第10章「それでも愛する息子達」
「イルディア・・・」
「・・・・・」
物事は急展開を迎えていた。ラリイが、幻獣界に帰り、フェニックスに事情を話し、
再び、イルルヤンカシュの元に戻ってきて、数時間後に、
まさかのシルヴィルが、自分の兄である、イルディアを、
イルルヤンカシュの元に連れて来たのだ。
これには、ラリイもイルルヤンカシュでさえも、驚く。
今、イルルヤンカシュは、久しぶりの成長した息子と静かに対峙していた。
「凄い・・・行動力があったんだな・・・シルヴィルは。」
「私も、自分の出来る限ることで、どうにかしたかったんです。」
ラリイは、自分の横にいるシルヴィルに小さい声で会話をしていた。
シルヴィルは、おどおどしながらも、ラリイに返事をする。
どうやら、兄のイルディアに、強力な助っ人が出来るかもしれないから、
会って欲しいと嘘をつき、ここまで連れて来たらしい。
これには、ラリイも、シルヴィルの考えには感心していた。
「シルヴィル・・・お前には、昔から何度も言ってるはずだぞ?
俺達には父はいないと。いるとするなら、叔父である、ダグールだけだからなと。
なのに、どうして、あんな嘘をついてまで、今日に俺達の祖父の仇でもある、
こんな幻獣に会わせた?」
イルルヤンカシュの息子である、イルディアは憎しみを全く隠さずに、
自分の父でもあるはずの、イルルヤンカシュを冷たく睨みつけていた。
その目には、親子の情など、微塵もなかった。
相当、イルルヤンカシュを憎んで、生きてきたことを想像させる。
「だって!兄さんは、そうでもしなきゃ、私の話を聞いてもくれないじゃない!
あんな人間達に騙されて、一族の復興をしようだなんて、そんなの間違ってるわ!」
シルヴィルが兄に向って叫ぶと、イルディアは、妹に顔を向けて、深い溜息をつく。
「シルヴィル。人間達に騙されているは、百も承知だ。
今は、いい様に俺達は利用されようとしているのもな。」
「なら・・・何で、そこまで協力しようとするの?」
「お前には、まだわからないよ。世の中を知らない子供のお前にはな。」
イルディアは、可哀想な子供でも見るような目つきで、自分の妹を見る。
世間知らずだからこそしてしまった妹の失態を、ただただ哀れんでいた。
「世間知らずなのは、お前も同じだぞ。イルディア。」
「なんだと?」
「お前は、人間の事をわかったつもりでいるようだが、人間は単純な生き物ではない。
時に、魔族なんかよりも、恐ろしい考えをするような存在だ。
お前は、勝手に人間を理解出来ていると、高を括っているだけの
惨めな存在なのが、わからないのか?」
「この幻獣め・・・好き勝手なことを・・・」
イルディアは、怒りを更に露わにして、イルルヤンカシュと、
戦闘態勢に入る。
一触即発な状態になり、シルヴィルは、顔を青ざめるが、
ラリイとイルルヤンカシュは平然としていた。
「お前が、我が一族を裏切った後、どれだけ、母さんが・・・
一族が苦しんだなんて、知りもしないだろうな・・・
今頃になって、知って欲しいとも思いもしないが。
どうせ、後悔したんだろう?幻獣のプライドで、魔族の女なんかと結婚してしまったことを。
それとも、ドラゴン族としてか?そんなくだらないことでな。」
「・・・・・」
イルルヤンカシュは、目を閉じ、自分の息子の言葉を、ただ黙って聞いていた。
きっと、こういうことを言われると、イルルヤンカシュも覚悟はしていたようだ。
息子の言葉に、イルルヤンカシュは気を乱したりはしていない。
だが、そこへ、シルヴィルは兄に向かい叫ぶ。
「兄さん!それは、あんまりよ!私達一族だって、酷いをしたじゃない!
イルルヤンカシュ様だけが、悪いわけじゃないはずよ!!!」
「イルルヤンカシュ様・・・ね。ああ、そうかもしれないな。
けど、そのイルルヤンカシュ様は、結局は、母さんとの結婚を
後悔してることに変わりはないだろ?
