第10章「それでも愛する息子達」
「私がカレンヌとの結婚を認めたのは、宰相のウェウリが、
何を企んでいるか知りたかったからだ。
今夜、お前とこうして話すことが出来て確信した。
あいつは、カレンヌを使って、まずは私達の仲を壊そうとしたのだろう。」
「そんな・・・あの宰相のウェウリがですか?!」
ソルアの言葉に、ソシエドは、信じられないと言う顔をした。
その様子からだと、ソシエドは、かなりその宰相のウェウリの事を
信頼していたようだ。
「信じたくないだろうが、事実だ。今の我が国の王族の結婚を強引に
取り決められる存在など、あのウェウリしかいない。
私が王位を継ぐと確定してから、嫌な噂を聞くようになったから、
心配していたが、お前を信頼させ、唆し、お前を操って、
私から王位を奪おうとでも考えただろうな。」
「ウェウリめ・・・俺を使って、兄さんに・・・」
ソルアの言葉を聞いた、ソシエドは悔しそうにした。
自分がいい様に宰相に利用されたのだと兄から知って。
「兄さん・・・本当にごめんなさい。俺が未熟なばっかりに、
あんな男に、俺は利用されて、国の平和を乱そうとしていた・・・
俺は、兄さんからのどんな処罰も受けるよ。」
「ソシエド。お前は、小さい頃から、先走るところがあるな・・・」
ソルアは、笑顔になって弟を見ていた。ソルアは弟を憎んでなどいない。
それはラリイ達もはっきりとわかった。
「お前の悪いとこだぞ?カレンヌことだって、私にすぐに相談すればいいものを。」
「だって・・・この歳になっても、兄さんに、我が儘言う訳にもいかないと思って・・・」
「だからって、それで、私達が仲違いさせられて、この有様では、今は亡き、
父に何て言うんだ?
女1人の為に国を亡ぼすことになりかけたと、お前は父の墓の前で言えるか?
私は嫌だぞ?その為にお前を殺すことになったなどと言うのは。
母にだって、何て言えばいいんだ。」
「うぅ・・・兄さん・・・ごめん・・・ごめんよ・・・」
ソシエドは兄の言葉を聞いて、大泣きし出した。
王子達は、これで和解したのだと、ラリイでも分かった。
ヒヤデス達も顔を見合わせて頷いている。
「では、ソルア様。ソシエド様に対してはどうされますか?」
「何もしない。弟は、ただ私からカレンヌを取り戻したかっただけだ。
それに弟をここまで追い込んだのは、宰相のウェウリだろう。
この件は、弟の命で償わなければならぬほどの罪ではないと、私は思っている。」
ヒヤデスの質問に、ソルアは何の迷いもなく、こう答えた。
ソシエドは泣き顔になりながらも、そんな兄を見ている。
「ソシエド。お前の身柄は、私の方で確保するぞ?
お前はしばらく、ウェウリには会うな。この件が片付き次第、
私はお前に、それなりの処罰を下す。いいな?」
「はい。俺は、兄さんのどんな命にでも従います。」
ソシエドは、ソルアに深々と頭を下げ、自分の非を全面的に認めて、兄に降参した。
王子達の問題は、これであっさりと解決出来たようだ。
「さて、ここからが一番の問題ですね。ソルア様。」
「そうだな。ヒヤデス。今日で弟と話し合いで、表面上の問題は片付いたが、
裏で一番動いている黒幕は、のうのうとしてるからな。」
ソルアは、次の問題をヒヤデスと話し、顔を歪めている。
「ウェウリ。あいつは、かなり優秀だ。私達の父の代から、
その才能を高く買われていた。なのに表面は謙虚で、思慮深く、
その性格に多くの者が騙され、慕っている。
