第10章「それでも愛する息子達」
「洞窟の中には、すんなりと侵入出来たな。」
「そうですね。兄も、住処の方で、かなり深刻に話し合いをしてたみたいですから、
良いタイミングだったかもしれません。」
「イルディアからすれば、この洞窟にしまっておきさえすれば、
大丈夫だと、安心しきっているのだろうな。我が子ながら、何とも甘い考えよ。」
ラリイ達は、思っていたよりも、あっさりと例の洞窟の中に入れて、拍子抜けしていた。
とは言え、シルヴィルが、まず住処の様子を確認しに、一族の仲間に、
気付かれないようにしながらも、兄が今何をしているか確認した後で、ラリイ達の元に戻って来て、
それから、ラリイ達は洞窟に入ったのだ。洞窟には警備している者すらもいなかった。
「大事な物を隠している場所の割には、警備とかはしないんだな。」
「それが鬼人族の考えよ。無駄な警備などせずとも、奪われることはないと
自信を思っているのだ。俺にプライドが高いだの息子は言っていたが、
なかなかどうして。鬼人族も、かなりのプライドを持っている一族よ。」
「うう、ごめんなさい・・・お父さん。」
「謝るでない。シルヴィル。お前を責めたわけではないのだからな。」
「はい・・・」
イルルヤンカシュは、申し訳なさそうに謝る娘を優しく慰めた。
シルヴィルは嬉しそうにそんな父の言葉を聞く。
ラリイも、つい穏やかな気持ちになりそうなのを我慢し、
イルルヤンカシュに声を掛ける。
「この洞窟に入りはしたが、肝心の物がありそうなのは、
やっぱり支配者の間か、封印の間ではないか?だとしたら、私達はどう入る?」
ラリイが疑問に思い、不安な顔をすると、イルルヤンカシュは、
ニヤリと笑う。
「ラリイ。これでも俺は、一度は鬼人族の長になった幻獣だぞ?
それに、俺の身体の一部は、まだこの洞窟にありそうだからな、
どうにかなるだろう。」
イルルヤンカシュが、まずは支配者の間のドアに立ち、意識を
集中させると、ドアは、すぐに開いた。
「俺が一族の元を去った後も、そのままにしておいたようだな。
俺が二度とここに来ることはないと思ったからこそ、何も変えなかったのか・・・
逆に今回はそれが、仇になったようだな。」
「凄い・・・やっぱり、お父さんは・・・」
シルヴィルは、自分の父を見て、嬉しそうな顔をまたしている。
自分の父が、鬼人族と関りがあると言う、証拠を目の前で見たのだから、
シルヴィルとしては、何より嬉しかったのだろう。
母や兄から、話だけは聞かされていても、今まで体感できるものがないから、
実感が出来なかったんだろうなと、ラリイは思った。
「さぁ、まずこの間を手分けして急ぎ探そう。あんまり長居すれば、
流石にイルディア達も勘づかれるだろうからな。」
「そうですね!」
「うん。早く探そう!」
ラリイ達は、急いで、支配者の間の隅々を調べる。
「あ、あった!これです!叔父が兄に託されたいたものは!」
シルヴィルは、嬉しそうな声で、ラリイ達に話していた、例の紙の束を見つけ出し、
見せるように掲げた、その瞬間であった。
「うっ!!」
「くっ!痺れる・・・異常系の魔法か?!」
ラリイ達は、突然何者かに、魔法攻撃を受け、身体が一時的に痺れ、何も出来なくなり、
その場にしゃがみ込んだ。それを、ある鬼人族の男と人間の男が、
冷ややかに見下して見ている。
「やっぱり、お前が来ると思っていたぞ?イルルヤンカシュ。」
「ダグール・・・お前か・・・」
「こいつも居ると言う事は、聖星団が関わっていると思って間違いなさそうだな。」
「ゴルト・・・貴様・・・」
イルルヤンカシュとラリイは、それぞれに敵の名前を言い、睨み合う。
「キャ!止めて!離して!!!」
「シ、シルヴィル!!」
シルヴィルの悲鳴が聞こえて、ラリイは、シルヴィルの方を必死に見る。
1人の人間の男が、シルヴィルを取り押さえていた。
ゴルトの部下が、シルヴィルを乱暴に拘束しようとしていたのだ。
「シルヴィルに何かしたら、絶対に許さないぞ!ゴルト!!!」
ラリイは、生まれて初めて、人間に対して激しく憎悪を抱いた。
そして、激怒した顔で睨みつける。ゴルトの部下はそんなラリイに
怯えはしたが、ゴルトの方は澄ましたままの顔で、ラリイを馬鹿にする。
「ふん。若造が。いくら幻獣フェニックスの息子とは言え、何が出来る?
