第9章「ついに息子に・・・?」
ラリイは、自分で出来る限りのことで、魔界に足を運び、
情報を集め、ヒヤデスから聞いた、ディスザード国の内情も含めて、
イルルヤンカシュと話をしていた。
イルルヤンカシュも、深刻な顔をしながら、ラリイと話し合う。
ラリイがイルルヤンカシュの元に帰ってきた時は、すでに深夜であった。
「ラリイの報告を聞いた限りでは、俺の妻の一族で、間違いなさそうだな。
人間の姿に近く、頭に角があるの存在は、鬼人族だろう。」
「鬼人族か・・・元々は数が少ない種族だったか?」
「そうだ。しかし、稀に恐ろしく強い力を持つ者が生まれることがあるのだ。
時に有名な魔王を生み出すことがある素質の一族でな。
妻の祖父にあたる人物は、かなりの力を持った魔王だったらしく、
その時は大分、一族は盛り返したらしい。」
「へぇ・・・じゃあ、魔界では貴重な一族じゃないか?」
「ああ、だから、俺の妻は他の魔族達から、その血を欲しがられ、
拉致されかけたのだ、あの時にな。」
「あの、イルルが妻に出会うきっかけになった話の?」
「それだ。あの後で、妻から聞いた話だが、あの当時は毎度の事だったらしいがな。
妻がよく笑って、俺に話していたものだ。」
「なるほど・・・」
ラリイは、イルルヤンカシュの話を聞き、自分なりに考える。
そんな魔族の女とイルルヤンカシュの息子なら、一族の周りの者が
期待をかけるのは当然かもしれない。
シルヴィルは、勝ち目など戦いと言っていたが、鬼人族の隠れた素質が開花すれば、
それも確実に負け戦になるとは言えないだろう。
イルルヤンカシュの息子が、もしかしたら魔王になれるほど、
強くなる可能性も否定は出来ないではないか。
「イルディア・・・それが俺の息子の名前だ。ラリイ。」
「イルディアと言うのか?」
「ああ。それから、妻の名前は、ミディアと言う。その名前を覚えておいてくれ。
鬼人族でその名前なら、俺の息子と妻で間違いないはずだ。」
「わかった。覚えておくよ。イルル。」
ラリイは、初めてイルルヤンカシュの家族の名前を聞いた。
長年、イルルヤンカシュと付き合いがある者でも、家族の名前を
聞けたのは、ごく少数だろう。
あの親のフェニックスでさえ、知らないかもしれない。
「ラリイ・・・とうとう、俺は自分の息子と対峙しなければ、
ならない時が来たようだ。」
「息子と対峙する?」
「俺はな、ラリイ。息子が成長した時に、どうしようもない程に、
邪悪な存在になっていたら、俺の手で殺そうと決めていたのだ。」
「?!」
ラリイは、イルルヤンカシュの告白を聞き、目を見開いた。
その言葉に、心底、驚きはしたが、ラリイは何も言う事が出来なかった。
これは、長年のイルルヤンカシュの問題だ。
いくら、親友と言えるほどの仲のラリイでさえあっても、気軽に口を挟むのは許されない。
ラリイは、イルルヤンカシュの話が終わるまで、黙るしかなった。
「幻獣として、更にはドラゴン族として、俺の血で、恥になる行為は、もう二度と許さない。
いや、俺がもう決して許してはならないのだ。それが、長年バハムート達に
迷惑をかけ続けた、俺の償いにもなる。」
「イルル・・・」
「だから、ラリイ。その時は、何が有っても、止めてくれるな。
いいか?」
「わかった。イルルヤンカシュのそれが決意だと言うのなら、
私には止める資格なんてない。」
「有難うな・・・ラリイ。」
穏やかではあったが、何とも言えない顔で、イルルヤンカシュは、
ラリイに感謝した。
ラリイも複雑な心境ではあるが、これ以上は何も言うまいと思った。
それでイルルヤンカシュの長年の問題が解決されると言うのなら、
見守るしかない。
「明日、シルヴィルから、また話を聞き次第に、俺は、
久しぶりに息子と妻に会おうと思う。
その時なんだが、ラリイも一緒に来てくれるか?」
「いいのか?私も一緒に行って?」
「ああ、ラリイには悪いが、俺のこれからの行動を証明をする存在になって欲しいのだ。」
「私が、イルルの証明する存在に?」
「これは、ラリイにしか頼めない事だと、俺は思っている。
俺が全てが解決したと判断した後で、その事を、フェニックスと
バハムートに伝えてくれないか?」
「わかった。イルルがそれを望むのなら、私は喜んで、その役を引き受けよう。」
「そうか。助かるよ、ラリイ。フェニックスは、本当に羨ましいな。
ラリイの様な息子を持って。」
