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第10章「それでも愛する息子達」

「ヒヤデスの言う通り、今回、宰相に利用されようとしている、
魔族で、鬼人族のその一族は知能が、かなり高い魔族だ。
ただの口約束だけで、今回の計画にも参加したりはしないだろう。
何かしらの密書なり、証を貰っていると私も思う。」
「まさか・・・鬼人族の一族だったのですか。今回の協力しようとしている魔族とは・・・」

ヒヤデスがラリイの話を聞いて、意外そうな顔をした。
しかし、すぐに嬉しそうな顔になる。

「鬼人族の一族なら、確実に何かしら、宰相とやり取りをしている可能性がありそうですね。
彼らは、過去に魔王の一族としても、人間の国とやり取りをしていたこともある魔族です。
優秀な分、魔族としてのプライドもかなり高い。なら、ラリイ様の言う通り、
口約束レベルなんかで、協力などするわけがない。用心深いところもありますから、
ただの騎士相手でも、相手にしないでしょう。それこそ、宰相くらいにならないと・・・」
「そうなのか・・・鬼人族と言うものは・・・」

ヒヤデスの言葉に、ソルアも感心した声を上げる。

「これは、今回は光が見えてきそうですね!ソルア様!」
「アルクトゥルス。そうだな。今回は、宰相の方も焦ったのかもしれないな。
早い段階に聖星団が来てことで、隙を見せたのかもしれない。」
「これを活かさない手はありません。」

ヒヤデスも、ソルアを顔を見て、今後の対策を話し合う。

「後、ヒヤデス達に言いたいことがある。」
「何でしょうか?ラリイ様?」
「鬼人族の一族が、何か大きな事をしようとしたら、それは絶対に私の方で止める。
実は、私の方でかなり強力な助っ人がいるのだ。今、この場では言えないが。」
「本当ですか!ラリイ様が、そこまでおっしゃるのなら、私達は信じたいと思います。」
「有難う。その話は後で、また詳しく話す。」
「わかりました。では、私達も動きましょうか・・・」

2人の王子達は、アルクトゥルスに護衛されて、城の方に戻った。
ヒヤデスは、ラリイから、再度、魔族側の話を聞こうと、ラリイと一緒に屋敷に残り、会話を続ける。

「ラリイ様。先ほどの強力な助っ人と言うのは?」
「実は、その鬼人族の一族の1人で、魔族側の首謀者の1人である男に妹がいるのだが、
その妹が、こちら側の味方になってくれている。」
「なんと?!それは真ですか?!」
「ああ。それから、その鬼人族の一族は、幻獣イルルヤンカシュの庇護も過去に受けていた。」
「まさか・・・そこまでの一族だったとは・・・」

ヒヤデスは、驚きの連続で、口を開けて、目を丸くしている。

「あの幻獣の中でも、特に幻と名高く、しかもバハムート様よりも
強かったかもしれないとされる方ですよね?」
「さぁ?私も、噂でしか聞いたことがないからな。」

ラリイは、イルルヤンカシュの評価をヒヤデスから聞いて、少し笑ってしまった。
知っている者なら、イルルヤンカシュはそんな感じで人間界に伝わっているらしい。
それが、ラリイには少し面白かった。

「ラリイ様は、そのイルルヤンカシュ様と連絡が取れると言う事でしょうか?」
「そうだ。それで、鬼人族の一族と戦いになりそうになったら、
そのイルルヤンカシュが止めてくれると、私と約束してくれた。」
「なるほど。これほど、強力な助っ人はいませんね。」

ヒヤデスは、ラリイの言葉に、納得し、何度も頷いていた。
ラリイからの、この情報はヒヤデス達にとっても、心強いものになったのだろう。

「ラリイ様の方に、そこまでの協力者がいるのではあれば、
宰相に気付かれる前に、事を起こした方がいいかもしれませんね。」
「うん。私もそう思う。早いに越したことはない。」
「そのラリイ様の味方をしてくれる、鬼人族の女と、協力して貰い、
さっきも話をした密書なり、証なりを、鬼人族の住処から、
探し出して貰うことは出来るでしょうか?」
「やってみよう。」

