣界に連れて来て
しまったのかもしれませんね。うふふ。」
フェニックスは、セロリアの素性が分かった時に、部屋で一匹で、
運命を感じ、笑っていたのだった。
この真実は、当人のラリイ達は知らない秘密であった。
「セロリア・・・その子の名前だが、前々から話していた、
アディリスでいいな?」
「うん。それで構わないわ。貴方。」
ラリイのこの声に、フェニックスは歓喜で昇天しかけていた、気分から現実に戻ってくる。
「ラリイ、セロリア。それで本当にいいのですか?別に、バハムートも、
何も強制はしてはいないんですよ?
もし、2人で別の名前が良ければ、それでも・・・」
「いえ、フェニ。私達は有難く、バハムートから貰った名前を、
この子に名付けたいと思います。
バハムートの気遣いもあるでしょうから、それを無下には出来ません。」
「フェニックス様。私も彼の意見に賛成です。それに、名前の響きも、私は好きです。」
「そう・・・ですか。2人が無理していないのでしたら、いいのですが・・・」
フェニックスは、初孫のアディリスを大切そうに抱きしめ、
2人を優しい微笑みで見た。
バハムートは、ある名前を、ラリイ達に提案していた。
アディリス。ドラゴン族での名前をバハムートは、ラリイ達の子供に授けようとしていたのだ。
バハムート的には、ラリイの今までの功績に対する感謝などの表れもあるが、
本当の理由は、過去のラリイの様に、またあの悲劇が繰り返されないように、
する為の布石の意味もある。
幻獣王であるバハムートから、名誉ある名を授かった子が、
もし、過去のラリイのように、虐めにあったのなら、今度こそ、
あんな状態では済まない事を示唆しているのだ。
幻獣の特にドラゴン族達は結束が固いので、今後、アディリスを
虐める者が出た場合は、容赦なく反撃をするだろう。
バハムートも幻獣王と言えども、加害者には確実に前よりも、
厳しい罰を与えると予測できる。
つまり、アディリスと言う名を貰うことは、全面的にバハムート達、
ドラゴン族がいざと言う時には、アディリスを守ってくれると言う確証を得たようなものだ。
こんなに有難いことはないと、実はフェニックスも、わかってはいたのだが、
初孫なのもあるし、自分もちゃっかり、色々と名前を考えていた手前、
ちょっと残念に思うところもなくはなかった。
「アディリス・・・貴方は幸せな子ですね。」
フェニックスは、健やかに寝ている初孫を見て、嬉しくなって微笑む。
赤ん坊のアディリスは、すやすやとフェニックスの腕の中で眠る。
フェニックスは、赤ん坊だった頃のラリイを思い出し、笑顔が止まらない。
「ああー♥やっぱり、ラリイの子ですねぇ♥♥♥
見て下さい!この寝顔!あの頃のラリイのようです♥♥♥
私はやっと、初孫を抱きしめることが出来ました♥
セロリアにも、再び感謝しなければなりませんね♥♥♥
あ!そうだ!セロリア!子育ては私も手伝いますからね!!♥
過去のラリイに使っていた物も、掘り出さなければ♥
あーもうー楽しみでしょうがないです♥
アディリス♥おじいちゃんと一緒に今後は沢山遊びましょうね♥」
「え?!」
フェニックスの久しぶりの親馬鹿、いや今は祖父馬鹿と言うべきか、
それが大爆発し、それを初めて見ることになった、セロリアは、目を丸くして驚く。
フェニックスがこんな状態になるなど、セロリアは全く予想していなかったのだ。
ラリイの方はと言うと、そんな親のフェニックスを見て、苦笑いをするしかない。
「フェニ。面倒を見てくれるのは嬉しいですが、セロリアが驚いてますから、
もう少し落ち着いて下さい。」
ラリイは、少し離れた親のフェニックスに声を掛ける。
「大丈夫ですよ!ラリイ!貴方達の子なんですよ?♥
この私が悪い様にするわけがないじゃないですか♥♥♥
セロリアも、遠慮なく私を頼って下さいね?♥
赤ん坊のラリイの世話をしていた経験が私には、しっかりとありますから♥♥♥
変なメイド達よりも、私の方が上手ですよ!♥♥♥」
「え・・・そ、そうなんですね。」
セロリアは、意気揚々としているフェニックスを不思議そうに見るしか出来なかった。
でも、この場の雰囲気は、優しく穏やかなものであった。
バハムートも授けた名前が使われた事に凄く喜び、アディリスを
我が子の様に可愛がってくれたと言う。
後にアディリスは、イルディアの娘である、シルヴィルと
婚約する仲になるのは、大分先の話である。
フェニックスは、少し諦めかけていた願いが、今日、ようやく叶い、
歓喜に震えていた。
フェニックスの腕の中には、今、小さい生命が居る。
そう、待ちに待った「初孫」の誕生であった。
「ああ・・・セロリア。よく、よく頑張ってくれました!