私の弟さえ、ウェウリに騙されてしまっていたくらいだからな。」
「すいません・・・兄さん・・・」
ソルアは、ヒヤデスに自分の国の宰相の話をし出す。
それを聞いて、ソシエドは、済まなさそうに兄に再び謝る。
「人望のある宰相と言うのが厄介ですね。本当に。」
「そうだな。私も、それで困っている。私がいくら王と言えど、
今はまだ未熟な王でしかない。
国を安定させるには、まだウェウリの力が必要なのは、真実だ。
裏で、王位を狙っているとわかっていてもな。」
「ですが、それでもウェウリがやったって言う証拠は何も出ないんですよね?毎回。」
「ああ。ウェウリは相当に用心深い。今回の様な陰謀は、度々、
大なり小なりで起こしはするが、それでも、ウェウリに直接繋がる証拠は出ない。
その為に何度も煮え湯だとわかっていても飲まされて来た。
今回の事も、失敗しても、結局は一部の騎士団達の所為にするだろうな。」
「うーん・・・そいつは本当に厄介な存在ですねぇ・・・」
ソルアとヒヤデスの会話を聞き、アルクトゥルスも最後に口を挟む。
こんな事件が起きたとしても、それを裏で起こしているのが、
宰相だと知る者は限りなく少ない。
表向きは、まだ王が未熟だから、下の者達が内部分裂しているだけだと、
多くの者が思わされているのだろう。
そして、そんな王を懸命に支えているのは、人望があり、慕われてる、
宰相のウェウリであると言う事になっている。
あんなに王を支えているのだから、宰相が実は裏では、王位を狙っているなど、
流石に誰も思うまい。
ソルアは、かなりの強敵を相手に、裏では、王位を守る為に、
激しく攻防を繰り返していたのだ。
ラリイは、まだ若いであろう、ソルアに、凄く感心した。
自分なら、こんな風に出来ないだろうなと心の中で思う。
「宰相ウェウリを、どうにかしないことには、今後も、
この問題は解決しそうにありませんね。
またいつ、別の魔族と手を組むかもわかりませんし・・・」
「だよなぁ・・・」
ヒヤデスとアルクトゥルスは、そうソルアに言う。
ソルアも両者を見て、頷く。
「聖星団の方々が、そう言われるのは、最もだ。
だからこそ、恥を忍んで、再度お願い申し上げたい。
私の国の平穏を取り戻す為にお力を貸して頂きたい。」
ソルアは、王らしい威厳を見せながら、ヒヤデス達に願い出た。
ヒヤデス達も、すぐに承知したと返事をする。
「私達で役に立つのであれば、いくらでもお力添えします。」
「その為の聖星団でもありますからね!俺達は!」
「有難う。ヒヤデス、アルクトゥルス。」
3人の合意を見て、ソシエドも、兄の側に寄り、兄の手を取りながら言う。
「兄さん!俺にも、何か出来ることがあるなら、言ってくれ!
こんなことで、兄さんを裏切った俺が許されるとは思ってない。
けど!俺はもう兄さんを絶対に裏切ったりしない!だから!
どんな危険な事でも俺はするよ!」
「ソシエド・・・全く、お前と言う弟は・・・」
ソルアは嬉しそうに弟の手を握り返す。弟と戦わなくて済んだことを、
一番喜んでいるのは、ソルアだろうな、とラリイは感じた。
ラリイは兄弟は、いいものなんだなぁとこの時に思った。
今までの王族争いでは、醜い兄弟しか見てこなかったから。
「では、私達も反撃する番ですかねぇ・・・」
「反撃って・・・ヒヤデス、何をするつもりなんだ?」
「決まってるでしょ?宰相のウェウリが、今回の件に関わっていると言う証拠を
探し出すんですよ。宰相は今回は魔族を使おうとしていたんですよ?