「イルル・・・そんな悲しい事は言わないでくれ・・・」
ラリイは、寂しそうに笑う、イルルヤンカシュに、流石に
胸が痛すぎて、つい、そう言ってしまった。
ラリイは、どうしても嫌な予感も感じずにはいられなかった。
イルルヤンカシュの息子が、魔王として覚醒して、かなりの強さを得てしまったら、
イルルヤンカシュも、どうあっても息子を止めるのではないだろうかと。
それこそ、自分の命を引き換えにしてもだ。
ラリイは、それだけは、阻止出来たらいいなと内心では思った。
イルルヤンカシュの問題だから、手を出してはいけないと、
頭の中では理解してはいても、やっぱり、ラリイは、
イルルヤンカシュが、自身の家族と共に悲惨な目には遭って欲しくないと思うのも本心だった。
「ラリイ。今日はこのくらいにしよう。寝た方がいい。」
「そうだな。イルル。私も少し疲れたから寝るよ。おやすみ。」
「おやすみ・・・ラリイ。」
ラリイとイルルヤンカシュは、一緒に深い眠りに入った。
今夜はイルルヤンカシュの覇気が凄かったのか、魔族達が、
イルルヤンカシュの側に近づく様子はない。
本能的なもので、恐れているのだろう。
イルルヤンカシュの側に、今、無駄に近づけば、容赦なく殺されると。
ラリイは、最初こそ、そんなイルルヤンカシュの側で、ソワソワした感じがあったものの、
疲れからか、結局は寝てしまっていた。
翌朝になって、結構早い時間に、シルヴィルは、イルルヤンカシュの元に来た。
その態度は、少しは父に認めて貰えたのかもしれないと言う、
期待に満ちたものであった。
「あの・・・おはようございます。イルルヤンカシュ様。ラリイ。」
「おはよう、シルヴィル。」
「うむ。」
ラリイは、シルヴィアに静かに微笑んで答え、イルルヤンカシュは、
まだ少しぎこちない感じで短く答えた。
シルヴィルも、そんな態度のイルルヤンカシュに、ぎこちなくなってしまう。
ラリイは、何とも気の毒な親子だなぁと、思ってしまった。
だが、今はまだ、それも仕方がない。シルヴィルが、
本当にイルルヤンカシュの娘だと証明されないのだから。
イルルヤンカシュが妻の元に行くまでは。
「実は、昨日、私が帰った後で、兄の方で、進展があったみたいです。」
「何?それは真か?」
「はい。1週間後に、作戦を決行すると話してました。
私が、何度か見た、ディスザード国の人間も居たので、間違いはないかと・・・」
「1週間後か・・・」
ラリイと、イルルヤンカシュはシルヴィルの話を聞き、再度話し合うことになった。
イルルヤンカシュは、息子と妻に会うべきタイミングを考え直すかもしれないとラリイに言う。
シルヴィルは、イルルヤンカシュが自分の兄と母に会ってくれると言う事に、
思わず喜び笑顔になっていたが、ラリイは複雑な気分になった。
シルヴィルが望んでいるであろう、感動の再会とはいかないからだ。
最悪は、シルヴィルは、父である、イルルヤンカシュを憎むかもしれない。
兄を殺した父として・・・
ラリイは、そうなって欲しくはないと、本気で思った。
情報を集め、ヒヤデスから聞いた、ディスザード国の内情も含めて、
イルルヤンカシュと話をしていた。
イルルヤンカシュも、深刻な顔をしながら、ラリイと話し合う。
ラリイがイルルヤンカシュの元に帰ってきた時は、すでに深夜であった。
「ラリイの報告を聞いた限りでは、俺の妻の一族で、間違いなさそうだな。
人間の姿に近く、頭に角があるの存在は、鬼人族だろう。」
「鬼人族か・・・元々は数が少ない種族だったか?」
「そうだ。しかし、稀に恐ろしく強い力を持つ者が生まれることがあるのだ。
時に有名な魔王を生み出すことがある素質の一族でな。
妻の祖父にあたる人物は、かなりの力を持った魔王だったらしく、
その時は大分、一族は盛り返したらしい。」
「へぇ・・・じゃあ、魔界では貴重な一族じゃないか?」
「ああ、だから、俺の妻は他の魔族達から、その血を欲しがられ、
拉致されかけたのだ、あの時にな。」
「あの、イルルが妻に出会うきっかけになった話の?」
「それだ。あの後で、妻から聞いた話だが、あの当時は毎度の事だったらしいがな。
妻がよく笑って、俺に話していたものだ。」
「なるほど・・・」
ラリイは、イルルヤンカシュの話を聞き、自分なりに考える。
そんな魔族の女とイルルヤンカシュの息子なら、一族の周りの者が
期待をかけるのは当然かもしれない。