こんなに元気そうな子を・・・ラリイの子をよく無事に産んでくれましたね!」
「フェニックス様・・・そんなにも喜んで頂けて、私も幸せです。」
フェニックスにセロリアと呼ばれた女は、まだ出産して、すぐだったのもあり、
弱々しい感じではあったが、フェニックスの言葉に泣きながら微笑んでいた。
当のラリイも、側で嬉しそうにしている。
妻が無事であったのと、子が産まれたこと、親であるフェニックスが、
あんなにも喜んでくれたことが、ラリイも嬉しかったのである。
「セロリア・・・よくやってくれたな。」
「貴方・・・良かったわ。」
セロリアは、夫であるラリイから、そう言われて、穏やかな表情で目を瞑った。
あれから、ラリイは幻獣界で、親であるフェニックスの仕事を本格的に補佐する仕事に付き、
オーディンと幻獣界の警護をすることもしていた。
そんな中で、ラリイは人間界に行った際に、ある人間の女と出会い、
どういうわけか、自分の屋敷に連れ帰ったのである。
フェニックスも、最初はかなり驚いたものの、ラリイにも、何か訳があるのだろうと、
しばらく様子を見ていたら、2人はいつの間にか恋仲になり、最後は結婚に至った。
そして、現在は、こうして初孫が誕生したのだ。
ラリイの結婚は、当初は幻獣界に波紋を呼んだ。
それは幻獣界で純粋な人間が、嫁として迎い入れるべきなのかと言う事で、
最初は揉めたのだが、あの大の人間嫌いであるラムウが、最終的には、
認めたことで、事を収まったのである。
ラムウは、ラリイに貸しがあったのだ。過去に、ラリイが死に掛ける程に
虐められるきっかけを作ってしまった事に、罪悪感はあったのだ。
それに、ラリイが幻獣と結婚したがらなくなったのも、自分の所為だとわかっていた。
だから、表面でこそ、人間など受け入れられぬとは言ったはいたが、
最後には、フェニックスの家系に口出しは出来ぬと、わざと引き下がった。
おかげで、セロリアは初の人間の嫁として、幻獣界で無事に暮らせることが出来たのである。
セロリアは、活発的な性格で、ラリイとは正反対な感じの女だったが、
感情も豊かで、元はシスターでもあったので、正義感も強く、慈愛もある女だった。
ラリイを、良い意味でも、悪い意味でも、振り回しはしたが、最後には、
恋愛に頑なだったラリイの心を開かせたのである。
もちろん、フェニックスも、セロリアについては、自身で
調べられる限りで素性を調べたりもした。
愛する息子が、どんな女の結婚することになるのか、気にならないわけがない。あのフェニックスが。
「セロリア・・・これは運命なんですかね・・・前世のラリイが、
愛した女性。
あのフェロニア国のエスカティーナ王女の子孫とは・・・
だからこそ、今のラリイは惹かれて、幻獣界に連れて来て
しまったのかもしれませんね。うふふ。」
フェニックスは、セロリアの素性が分かった時に、部屋で一匹で、
運命を感じ、笑っていたのだった。
この真実は、当人のラリイ達は知らない秘密であった。
「セロリア・・・その子の名前だが、前々から話していた、
アディリスでいいな?」
「うん。それで構わないわ。貴方。」
ラリイのこの声に、フェニックスは歓喜で昇天しかけていた、気分から現実に戻ってくる。
「ラリイ、セロリア。それで本当にいいのですか?別に、バハムートも、
何も強制はしてはいないんですよ?