今は身体が痺れて何も出来まい。流石に、幻獣も、召喚士が使う固有の魔法には抗えないだろう。」
「召喚士・・・か・・・道理で、普通の魔法と違うわけだ。」
イルルヤンカシュは、悔しそうな顔をして、ゴルトの話を聞く。
どうやら、ラリイ達は、ダグールとゴルトに、ハメられて、
この洞窟に入ってしまったようだ。
ゴルトの部下の中に、1人召喚士がいたようで、その所為で、
ラリイ達は、罠に掛けられていた事に気付けなかったのだ。
召喚士は、幻獣に対する、あらゆる知識を持っている。
ので、それを悪用されて、こんな状態になってしまった。
ラリイは半分は人間と言え、親のフェニックスの力が強いのが
災いしてしまい、召喚士の力が効いてしまうようだ。
「イルルヤンカシュ。お前は、あの時に息子を殺しておくべきだったな?」
「何?」
「そうすれば、お前が関わっている事など、バレることはなかっただろうに。
それに、そこの男に息子を託し、我々の住処に帰したのも過ちだったな?
おかげで、こちらは、お前達の存在を知ることが出来たので助かった。
最初の計画とは変わるかもしれないが、丁度いい。お前達には、
ここで死んで貰い、この計画の首謀者の仲間入りをして貰おうか?」
「何だと?!!」
ラリイは、ダグールの言葉に、更にキレて、今度はダグールを、
激しく睨みつけた。
「その前に、その女から、ウェウリ様の密書を取り返さなければ!寄越せ!!」
ゴルトは、シルヴィルの側に寄ると、無理矢理にシルヴィルの手から、密書を奪おうとする。
「嫌です!誰が貴方達なんかに渡すものですか!!」
「うるさい!魔族の小娘が!!大人しく渡せ!」
ゴルトは、シルヴィルの頬を容赦なく叩き、痛みで黙らせた瞬間に、
シルヴィルの手から密書を奪った。
この行為にラリイは、完全にキレた。敵から掛けられた攻撃魔法に必死に抵抗し、
シルヴィルをすぐにでも助けようと、もがく。
「ぐぅううう!」
「よせ!ラリイ!無理に動けば、お前の身体に更に激しいダメージがいくぞ?!」
「それでも、構わない!イルル!私は、自分がどうなろうとも、
私の大事な者を守りたいだけだ!!!」
ラリイは、自分の腰にある、アルゥイントに手を掛け、アルゥイントに強く願う。
(力を貸してくれ!アルゥイント!シルヴィルを助ける為に!!)
ラリイの気持ちは、すぐにアルゥイントに届く。
アルゥイントは、淡い光でラリイを包むと、ラリイに掛けられていた、敵の攻撃魔法の効果が薄れさせた。
少しでも、身体が動かせるようになったラリイは、
素早くゴルトの部下を斬りつけて、シルヴィルを解放して、
自分の胸に抱き、シルヴィルを救った。
「ラリイ!!!」
「シルヴィル!大丈夫か?!」
「はい!私は何とか!でも、あの紙の束が!」
「それはいい!今は私の後ろに隠れているんだ!」
ラリイは、アルゥイントをゴルト達の方に向け、シルヴィルを無事に取り戻して、
すぐにイルルヤンカシュの側に戻ってきた。
ラリイは、イルルヤンカシュ親子を守るように、アルゥイントを構えて、
ゴルト達の前に立った。
「何て、無茶な真似をする・・・心配をさせるな・・・ラリイ。」
「イルル。ごめん。でも、我慢出来なかったんだ。
シルヴィルに乱暴するあいつを・・・どうしても・・・」
「ラリイ・・・有難う・・・」
シルヴィルは、薄っすらと涙を流して、ラリイに感謝する。
しかし、ラリイ達の状況が最悪であるのは変わらない。
ゴルトの部下と、ダグールを支持する鬼人族達に、
洞窟はすっかり包囲されてしまっていたのだ。
それに、イルルヤンカシュは未だに、身体が麻痺してろくに動ける状態でなかった。
ラリイも、また召喚士が使う、固有の攻撃魔法を使われれば、
どんな状態になるか、わからない。
ラリイ達は、どうにもならない危機に瀕していた。
「そうですね。兄も、住処の方で、かなり深刻に話し合いをしてたみたいですから、
良いタイミングだったかもしれません。」
「イルディアからすれば、この洞窟にしまっておきさえすれば、