ラリイはヒヤデスの提案をすぐに受け入れた。
シルヴィルに協力して貰えれば、それほど難しい事でもないと、
ラリイは思った。
いや、シルヴィルだけでなく、ミディアも協力してくれそうな気がラリイはしていた。
ミディアも、息子のイルディアが人間界を侵略することを、
望んでない雰囲気はあった。
ミディアにはわかっているのではないだろうか?
もし、息子が悪い事をしようとしたら、元夫である、イルルヤンカシュが
止めに動くかもしれないと言う事を。

「では、ラリイ様。すぐにでも、その件をお願い出来ますか?」
「ああ。1、2日もかからずにやれるように努力しよう。」
「ぜひ、それでお願いします!私は、アルクトゥルスの所に行き、
ソルア王子と、
人間側の方の問題を極力片付けたいと思います。」
「わかった。そちらはヒヤデス達に任せよう。」

ラリイは、ヒヤデスと別れ、イルルヤンカシュの元に帰った。
そして、この話をイルルヤンカシュとシルヴィルに聞かせた。

「確かに、人間と交わした証を奪えば、イルディアも、人間に協力する意味が無くなる。
なれば、無駄な戦いもしなくて済むだろう。」
「シルヴィル・・・その証になりそうなものを、見たことはあるか?」
「証ですか・・・?」
「たぶん、書類っぽいものな気がするんだ。イルディアが、
厳重そうに、大事にしていた書類のようなものはなかったか?」
「うーん・・・あ、もしかしたら?」
「何か思い当たるものがあったか?」

ラリイは、シルヴィルが何かを思い出したような顔に、期待をする。

「叔父のダグールが、兄から紙の束みたいなものを受け取って、
私達の住処の離れにある洞窟に持って行った感じがありました。」
「洞窟・・・となると、あそこか・・・」
「イルル、何かわかるか?」

娘の発言に、イルルヤンカシュは考え込む。ラリイは、
イルルヤンカシュからも何かわかるかもしれないと、ますます期待する。

「俺がまだ居た頃のままなら、その洞窟は鬼人族達の貴重なモノを保管したり、
封印したりする為の場所なはずだ。
過去には俺の身体の一部も収めたことがある。鱗や爪などをな。」
「イルルの鱗や爪か・・・いい素材になりそうだものな・・・」

ラリイはそれを聞いて、その洞窟が怪しいそうだと睨んだ。
ヒヤデス達が望んでいるものは、その洞窟にありそうだと。

「その洞窟にシルヴィルは入れるのか?」
「入れるのは、入れますが・・・もし、叔父が兄から託された紙の束をしまった場所が、
支配者の間や、封印の間だと、私では入れないです。
そこは、一族の長しか入れないようになっているはずの場所なので。」
「そんな場所があるのか?イルル?」
「あるな。だから、住処に普段を置いておきたくないものを、
その洞窟に隠して置くと、あいつも過去に、俺に話したことがある。」
「では・・・その洞窟に今回の目的の物は大いにありそうだ。」
「うむ。ラリイ。今回は私も一緒に行こう。」

イルルヤンカシュは、ラリイと同行すると、はっきり言った。
ラリイは、こんなにも心強い存在はいないと、喜ぶ。
シルヴィルも、もしかしたら、父と母が再会するかもしれないと、
心の中では大喜びしていた。
イルルヤンカシュは、身体の大きさで、目立たないようにする為、
人の姿になる。

「もう、この姿にはなることはないと、一生、思っていたがな・・・」

イルルヤンカシュは、苦笑いをしながら、シルヴィルと並んだ。
ラリイは、2人が並んだ姿を見て、ますます思った。
イルルヤンカシュとシルヴィルは親子で間違いないと。
イルルヤンカシュの人の姿は、シルヴィルと通じるものが多かった。
髪の毛の色も瞳の色も。優し気な表情さえもだ。
シルヴィルは、どうやら、父親のイルルヤンカシュの人の姿に、
似たらしい。
ラリイは思う。シルヴィルに好意が出て来たのは、
やっぱり親友イルルヤンカシュの娘だからかもしれないと。

「さて、行くか?ラリイ、シルヴィル。」
「はい。」
「はい!」

イルルヤンカシュの言葉に、ラリイとシルヴィルは声を合わせて答える。
その微笑ましい光景に、イルルヤンカシュも心の中で笑う。
この件が片付いたら、ラリイに娘を託してみるか?と、
こっそり考えるイルルヤンカシュであった。
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