現に、もう一人の子である、娘のお前の存在を認めずに、
様付けで呼ばせてるのがいい証拠さ。」
「そ、それは・・・しょうがないよ・・・だって、私は・・・
タイミングが悪く、イルルヤンカシュ様がいなくなってから、
生まれちゃったんだから・・・
いきなり、娘ですって言われても、困るだけだよ・・・。
でも、こう呼んでいるは私の意思だから。無理にさせられてるわけじゃないわ!」
「シルヴィル・・・」
ラリイは、辛くて、すぐにでも泣き出しそうになっている、
シルヴィルの側に寄り添った。
放って置くことが、今のラリイには出来なかったのだ。
例え、娘と認めて貰えなくても、それでもイルルヤンカシュの
味方でいようとする、シルヴィルを。
シルヴィルは、そんなラリイを見て、嫌がる事もなかった。
むしろ、少し嬉しそうな雰囲気さえあった。
「そうだな・・・俺は後悔している。」
「ほら、見ろ・・・」
「お前達を幸せにしてやれなかった。俺が不器用なばかりに、
お前達に苦労ばかりさせることになってしまった事にな。」
「な・・・」
イルルヤンカシュの言葉を聞き、イルディアは、何とも言えない顔になった。
こんな言葉を聞くことになろうとは、想像もしていなかったのだろう。
イルディアは、イルルヤンカシュを、更にきつく睨んだ。
「そんな事を言えば、俺がお前みたいな幻獣の言う事を、
大人しく聞くとでも、思っているのか?
だったら、俺を見下すのもいい加減にしろ!」
「俺は、お前をそんな風に思いはしない。恨まれていても仕方がないと思っている。」
「だったら、俺が、お前を殺したい程、憎んでいるのも知ってるよな?!!」
イルディアは、一気に戦闘モードに入り、イルルヤンカシュと急に戦闘をし始めた。
双方、物理攻撃や、魔法攻撃などで、戦いは激しくなっていく。
シルヴィルは、泣きながら「やめて!!」と叫ぶが、両者に、
その言葉が届くことは、もちろんない。
シルヴィルは、両者の間に入り、戦いを止めさせようとするが、
ラリイが、それはあまりにも危険なので、止める。
「駄目だ!シルヴィル!君では、イルルヤンカシュ達の戦いを、
止めるのは危険すぎる!」
「でも、ラリイ!そうでもしなければ、兄は、イルルヤンカシュ様は、殺し合いを!
お願い、両者を止めて!じゃないと・・・じゃないと・・・」
シルヴィルは、凄く取り乱し、恥ずかしさなど忘れ、ラリイにすがり、懇願する。
ラリイは、シルヴィルを優しく抱きしめ、落ち着かせようとした。
こんなことをしてあげたいと思った、存在など、ラリイは今まで1人もいなかった。
シルヴィルが初めてであったのだ。
「シルヴィル、聞いてくれ。」
「ラリイ・・・???」
シルヴィルはラリイに、急に抱きしめられ、恥ずかしさで、
顔を真っ赤にする。
予想もしていなかった出来事に、照れるしかない状態であった。
けど、ラリイは、恥ずかしがることもなく、シルヴィルを
抱きしめたままで会話を続ける。
「これは、父と子の、譲れないものを賭けた、親子の対決なんだ。
だから、心配するのはわかるけど、無理に止めたらいけない。」
「で、でも・・・もし、どちらかが・・・死んだら・・・」
「大丈夫。そうなりそうなら、事前に私が止めるし、
最悪、どちらかが、大怪我しても、回復してあげられる。」
「え?」
「私の親はフェニックスだから。回復は得意中の得意なんだ。」
ラリイは、シルヴィルを少しでも安心させてあげたくて、
自分の親の幻獣の名前を出して言った。
シルヴィルはそれを聞いて、目を丸くして、ラリイを見ていた。
その姿は、何とも愛くるしいと、ラリイはこっそり思ってしまっていた。
イルルヤンカシュとイルディアが大変な状態でもあるにも関わらず。
「・・・・・」
物事は急展開を迎えていた。ラリイが、幻獣界に帰り、フェニックスに事情を話し、
再び、イルルヤンカシュの元に戻ってきて、数時間後に、
まさかのシルヴィルが、自分の兄である、イルディアを、
イルルヤンカシュの元に連れて来たのだ。
これには、ラリイもイルルヤンカシュでさえも、驚く。
今、イルルヤンカシュは、久しぶりの成長した息子と静かに対峙していた。
「凄い・・・行動力があったんだな・・・シルヴィルは。」
「私も、自分の出来る限ることで、どうにかしたかったんです。」
ラリイは、自分の横にいるシルヴィルに小さい声で会話をしていた。
シルヴィルは、おどおどしながらも、ラリイに返事をする。
どうやら、兄のイルディアに、強力な助っ人が出来るかもしれないから、
会って欲しいと嘘をつき、ここまで連れて来たらしい。
これには、ラリイも、シルヴィルの考えには感心していた。
「シルヴィル・・・お前には、昔から何度も言ってるはずだぞ?