大丈夫だと、安心しきっているのだろうな。我が子ながら、何とも甘い考えよ。」
ラリイ達は、思っていたよりも、あっさりと例の洞窟の中に入れて、拍子抜けしていた。
とは言え、シルヴィルが、まず住処の様子を確認しに、一族の仲間に、
気付かれないようにしながらも、兄が今何をしているか確認した後で、ラリイ達の元に戻って来て、
それから、ラリイ達は洞窟に入ったのだ。洞窟には警備している者すらもいなかった。
「大事な物を隠している場所の割には、警備とかはしないんだな。」
「それが鬼人族の考えよ。無駄な警備などせずとも、奪われることはないと
自信を思っているのだ。俺にプライドが高いだの息子は言っていたが、
なかなかどうして。鬼人族も、かなりのプライドを持っている一族よ。」
「うう、ごめんなさい・・・お父さん。」
「謝るでない。シルヴィル。お前を責めたわけではないのだからな。」
「はい・・・」
イルルヤンカシュは、申し訳なさそうに謝る娘を優しく慰めた。
シルヴィルは嬉しそうにそんな父の言葉を聞く。
ラリイも、つい穏やかな気持ちになりそうなのを我慢し、
イルルヤンカシュに声を掛ける。
「この洞窟に入りはしたが、肝心の物がありそうなのは、
やっぱり支配者の間か、封印の間ではないか?だとしたら、私達はどう入る?」
ラリイが疑問に思い、不安な顔をすると、イルルヤンカシュは、
ニヤリと笑う。
「ラリイ。これでも俺は、一度は鬼人族の長になった幻獣だぞ?
それに、俺の身体の一部は、まだこの洞窟にありそうだからな、
どうにかなるだろう。」
イルルヤンカシュが、まずは支配者の間のドアに立ち、意識を
集中させると、ドアは、すぐに開いた。
「俺が一族の元を去った後も、そのままにしておいたようだな。
俺が二度とここに来ることはないと思ったからこそ、何も変えなかったのか・・・
逆に今回はそれが、仇になったようだな。」
「凄い・・・やっぱり、お父さんは・・・」
シルヴィルは、自分の父を見て、嬉しそうな顔をまたしている。
自分の父が、鬼人族と関りがあると言う、証拠を目の前で見たのだから、
シルヴィルとしては、何より嬉しかったのだろう。
母や兄から、話だけは聞かされていても、今まで体感できるものがないから、
実感が出来なかったんだろうなと、ラリイは思った。
「さぁ、まずこの間を手分けして急ぎ探そう。あんまり長居すれば、
流石にイルディア達も勘づかれるだろうからな。」
「そうですね!」
「うん。早く探そう!」
ラリイ達は、急いで、支配者の間の隅々を調べる。
「あ、あった!これです!叔父が兄に託されたいたものは!」
シルヴィルは、嬉しそうな声で、ラリイ達に話していた、例の紙の束を見つけ出し、
見せるように掲げた、その瞬間であった。
「うっ!!」
「くっ!痺れる・・・異常系の魔法か?!」
ラリイ達は、突然何者かに、魔法攻撃を受け、身体が一時的に痺れ、何も出来なくなり、
その場にしゃがみ込んだ。それを、ある鬼人族の男と人間の男が、
冷ややかに見下して見ている。
「やっぱり、お前が来ると思っていたぞ?イルルヤンカシュ。」
「ダグール・・・お前か・・・」
「こいつも居ると言う事は、聖星団が関わっていると思って間違いなさそうだな。」
「ゴルト・・・貴様・・・」
イルルヤンカシュとラリイは、それぞれに敵の名前を言い、睨み合う。
「キャ!止めて!離して!!!」
「シ、シルヴィル!!」
シルヴィルの悲鳴が聞こえて、ラリイは、シルヴィルの方を必死に見る。
1人の人間の男が、シルヴィルを取り押さえていた。
ゴルトの部下が、シルヴィルを乱暴に拘束しようとしていたのだ。
「シルヴィルに何かしたら、絶対に許さないぞ!ゴルト!!!」
ラリイは、生まれて初めて、人間に対して激しく憎悪を抱いた。
そして、激怒した顔で睨みつける。ゴルトの部下はそんなラリイに
怯えはしたが、ゴルトの方は澄ましたままの顔で、ラリイを馬鹿にする。
「ふん。若造が。いくら幻獣フェニックスの息子とは言え、何が出来る?