いくら、一部の騎士団を手駒にして、魔族と交渉させたとは言え、
ただの騎士達の戯言に耳を傾ける魔族なんていないでしょ?」
「うーん・・・そうだよな・・・?」
「なら、宰相クラスほどの人間が、魔族を信用させようと何かしたかもしれないじゃないですか。
例えば、協力してくれた代わりに、そのお礼は・・・みたいな
密書を交わしたとかね?」
「おお!そういうことか!」
ヒヤデスの最後の言葉で、アルクトゥルスは、やっと納得した顔をした。
それを見た、ヒヤデスは、やれやれと言った顔になる。
ラリイも、ヒヤデスの話を聞き、自分なりに考えてみた。
確かに、魔族を信頼させるには、それなりのモノを提示しなければ、協力などしまい。
鬼人族は、魔族の中でも、知能は高いから、物品よりも、
そうした密書を交わした可能性の方が高そうだった。
ラリイは、ヒヤデス達に、そろそろ魔族側の話を聞かせるべきだと思い、
話をすることにした。
何を企んでいるか知りたかったからだ。
今夜、お前とこうして話すことが出来て確信した。
あいつは、カレンヌを使って、まずは私達の仲を壊そうとしたのだろう。」
「そんな・・・あの宰相のウェウリがですか?!」
ソルアの言葉に、ソシエドは、信じられないと言う顔をした。
その様子からだと、ソシエドは、かなりその宰相のウェウリの事を
信頼していたようだ。
「信じたくないだろうが、事実だ。今の我が国の王族の結婚を強引に
取り決められる存在など、あのウェウリしかいない。
私が王位を継ぐと確定してから、嫌な噂を聞くようになったから、
心配していたが、お前を信頼させ、唆し、お前を操って、
私から王位を奪おうとでも考えただろうな。」
「ウェウリめ・・・俺を使って、兄さんに・・・」
ソルアの言葉を聞いた、ソシエドは悔しそうにした。
自分がいい様に宰相に利用されたのだと兄から知って。
「兄さん・・・本当にごめんなさい。俺が未熟なばっかりに、
あんな男に、俺は利用されて、国の平和を乱そうとしていた・・・
俺は、兄さんからのどんな処罰も受けるよ。」
「ソシエド。お前は、小さい頃から、先走るところがあるな・・・」
ソルアは、笑顔になって弟を見ていた。ソルアは弟を憎んでなどいない。
それはラリイ達もはっきりとわかった。
「お前の悪いとこだぞ?カレンヌことだって、私にすぐに相談すればいいものを。」
「だって・・・この歳になっても、兄さんに、我が儘言う訳にもいかないと思って・・・」
「だからって、それで、私達が仲違いさせられて、この有様では、今は亡き、
父に何て言うんだ?
女1人の為に国を亡ぼすことになりかけたと、お前は父の墓の前で言えるか?
私は嫌だぞ?その為にお前を殺すことになったなどと言うのは。
母にだって、何て言えばいいんだ。」
「うぅ・・・兄さん・・・ごめん・・・ごめんよ・・・」
ソシエドは兄の言葉を聞いて、大泣きし出した。
王子達は、これで和解したのだと、ラリイでも分かった。
ヒヤデス達も顔を見合わせて頷いている。
「では、ソルア様。ソシエド様に対してはどうされますか?」
「何もしない。弟は、ただ私からカレンヌを取り戻したかっただけだ。
それに弟をここまで追い込んだのは、宰相のウェウリだろう。
この件は、弟の命で償わなければならぬほどの罪ではないと、私は思っている。」
ヒヤデスの質問に、ソルアは何の迷いもなく、こう答えた。
ソシエドは泣き顔になりながらも、そんな兄を見ている。
「ソシエド。お前の身柄は、私の方で確保するぞ?
お前はしばらく、ウェウリには会うな。この件が片付き次第、
私はお前に、それなりの処罰を下す。いいな?」
「はい。俺は、兄さんのどんな命にでも従います。」
ソシエドは、ソルアに深々と頭を下げ、自分の非を全面的に認めて、兄に降参した。
王子達の問題は、これであっさりと解決出来たようだ。
「さて、ここからが一番の問題ですね。ソルア様。」
「そうだな。ヒヤデス。今日で弟と話し合いで、表面上の問題は片付いたが、
裏で一番動いている黒幕は、のうのうとしてるからな。」
ソルアは、次の問題をヒヤデスと話し、顔を歪めている。
「ウェウリ。あいつは、かなり優秀だ。私達の父の代から、
その才能を高く買われていた。なのに表面は謙虚で、思慮深く、
その性格に多くの者が騙され、慕っている。
私の弟さえ、ウェウリに騙されてしまっていたくらいだからな。」