俺達には父はいないと。いるとするなら、叔父である、ダグールだけだからなと。
なのに、どうして、あんな嘘をついてまで、今日に俺達の祖父の仇でもある、
こんな幻獣に会わせた?」
イルルヤンカシュの息子である、イルディアは憎しみを全く隠さずに、
自分の父でもあるはずの、イルルヤンカシュを冷たく睨みつけていた。
その目には、親子の情など、微塵もなかった。
相当、イルルヤンカシュを憎んで、生きてきたことを想像させる。
「だって!兄さんは、そうでもしなきゃ、私の話を聞いてもくれないじゃない!
あんな人間達に騙されて、一族の復興をしようだなんて、そんなの間違ってるわ!」
シルヴィルが兄に向って叫ぶと、イルディアは、妹に顔を向けて、深い溜息をつく。
「シルヴィル。人間達に騙されているは、百も承知だ。
今は、いい様に俺達は利用されようとしているのもな。」
「なら・・・何で、そこまで協力しようとするの?」
「お前には、まだわからないよ。世の中を知らない子供のお前にはな。」
イルディアは、可哀想な子供でも見るような目つきで、自分の妹を見る。
世間知らずだからこそしてしまった妹の失態を、ただただ哀れんでいた。
「世間知らずなのは、お前も同じだぞ。イルディア。」
「なんだと?」
「お前は、人間の事をわかったつもりでいるようだが、人間は単純な生き物ではない。
時に、魔族なんかよりも、恐ろしい考えをするような存在だ。
お前は、勝手に人間を理解出来ていると、高を括っているだけの
惨めな存在なのが、わからないのか?」
「この幻獣め・・・好き勝手なことを・・・」
イルディアは、怒りを更に露わにして、イルルヤンカシュと、
戦闘態勢に入る。
一触即発な状態になり、シルヴィルは、顔を青ざめるが、
ラリイとイルルヤンカシュは平然としていた。
「お前が、我が一族を裏切った後、どれだけ、母さんが・・・
一族が苦しんだなんて、知りもしないだろうな・・・
今頃になって、知って欲しいとも思いもしないが。
どうせ、後悔したんだろう?幻獣のプライドで、魔族の女なんかと結婚してしまったことを。
それとも、ドラゴン族としてか?そんなくだらないことでな。」
「・・・・・」
イルルヤンカシュは、目を閉じ、自分の息子の言葉を、ただ黙って聞いていた。
きっと、こういうことを言われると、イルルヤンカシュも覚悟はしていたようだ。
息子の言葉に、イルルヤンカシュは気を乱したりはしていない。
だが、そこへ、シルヴィルは兄に向かい叫ぶ。
「兄さん!それは、あんまりよ!私達一族だって、酷いをしたじゃない!
イルルヤンカシュ様だけが、悪いわけじゃないはずよ!!!」
「イルルヤンカシュ様・・・ね。ああ、そうかもしれないな。
けど、そのイルルヤンカシュ様は、結局は、母さんとの結婚を
後悔してることに変わりはないだろ?
