第10章「それでも愛する息子達」
ラリイ達は、ミディアとの会話を終え、イルディアをミディアに託し、
イルルヤンカシュの元に帰って来た。
ラリイは、イルルヤンカシュに、ミディアに会った事を話し、
シルヴィルは、過去にラリイに助け出された事も話をした。
「そうか・・・あいつに会ったか・・・
それにしても、まさか、ラリイが俺の娘を過去に助けていたとはな。何たる巡り合わせだ。」
「私もびっくりしたよ、イルル。」
ラリイはイルルヤンカシュの顔を見て、静かに笑った。
シルヴィルの方は、相変わらず、ラリイに対しては顔を赤くしている。
イルルヤンカシュは、それを見て、自分の娘は、確実にラリイに恋をしていると確信した。
ラリイに助けて貰った時から、気になる存在だったのだろうとまで、わかってしまった。
「ところで、結局はどうするんだ?イルル?イルディアには、
一応は釘は差せたかもしれないが、でも計画は諦めないんじゃないか?」
「そうだな。シルヴィルが連れて来てはくれたが・・・
あの調子では、俺の言葉は聞くまい・・・」
「ですよね・・・」
ラリイ達は話をしながら、それぞれが暗い顔になる。
ラリイは逆にイルディアが心配になった。父である、イルルヤンカシュに会って、
戦ったことが、かえって良くない方向に向かわないかと。
イルディアは、ますます父に抗おうと躍起になり、
人間達の計画に乗ってしまうのではないかとさえ思った。
しかし、イルルヤンカシュは、息子に対しては冷静であった。
「今日、息子と戦って分かったが、今のあの実力では、人間と手を組んだとしても、
それほどの大きい侵略を人間界で起こせまいよ。
ならば、人間達の方の問題をさっさと片付けた方が、この件は、
早く解決出来そうだぞ。ラリイ?」
「そうか・・・なら、その事を、聖星団の方に話すよ。」
「息子の事に関しては、俺が必ず止めると伝えておいてくれ。」「わかった。」
ラリイは、イルルヤンカシュと話を決めて、ヒヤデス達の元に
行き、権力争いしてる人間達をどうにかしようと決意する。
あれから、ヒヤデス達の方でも何かしら進展があるはずだ。
ラリイは、ヒヤデス達と連絡を取り合い、ディスザード国の方に
移動することにした。
その際、シルヴィルは、イルルヤンカシュの元に居ることになった。
「ラリイ・・・気を付けてね。」
「ああ、シルヴィルも無理はするな。」
「うん・・・」
ラリイとシルヴィルは、いい感じの雰囲気で一旦別れた。
ラリイは、何となく心の中で思った。
(この件が片付いたら、シルヴィルをフェニ会わせてもいいかもしれない。
あのイルルの娘だから、会わせたら、きっとフェニも喜びそうな気がする。)
ラリイはそう思うと、何故だか自分が楽しくなっていることに気付く。
まさか・・・とラリイは一瞬思ったが、それ以上は深く考えるのを止める。
「この問題は解決するまでは、浮かれるわけにもいかないからな。」
ラリイは自分の気持ちを引き締めて、ヒヤデス達の元に急いだ。
「ラリイ様。お待ちしておりました。実は、ラリイ様にも
立ち会って欲しい対談でしたので、この屋敷に来て頂きました。」
ラリイはヒヤデス達と合流してから、すぐにある屋敷に案内された。
ディスザード国内のある森にある、小さめの洋館で、人目を忍んで、
誰かと会うのには最適そうな場所であった。
「私に立ち会って欲しいとは、どんな対談なんだ?」
ラリイは、素直にヒヤデスに聞くと、ヒヤデスは、少し言いづらそうな雰囲気はあったが、
それでもはっきりとラリイに向かって答えた。
「ディスザード国の第1王子と第2王子だけをこの屋敷にお招きしました。」
「?!」
ヒヤデスの答えに、ラリイは声は出さないが、目を見開く。
問題の当事者同士をここに呼ぶとは、ヒヤデスも凄い事をするものだと、ラリイは感心した。
「当人同士で話し合った方が早いと思いましてね。2人の王子は、