もし、2人で別の名前が良ければ、それでも・・・」
「いえ、フェニ。私達は有難く、バハムートから貰った名前を、
この子に名付けたいと思います。
バハムートの気遣いもあるでしょうから、それを無下には出来ません。」
「フェニックス様。私も彼の意見に賛成です。それに、名前の響きも、私は好きです。」
「そう・・・ですか。2人が無理していないのでしたら、いいのですが・・・」
フェニックスは、初孫のアディリスを大切そうに抱きしめ、
2人を優しい微笑みで見た。
バハムートは、ある名前を、ラリイ達に提案していた。
アディリス。ドラゴン族での名前をバハムートは、ラリイ達の子供に授けようとしていたのだ。
バハムート的には、ラリイの今までの功績に対する感謝などの表れもあるが、
本当の理由は、過去のラリイの様に、またあの悲劇が繰り返されないように、
する為の布石の意味もある。
幻獣王であるバハムートから、名誉ある名を授かった子が、
もし、過去のラリイのように、虐めにあったのなら、今度こそ、
あんな状態では済まない事を示唆しているのだ。
幻獣の特にドラゴン族達は結束が固いので、今後、アディリスを
虐める者が出た場合は、容赦なく反撃をするだろう。
バハムートも幻獣王と言えども、加害者には確実に前よりも、
厳しい罰を与えると予測できる。
つまり、アディリスと言う名を貰うことは、全面的にバハムート達、
ドラゴン族がいざと言う時には、アディリスを守ってくれると言う確証を得たようなものだ。
こんなに有難いことはないと、実はフェニックスも、わかってはいたのだが、
初孫なのもあるし、自分もちゃっかり、色々と名前を考えていた手前、
ちょっと残念に思うところもなくはなかった。
「アディリス・・・貴方は幸せな子ですね。」
フェニックスは、健やかに寝ている初孫を見て、嬉しくなって微笑む。
赤ん坊のアディリスは、すやすやとフェニックスの腕の中で眠る。
フェニックスは、赤ん坊だった頃のラリイを思い出し、笑顔が止まらない。
「ああー♥やっぱり、ラリイの子ですねぇ♥♥♥
見て下さい!この寝顔!あの頃のラリイのようです♥♥♥
私はやっと、初孫を抱きしめることが出来ました♥
セロリアにも、再び感謝しなければなりませんね♥♥♥
あ!そうだ!セロリア!子育ては私も手伝いますからね!!♥
過去のラリイに使っていた物も、掘り出さなければ♥
あーもうー楽しみでしょうがないです♥
アディリス♥おじいちゃんと一緒に今後は沢山遊びましょうね♥」
「え?!」
フェニックスの久しぶりの親馬鹿、いや今は祖父馬鹿と言うべきか、
それが大爆発し、それを初めて見ることになった、セロリアは、目を丸くして驚く。
フェニックスがこんな状態になるなど、セロリアは全く予想していなかったのだ。
ラリイの方はと言うと、そんな親のフェニックスを見て、苦笑いをするしかない。
「フェニ。面倒を見てくれるのは嬉しいですが、セロリアが驚いてますから、
もう少し落ち着いて下さい。」
ラリイは、少し離れた親のフェニックスに声を掛ける。
「大丈夫ですよ!ラリイ!貴方達の子なんですよ?♥
この私が悪い様にするわけがないじゃないですか♥♥♥
セロリアも、遠慮なく私を頼って下さいね?♥
赤ん坊のラリイの世話をしていた経験が私には、しっかりとありますから♥♥♥
変なメイド達よりも、私の方が上手ですよ!♥♥♥」
「え・・・そ、そうなんですね。」
セロリアは、意気揚々としているフェニックスを不思議そうに見るしか出来なかった。
でも、この場の雰囲気は、優しく穏やかなものであった。
バハムートも授けた名前が使われた事に凄く喜び、アディリスを
我が子の様に可愛がってくれたと言う。
後にアディリスは、イルディアの娘である、シルヴィルと
婚約する仲になるのは、大分先の話である。