現に、もう一人の子である、娘のお前の存在を認めずに、
様付けで呼ばせてるのがいい証拠さ。」
「そ、それは・・・しょうがないよ・・・だって、私は・・・
タイミングが悪く、イルルヤンカシュ様がいなくなってから、
生まれちゃったんだから・・・
いきなり、娘ですって言われても、困るだけだよ・・・。
でも、こう呼んでいるは私の意思だから。無理にさせられてるわけじゃないわ!」
「シルヴィル・・・」
ラリイは、辛くて、すぐにでも泣き出しそうになっている、
シルヴィルの側に寄り添った。
放って置くことが、今のラリイには出来なかったのだ。
例え、娘と認めて貰えなくても、それでもイルルヤンカシュの
味方でいようとする、シルヴィルを。
シルヴィルは、そんなラリイを見て、嫌がる事もなかった。
むしろ、少し嬉しそうな雰囲気さえあった。
「そうだな・・・俺は後悔している。」
「ほら、見ろ・・・」
「お前達を幸せにしてやれなかった。俺が不器用なばかりに、
お前達に苦労ばかりさせることになってしまった事にな。」
「な・・・」
イルルヤンカシュの言葉を聞き、イルディアは、何とも言えない顔になった。
こんな言葉を聞くことになろうとは、想像もしていなかったのだろう。
イルディアは、イルルヤンカシュを、更にきつく睨んだ。
「そんな事を言えば、俺がお前みたいな幻獣の言う事を、
大人しく聞くとでも、思っているのか?
だったら、俺を見下すのもいい加減にしろ!」
「俺は、お前をそんな風に思いはしない。恨まれていても仕方がないと思っている。」
「だったら、俺が、お前を殺したい程、憎んでいるのも知ってるよな?!!」
イルディアは、一気に戦闘モードに入り、イルルヤンカシュと急に戦闘をし始めた。
双方、物理攻撃や、魔法攻撃などで、戦いは激しくなっていく。
シルヴィルは、泣きながら「やめて!!」と叫ぶが、両者に、
その言葉が届くことは、もちろんない。
シルヴィルは、両者の間に入り、戦いを止めさせようとするが、
ラリイが、それはあまりにも危険なので、止める。
「駄目だ!シルヴィル!君では、イルルヤンカシュ達の戦いを、
止めるのは危険すぎる!」
「でも、ラリイ!そうでもしなければ、兄は、イルルヤンカシュ様は、殺し合いを!
お願い、両者を止めて!じゃないと・・・じゃないと・・・」
シルヴィルは、凄く取り乱し、恥ずかしさなど忘れ、ラリイにすがり、懇願する。
ラリイは、シルヴィルを優しく抱きしめ、落ち着かせようとした。
こんなことをしてあげたいと思った、存在など、ラリイは今まで1人もいなかった。
シルヴィルが初めてであったのだ。
「シルヴィル、聞いてくれ。」
「ラリイ・・・???」
シルヴィルはラリイに、急に抱きしめられ、恥ずかしさで、
顔を真っ赤にする。
予想もしていなかった出来事に、照れるしかない状態であった。
けど、ラリイは、恥ずかしがることもなく、シルヴィルを
抱きしめたままで会話を続ける。
「これは、父と子の、譲れないものを賭けた、親子の対決なんだ。
だから、心配するのはわかるけど、無理に止めたらいけない。」
「で、でも・・・もし、どちらかが・・・死んだら・・・」
「大丈夫。そうなりそうなら、事前に私が止めるし、
最悪、どちらかが、大怪我しても、回復してあげられる。」
「え?」
「私の親はフェニックスだから。回復は得意中の得意なんだ。」
ラリイは、シルヴィルを少しでも安心させてあげたくて、
自分の親の幻獣の名前を出して言った。
シルヴィルはそれを聞いて、目を丸くして、ラリイを見ていた。
その姿は、何とも愛くるしいと、ラリイはこっそり思ってしまっていた。
イルルヤンカシュとイルディアが大変な状態でもあるにも関わらず。