このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第9章「ついに息子に・・・?」

ラリイは、イルルヤンカシュの勧めを受けて、1度、幻獣界に帰ってきていた。
1週間くらいとは言え、ラリイが人間界に居続ければ、絶対に
フェニックスが心配するだろうから、簡単に事情を話し、
安心させて来た方がいいだろうと言うのだ。
流石、フェニックスの長年の親友だけあって、イルルヤンカシュの考えは、
当たっていた。
ラリイは幻獣界に帰る間際に聖星団のヒヤデスと、アルクトゥルスにも、
事情を話してきてある。
シルヴィルから聞いた話もしたので、ヒヤデス達も、聖星団の方で
出来ることをしておくとの事だった。

「ラリイは、今、そんなことをしていたんですか?」
「はい。」
「そうですか・・・イルルヤンカシュが・・・」

ラリイは、大まかにフェニックスに、今までの事を話して、
もうしばらく、また人間界に行かなければならないことをフェニックスに伝えた。
フェニックスも、親友である、イルルヤンカシュの助けを、
息子のラリイがするのであれば、駄目だとは言えなかった。

「それにしても、ラリイは・・・あ、いや何でもないです。」
「?」

フェニックスはあることを、ラリイに言いそうになって、途中で止める。
ラリイは不思議そうな顔をしたが、フェニックスは言わない方がいいと、すぐに判断したのだ。
フェニックスは、息子ラリイのちょっとした変化に気付いた。
ラリイが、イルルヤンカシュの娘かもしれない、シルヴィルと言う、
魔族の少女の話をする時に、穏やかな顔になったり、薄っすらと笑顔になることを。
多分、これは、親であるフェニックスしか気づいてない。

(もしかしたら、ラリイは、そのシルヴィルと言う娘に、
好意が出たのかもしれない・・・
これは、チャンスかもしれないですね・・・その子が、
イルルヤンカシュの本当の娘であってくれたら、尚いいのですが。
ラリイにもやっと・・・うふふ。)

フェニックスは、ラリイにもやっと春が来るかもしれないと、
淡い期待をしていた。
親友の娘かもしれない、存在なら、もっと喜ばしいとフェニックスは思う。
イルルヤンカシュ本人は未だに無理でも、その血筋の者を、
幻獣界に迎え入れることが出来るかもしれないのだ。
そしたら、バハムートも、きっと内心では喜んでくれることだろう。
過去の古代神兵器の件の時に、イルルヤンカシュの助けを受けた事で、
バハムートは、ほとんど、イルルヤンカシュを許した雰囲気があったからだ。
これをきっかけにして、バハムート達と、イルルヤンカシュの関係が修繕されることを、
フェニックスは期待せずにはいられなかった。

「フェニ?何かあったんですか?」

ラリイは、フェニックスが何かを言いかけたことを気にする。
けど、フェニックスは「何でもありません♥」と誤魔化した。
今は、きっと微妙な時期に違いないとフェニックスは悟る。
ここで、ラリイはシルヴィルと言う子が好きなんですね!
みたいに言ってしまったら、ラリイは、それを気にして、
せっかくのいい感じを壊しかねないと、フェニックスは確信した。

(余計なことはすべきではありませんね。ラリイが、やっと誰かに
恋するかもしれないのに・・・
それでも、今にも私は歓喜して、ラリイを抱きしめそうになりそうで怖い・・・)

フェニックスは、自分の感情を何とか我慢し、ラリイに微笑む。
ラリイは、フェニックスの心情がわからないので、嬉しそうな顔をするフェニックスに、
親友のイルルヤンカシュの手助けすることが、そんなに親のフェニックスには、
嬉しいことなんだと勘違いしていた。

「でも、ラリイ。ラリイも無理はしないで下さいね?
ラリイがイルルヤンカシュと揉めるとか無いとは思うのですが・・・
一族の問題と言うのは、重大な問題ですからね・・・」
「わかってます。フェニ。軽率な行動は絶対にしません。
私もイルルには嫌われたくないですから。」
「うふふ。そうですね。ラリイは赤ん坊の頃から、イルルヤンカシュが大好きでしたからね。
なんせ、私の名前の次に、覚えたのが、イルルヤンカシュの名前なんですから。」

フェニックスは、ラリイに楽しそうに言う。久しぶりに親馬鹿が
大爆発してしまった。

「あの時は、本当にラリイには困りましたからねぇ♥
イルルぅううって泣いて♥別れたがらないんですから♥♥♥」
「フェニ・・・その話は恥ずかしいですから・・・勘弁して下さい。」

ラリイは少し顔を赤くし、フェニックスに文句を言った。
何度か、その話を聞かされたことがあったラリイだが、
赤ん坊の頃の事なので、ラリイ自身にはどうにもすることが出来ない。
なのに、親であるフェニックスは、嬉しそうに、楽しそうに、
ラリイに聞かせるのだから、大人になったラリイには、恥ずかしくて堪らない。

「すいません、ラリイ。でもね・・・私はそれだけ嬉しいんですよ?
イルルヤンカシュは、今まで辛い立場でずっと居ましたから。
それを私の愛しいラリイが、少しでも役に立ってくれてる。
私では出来ないことを、ラリイがしてくれているのが、心から、
私は嬉しいんです。」
「フェニ・・・」

ラリイの行動に、フェニックスは素直に喜び、優しい笑顔で、
フェニックスは息子のラリイに言った。

「昔のあの頃は、本当にイルルヤンカシュに助けて貰いましたからねぇ・・・」
「あの頃?」
「ええ、私がまだバハムートが嫌いで、バハムートにストーカーまがいに勧誘されていた頃です。
まー何せ、しつこかったですからねぇーバハムートは。
それを、あのイルルヤンカシュでさえ、同情してくれて、
匿ってくれた時は、どれだけ救われたか。
その恩を、私の愛しいのラリイも返してくれてるなんて・・・
ああー私はなんて幸せな幻獣なんでしょうか♥♥♥」
「そこまでだったんですか・・・」

ラリイは、フェニックスの話を聞いて、呆然としてしまった。
過去のバハムートから、匿って貰ったと言う話は聞いてはいるが、
そこまで、親のフェニックスが感謝していたとは、ラリイも思わずにいた。
どれだけ、過去に、自分の親はバハムートに追い掛け回されていたのだろうか?
ラリイは、その光景を少しだけ見たいとさえ思ってしまった。
けど、そんな事を言ったら、フェニックスは間違いなく怒るだろう。

「とにかく、気を付けて行って来なさい。ラリイ。」
「はい。では、また行って来ますね。」
「いい結果になることを私も期待してますね。」
「そうなるように、私も、出来る限りの事はしてみます。」

ラリイは、こうしてフェニックスとの会話を終わらせて、すぐに、
イルルヤンカシュの元に戻った。
イルルヤンカシュは、戻って来たラリイと、今後の事を、話し合う。

「人間側の事情は、ラリイの言う、その聖星団とやらに任せよう。」
「うん、そうした方がいいと、私も思う。」
「では、俺は、魔族側、要するに俺の家族の問題を解決する。
手を組んでいる人間側に協力させなければ、事は大分収まるだろう。」
「だな。私が聞いた話でも、第2王子側の人間は、鬼人族を、
どうあっても使って、今回のこの件を進めたいらしいからな。」
「はぁ・・・俺の息子とは言え、人間の下らない権力争いの
巻き添えになるとはな・・・」

イルルヤンカシュは、かなり苦い顔をして、ラリイに呟いた。
これには、ラリイも同じ気持ちにならざるを得なかった。
7/7ページ
スキ