「すいません・・・兄さん・・・」
ソルアは、ヒヤデスに自分の国の宰相の話をし出す。
それを聞いて、ソシエドは、済まなさそうに兄に再び謝る。
「人望のある宰相と言うのが厄介ですね。本当に。」
「そうだな。私も、それで困っている。私がいくら王と言えど、
今はまだ未熟な王でしかない。
国を安定させるには、まだウェウリの力が必要なのは、真実だ。
裏で、王位を狙っているとわかっていてもな。」
「ですが、それでもウェウリがやったって言う証拠は何も出ないんですよね?毎回。」
「ああ。ウェウリは相当に用心深い。今回の様な陰謀は、度々、
大なり小なりで起こしはするが、それでも、ウェウリに直接繋がる証拠は出ない。
その為に何度も煮え湯だとわかっていても飲まされて来た。
今回の事も、失敗しても、結局は一部の騎士団達の所為にするだろうな。」
「うーん・・・そいつは本当に厄介な存在ですねぇ・・・」
ソルアとヒヤデスの会話を聞き、アルクトゥルスも最後に口を挟む。
こんな事件が起きたとしても、それを裏で起こしているのが、
宰相だと知る者は限りなく少ない。
表向きは、まだ王が未熟だから、下の者達が内部分裂しているだけだと、
多くの者が思わされているのだろう。
そして、そんな王を懸命に支えているのは、人望があり、慕われてる、
宰相のウェウリであると言う事になっている。
あんなに王を支えているのだから、宰相が実は裏では、王位を狙っているなど、
流石に誰も思うまい。
ソルアは、かなりの強敵を相手に、裏では、王位を守る為に、
激しく攻防を繰り返していたのだ。
ラリイは、まだ若いであろう、ソルアに、凄く感心した。
自分なら、こんな風に出来ないだろうなと心の中で思う。
「宰相ウェウリを、どうにかしないことには、今後も、
この問題は解決しそうにありませんね。
またいつ、別の魔族と手を組むかもわかりませんし・・・」
「だよなぁ・・・」
ヒヤデスとアルクトゥルスは、そうソルアに言う。
ソルアも両者を見て、頷く。
「聖星団の方々が、そう言われるのは、最もだ。
だからこそ、恥を忍んで、再度お願い申し上げたい。
私の国の平穏を取り戻す為にお力を貸して頂きたい。」
ソルアは、王らしい威厳を見せながら、ヒヤデス達に願い出た。
ヒヤデス達も、すぐに承知したと返事をする。
「私達で役に立つのであれば、いくらでもお力添えします。」
「その為の聖星団でもありますからね!俺達は!」
「有難う。ヒヤデス、アルクトゥルス。」
3人の合意を見て、ソシエドも、兄の側に寄り、兄の手を取りながら言う。
「兄さん!俺にも、何か出来ることがあるなら、言ってくれ!
こんなことで、兄さんを裏切った俺が許されるとは思ってない。
けど!俺はもう兄さんを絶対に裏切ったりしない!だから!
どんな危険な事でも俺はするよ!」
「ソシエド・・・全く、お前と言う弟は・・・」
ソルアは嬉しそうに弟の手を握り返す。弟と戦わなくて済んだことを、
一番喜んでいるのは、ソルアだろうな、とラリイは感じた。
ラリイは兄弟は、いいものなんだなぁとこの時に思った。
今までの王族争いでは、醜い兄弟しか見てこなかったから。
「では、私達も反撃する番ですかねぇ・・・」
「反撃って・・・ヒヤデス、何をするつもりなんだ?」
「決まってるでしょ?宰相のウェウリが、今回の件に関わっていると言う証拠を
探し出すんですよ。宰相は今回は魔族を使おうとしていたんですよ?
いくら、一部の騎士団を手駒にして、魔族と交渉させたとは言え、
ただの騎士達の戯言に耳を傾ける魔族なんていないでしょ?」
「うーん・・・そうだよな・・・?」
「なら、宰相クラスほどの人間が、魔族を信用させようと何かしたかもしれないじゃないですか。
例えば、協力してくれた代わりに、そのお礼は・・・みたいな
密書を交わしたとかね?」
「おお!そういうことか!」
ヒヤデスの最後の言葉で、アルクトゥルスは、やっと納得した顔をした。
それを見た、ヒヤデスは、やれやれと言った顔になる。
ラリイも、ヒヤデスの話を聞き、自分なりに考えてみた。
確かに、魔族を信頼させるには、それなりのモノを提示しなければ、協力などしまい。
鬼人族は、魔族の中でも、知能は高いから、物品よりも、
そうした密書を交わした可能性の方が高そうだった。
ラリイは、ヒヤデス達に、そろそろ魔族側の話を聞かせるべきだと思い、
話をすることにした。