過去から仲が悪かったわけじゃないみたいですし、
きっと何かの行き違いでこうなってしまったのだと思うんですよ。
「王子同士」はですがね・・・」
アルクトゥルスは、少し意味深な言い方でラリイに言った。
ラリイは、少しだけ考えた。きっとヒヤデスはあれから、
更に詳しくディスザード国の内情を調べることが出来たのだろう。
そして、まず王子達同士で話し合いをさせることが、この事件で、
かなり有意義な事になると確信したに違いない。
ならば、ラリイは、ヒヤデスの言われた通りに立会人として、
付き合えばいい。
「わかった。私もその対談に付き合おう。必要な話がある時は、
私からも話す。」
「有難うございます。ラリイ様。では、王子達の待つ部屋に、
私達も向かいましょう。」
ヒヤデスは、ラリイを丁寧にある部屋に誘導する。
誘導された部屋は、少し広い部屋で、若干薄暗い感じがあった。
部屋の中心にはテーブルがあり、2人の若い男達が向かい合って座っている。
お互いの姿を静かに、無言で見つめ合い、黙っていた。
2人の王子は、髪の毛の色など違いはあるが、顔立ちは、兄弟らしく似ていた。
兄である、ソルアは聡明そうな穏やかな顔をした青年で、弟であるソシエドは、
どこか憎めない、活発そうな顔をした青年だった。
「お二人ともお待たせしてすいませんでした。
これから、話し合いを開始したいと思いますが、いいですね?」
「はい。」
「ああ、いいとも。」
ヒヤデスは、向かい合う、2人の王子のテーブルの真ん中あたりの位置に立って、
2人の王子の話し合いの進行役をしようとしていた。
王子達は、ヒヤデスに短く、話し合いの開始の合図の返事をする。
「では、今回の件なのですが、単刀直入に聞きますが、
何故ソシエド様は、ソルア様に反旗を翻されたのでしょうか?
ご自分で、王になりたいと、本当に思われたのですか?」
「それは・・・」
「どうなんだい?ソシエド?ちゃんと話してくれ。」
「兄さん・・・」
ヒヤデスの質問にソシエドは顔を歪め、苦い顔になる。
だが、ソルアは、別にソシエドを責めることもなく、率直に答えを知りたがっている。
こんな状態であっても、2人の王子が互いを激しく憎んでいるような感じを、
ラリイは感じられなかった。
「ソシエド。私は、お前の口から、ちゃんとした理由が聞きたい。
子供の頃から、お前は王は私で良いと言ってくれていただろう?
なのに、何で今更になって、それが駄目なんだ?」
「兄さん・・・ごめん。俺は、王位が欲しかったわけじゃないんだ。」
「ん?どういうことだ?」
「兄さんと、今度、結婚することになった彼女・・・
カレンヌとの結婚が俺は許せなかっただけなんだ・・・」
「お前・・・カレンヌの事が好きだったのか?」
ソシエドの告白に、ソルアは唖然とした顔をする。
それを聞き、やっぱりそうだったかと言わんばかりに、
ヒヤデスもアルクトゥルスもそんな顔をする。
つまり、弟が兄に反旗を翻したのは、女の為だったのだ。
「兄さん。今まで隠しててごめん。俺はカレンヌと付き合っていたんだ。
カレンヌも俺の事は愛してくれていた。でも、兄さんとの結婚が決まって、
カレンヌの親は無理矢理に結婚話を決めてしまって。」
「なるほどな・・・そんな事情があったんだな・・・納得したよ。」
「え?」
「何となくな、私は気づいていたよ。お前がカレンヌの事を愛していたと。
だから、私も最初は断ったんだ。けど、周りの・・・特に宰相のウェウリが、
やたらとしつこく、この結婚を勧めてくるから怪しいと思った。
そしたら、結婚が決まってすぐに、私が信頼している家臣達が、
お前が裏切った、王位を狙っているなどと騒ぎ出したかと思えば・・・」
「兄さん・・・俺は・・・」
「ソシエド。私は彼女とは結婚する気はなかった。お前には、
もっと早くにちゃんと話してやれば良かったな。」
ソルアは、穏やかな表情のままで、自分の弟のソシエドに話を続けた。