今は身体が痺れて何も出来まい。流石に、幻獣も、召喚士が使う固有の魔法には抗えないだろう。」
「召喚士・・・か・・・道理で、普通の魔法と違うわけだ。」
イルルヤンカシュは、悔しそうな顔をして、ゴルトの話を聞く。
どうやら、ラリイ達は、ダグールとゴルトに、ハメられて、
この洞窟に入ってしまったようだ。
ゴルトの部下の中に、1人召喚士がいたようで、その所為で、
ラリイ達は、罠に掛けられていた事に気付けなかったのだ。
召喚士は、幻獣に対する、あらゆる知識を持っている。
ので、それを悪用されて、こんな状態になってしまった。
ラリイは半分は人間と言え、親のフェニックスの力が強いのが
災いしてしまい、召喚士の力が効いてしまうようだ。
「イルルヤンカシュ。お前は、あの時に息子を殺しておくべきだったな?」
「何?」
「そうすれば、お前が関わっている事など、バレることはなかっただろうに。
それに、そこの男に息子を託し、我々の住処に帰したのも過ちだったな?
おかげで、こちらは、お前達の存在を知ることが出来たので助かった。
最初の計画とは変わるかもしれないが、丁度いい。お前達には、
ここで死んで貰い、この計画の首謀者の仲間入りをして貰おうか?」
「何だと?!!」
ラリイは、ダグールの言葉に、更にキレて、今度はダグールを、
激しく睨みつけた。
「その前に、その女から、ウェウリ様の密書を取り返さなければ!寄越せ!!」
ゴルトは、シルヴィルの側に寄ると、無理矢理にシルヴィルの手から、密書を奪おうとする。
「嫌です!誰が貴方達なんかに渡すものですか!!」
「うるさい!魔族の小娘が!!大人しく渡せ!」
ゴルトは、シルヴィルの頬を容赦なく叩き、痛みで黙らせた瞬間に、
シルヴィルの手から密書を奪った。
この行為にラリイは、完全にキレた。敵から掛けられた攻撃魔法に必死に抵抗し、
シルヴィルをすぐにでも助けようと、もがく。
「ぐぅううう!」
「よせ!ラリイ!無理に動けば、お前の身体に更に激しいダメージがいくぞ?!」
「それでも、構わない!イルル!私は、自分がどうなろうとも、
私の大事な者を守りたいだけだ!!!」
ラリイは、自分の腰にある、アルゥイントに手を掛け、アルゥイントに強く願う。
(力を貸してくれ!アルゥイント!シルヴィルを助ける為に!!)
ラリイの気持ちは、すぐにアルゥイントに届く。
アルゥイントは、淡い光でラリイを包むと、ラリイに掛けられていた、敵の攻撃魔法の効果が薄れさせた。
少しでも、身体が動かせるようになったラリイは、
素早くゴルトの部下を斬りつけて、シルヴィルを解放して、
自分の胸に抱き、シルヴィルを救った。
「ラリイ!!!」
「シルヴィル!大丈夫か?!」
「はい!私は何とか!でも、あの紙の束が!」
「それはいい!今は私の後ろに隠れているんだ!」
ラリイは、アルゥイントをゴルト達の方に向け、シルヴィルを無事に取り戻して、
すぐにイルルヤンカシュの側に戻ってきた。
ラリイは、イルルヤンカシュ親子を守るように、アルゥイントを構えて、
ゴルト達の前に立った。
「何て、無茶な真似をする・・・心配をさせるな・・・ラリイ。」
「イルル。ごめん。でも、我慢出来なかったんだ。
シルヴィルに乱暴するあいつを・・・どうしても・・・」
「ラリイ・・・有難う・・・」
シルヴィルは、薄っすらと涙を流して、ラリイに感謝する。
しかし、ラリイ達の状況が最悪であるのは変わらない。
ゴルトの部下と、ダグールを支持する鬼人族達に、
洞窟はすっかり包囲されてしまっていたのだ。
それに、イルルヤンカシュは未だに、身体が麻痺してろくに動ける状態でなかった。
ラリイも、また召喚士が使う、固有の攻撃魔法を使われれば、
どんな状態になるか、わからない。
ラリイ達は、どうにもならない危機に瀕していた。