ラリイ達も、今は黙ったままで、ソルアの話を聞くことにした。
イルルヤンカシュの元に帰って来た。
ラリイは、イルルヤンカシュに、ミディアに会った事を話し、
シルヴィルは、過去にラリイに助け出された事も話をした。
「そうか・・・あいつに会ったか・・・
それにしても、まさか、ラリイが俺の娘を過去に助けていたとはな。何たる巡り合わせだ。」
「私もびっくりしたよ、イルル。」
ラリイはイルルヤンカシュの顔を見て、静かに笑った。
シルヴィルの方は、相変わらず、ラリイに対しては顔を赤くしている。
イルルヤンカシュは、それを見て、自分の娘は、確実にラリイに恋をしていると確信した。
ラリイに助けて貰った時から、気になる存在だったのだろうとまで、わかってしまった。
「ところで、結局はどうするんだ?イルル?イルディアには、
一応は釘は差せたかもしれないが、でも計画は諦めないんじゃないか?」
「そうだな。シルヴィルが連れて来てはくれたが・・・
あの調子では、俺の言葉は聞くまい・・・」
「ですよね・・・」
ラリイ達は話をしながら、それぞれが暗い顔になる。
ラリイは逆にイルディアが心配になった。父である、イルルヤンカシュに会って、
戦ったことが、かえって良くない方向に向かわないかと。
イルディアは、ますます父に抗おうと躍起になり、
人間達の計画に乗ってしまうのではないかとさえ思った。
しかし、イルルヤンカシュは、息子に対しては冷静であった。
「今日、息子と戦って分かったが、今のあの実力では、人間と手を組んだとしても、
それほどの大きい侵略を人間界で起こせまいよ。
ならば、人間達の方の問題をさっさと片付けた方が、この件は、
早く解決出来そうだぞ。ラリイ?」
「そうか・・・なら、その事を、聖星団の方に話すよ。」
「息子の事に関しては、俺が必ず止めると伝えておいてくれ。」「わかった。」
ラリイは、イルルヤンカシュと話を決めて、ヒヤデス達の元に
行き、権力争いしてる人間達をどうにかしようと決意する。
あれから、ヒヤデス達の方でも何かしら進展があるはずだ。
ラリイは、ヒヤデス達と連絡を取り合い、ディスザード国の方に
移動することにした。
その際、シルヴィルは、イルルヤンカシュの元に居ることになった。
「ラリイ・・・気を付けてね。」
「ああ、シルヴィルも無理はするな。」
「うん・・・」
ラリイとシルヴィルは、いい感じの雰囲気で一旦別れた。
ラリイは、何となく心の中で思った。
(この件が片付いたら、シルヴィルをフェニ会わせてもいいかもしれない。
あのイルルの娘だから、会わせたら、きっとフェニも喜びそうな気がする。)
ラリイはそう思うと、何故だか自分が楽しくなっていることに気付く。
まさか・・・とラリイは一瞬思ったが、それ以上は深く考えるのを止める。
「この問題は解決するまでは、浮かれるわけにもいかないからな。」
ラリイは自分の気持ちを引き締めて、ヒヤデス達の元に急いだ。
「ラリイ様。お待ちしておりました。実は、ラリイ様にも
立ち会って欲しい対談でしたので、この屋敷に来て頂きました。」
ラリイはヒヤデス達と合流してから、すぐにある屋敷に案内された。
ディスザード国内のある森にある、小さめの洋館で、人目を忍んで、
誰かと会うのには最適そうな場所であった。
「私に立ち会って欲しいとは、どんな対談なんだ?」
ラリイは、素直にヒヤデスに聞くと、ヒヤデスは、少し言いづらそうな雰囲気はあったが、
それでもはっきりとラリイに向かって答えた。
「ディスザード国の第1王子と第2王子だけをこの屋敷にお招きしました。」
「?!」
ヒヤデスの答えに、ラリイは声は出さないが、目を見開く。
問題の当事者同士をここに呼ぶとは、ヒヤデスも凄い事をするものだと、ラリイは感心した。
「当人同士で話し合った方が早いと思いましてね。2人の王子は、
過去から仲が悪かったわけじゃないみたいですし、
きっと何かの行き違いでこうなってしまったのだと思うんですよ。
「王子同士」はですがね・・・」
アルクトゥルスは、少し意味深な言い方でラリイに言った。
ラリイは、少しだけ考えた。きっとヒヤデスはあれから、
更に詳しくディスザード国の内情を調べることが出来たのだろう。
そして、まず王子達同士で話し合いをさせることが、この事件で、
かなり有意義な事になると確信したに違いない。
ならば、ラリイは、ヒヤデスの言われた通りに立会人として、
付き合えばいい。
「わかった。私もその対談に付き合おう。必要な話がある時は、
私からも話す。」
「有難うございます。ラリイ様。では、王子達の待つ部屋に、
私達も向かいましょう。」
ヒヤデスは、ラリイを丁寧にある部屋に誘導する。
誘導された部屋は、少し広い部屋で、若干薄暗い感じがあった。
部屋の中心にはテーブルがあり、2人の若い男達が向かい合って座っている。
お互いの姿を静かに、無言で見つめ合い、黙っていた。
2人の王子は、髪の毛の色など違いはあるが、顔立ちは、兄弟らしく似ていた。
兄である、ソルアは聡明そうな穏やかな顔をした青年で、弟であるソシエドは、
どこか憎めない、活発そうな顔をした青年だった。
「お二人ともお待たせしてすいませんでした。
これから、話し合いを開始したいと思いますが、いいですね?」
「はい。」
「ああ、いいとも。」
ヒヤデスは、向かい合う、2人の王子のテーブルの真ん中あたりの位置に立って、
2人の王子の話し合いの進行役をしようとしていた。
王子達は、ヒヤデスに短く、話し合いの開始の合図の返事をする。
「では、今回の件なのですが、単刀直入に聞きますが、
何故ソシエド様は、ソルア様に反旗を翻されたのでしょうか?
ご自分で、王になりたいと、本当に思われたのですか?」
「それは・・・」
「どうなんだい?ソシエド?ちゃんと話してくれ。」
「兄さん・・・」
ヒヤデスの質問にソシエドは顔を歪め、苦い顔になる。
だが、ソルアは、別にソシエドを責めることもなく、率直に答えを知りたがっている。
こんな状態であっても、2人の王子が互いを激しく憎んでいるような感じを、
ラリイは感じられなかった。
「ソシエド。私は、お前の口から、ちゃんとした理由が聞きたい。
子供の頃から、お前は王は私で良いと言ってくれていただろう?
なのに、何で今更になって、それが駄目なんだ?」
「兄さん・・・ごめん。俺は、王位が欲しかったわけじゃないんだ。」
「ん?どういうことだ?」
「兄さんと、今度、結婚することになった彼女・・・
カレンヌとの結婚が俺は許せなかっただけなんだ・・・」
「お前・・・カレンヌの事が好きだったのか?」
ソシエドの告白に、ソルアは唖然とした顔をする。
それを聞き、やっぱりそうだったかと言わんばかりに、
ヒヤデスもアルクトゥルスもそんな顔をする。
つまり、弟が兄に反旗を翻したのは、女の為だったのだ。
「兄さん。今まで隠しててごめん。俺はカレンヌと付き合っていたんだ。
カレンヌも俺の事は愛してくれていた。でも、兄さんとの結婚が決まって、
カレンヌの親は無理矢理に結婚話を決めてしまって。」
「なるほどな・・・そんな事情があったんだな・・・納得したよ。」
「え?」
「何となくな、私は気づいていたよ。お前がカレンヌの事を愛していたと。
だから、私も最初は断ったんだ。けど、周りの・・・特に宰相のウェウリが、
やたらとしつこく、この結婚を勧めてくるから怪しいと思った。
そしたら、結婚が決まってすぐに、私が信頼している家臣達が、
お前が裏切った、王位を狙っているなどと騒ぎ出したかと思えば・・・」
「兄さん・・・俺は・・・」
「ソシエド。私は彼女とは結婚する気はなかった。お前には、
もっと早くにちゃんと話してやれば良かったな。」
ソルアは、穏やかな表情のままで、自分の弟のソシエドに話を続けた。
ラリイ達も、今は黙ったままで、ソルアの話を聞くことにした。