シルヴィルは、勝ち目など戦いと言っていたが、鬼人族の隠れた素質が開花すれば、
それも確実に負け戦になるとは言えないだろう。
イルルヤンカシュの息子が、もしかしたら魔王になれるほど、
強くなる可能性も否定は出来ないではないか。
「イルディア・・・それが俺の息子の名前だ。ラリイ。」
「イルディアと言うのか?」
「ああ。それから、妻の名前は、ミディアと言う。その名前を覚えておいてくれ。
鬼人族でその名前なら、俺の息子と妻で間違いないはずだ。」
「わかった。覚えておくよ。イルル。」
ラリイは、初めてイルルヤンカシュの家族の名前を聞いた。
長年、イルルヤンカシュと付き合いがある者でも、家族の名前を
聞けたのは、ごく少数だろう。
あの親のフェニックスでさえ、知らないかもしれない。
「ラリイ・・・とうとう、俺は自分の息子と対峙しなければ、
ならない時が来たようだ。」
「息子と対峙する?」
「俺はな、ラリイ。息子が成長した時に、どうしようもない程に、
邪悪な存在になっていたら、俺の手で殺そうと決めていたのだ。」
「?!」
ラリイは、イルルヤンカシュの告白を聞き、目を見開いた。
その言葉に、心底、驚きはしたが、ラリイは何も言う事が出来なかった。
これは、長年のイルルヤンカシュの問題だ。
いくら、親友と言えるほどの仲のラリイでさえあっても、気軽に口を挟むのは許されない。
ラリイは、イルルヤンカシュの話が終わるまで、黙るしかなった。
「幻獣として、更にはドラゴン族として、俺の血で、恥になる行為は、もう二度と許さない。
いや、俺がもう決して許してはならないのだ。それが、長年バハムート達に
迷惑をかけ続けた、俺の償いにもなる。」
「イルル・・・」
「だから、ラリイ。その時は、何が有っても、止めてくれるな。
いいか?」
「わかった。イルルヤンカシュのそれが決意だと言うのなら、
私には止める資格なんてない。」
「有難うな・・・ラリイ。」
穏やかではあったが、何とも言えない顔で、イルルヤンカシュは、
ラリイに感謝した。
ラリイも複雑な心境ではあるが、これ以上は何も言うまいと思った。
それでイルルヤンカシュの長年の問題が解決されると言うのなら、
見守るしかない。
「明日、シルヴィルから、また話を聞き次第に、俺は、
久しぶりに息子と妻に会おうと思う。
その時なんだが、ラリイも一緒に来てくれるか?」
「いいのか?私も一緒に行って?」
「ああ、ラリイには悪いが、俺のこれからの行動を証明をする存在になって欲しいのだ。」
「私が、イルルの証明する存在に?」
「これは、ラリイにしか頼めない事だと、俺は思っている。
俺が全てが解決したと判断した後で、その事を、フェニックスと
バハムートに伝えてくれないか?」
「わかった。イルルがそれを望むのなら、私は喜んで、その役を引き受けよう。」
「そうか。助かるよ、ラリイ。フェニックスは、本当に羨ましいな。
ラリイの様な息子を持って。」
「イルル・・・そんな悲しい事は言わないでくれ・・・」
ラリイは、寂しそうに笑う、イルルヤンカシュに、流石に
胸が痛すぎて、つい、そう言ってしまった。
ラリイは、どうしても嫌な予感も感じずにはいられなかった。
イルルヤンカシュの息子が、魔王として覚醒して、かなりの強さを得てしまったら、
イルルヤンカシュも、どうあっても息子を止めるのではないだろうかと。
それこそ、自分の命を引き換えにしてもだ。
ラリイは、それだけは、阻止出来たらいいなと内心では思った。
イルルヤンカシュの問題だから、手を出してはいけないと、
頭の中では理解してはいても、やっぱり、ラリイは、
イルルヤンカシュが、自身の家族と共に悲惨な目には遭って欲しくないと思うのも本心だった。
「ラリイ。今日はこのくらいにしよう。寝た方がいい。」
「そうだな。イルル。私も少し疲れたから寝るよ。おやすみ。」
「おやすみ・・・ラリイ。」
ラリイとイルルヤンカシュは、一緒に深い眠りに入った。
今夜はイルルヤンカシュの覇気が凄かったのか、魔族達が、
イルルヤンカシュの側に近づく様子はない。
本能的なもので、恐れているのだろう。
イルルヤンカシュの側に、今、無駄に近づけば、容赦なく殺されると。
ラリイは、最初こそ、そんなイルルヤンカシュの側で、ソワソワした感じがあったものの、
疲れからか、結局は寝てしまっていた。
翌朝になって、結構早い時間に、シルヴィルは、イルルヤンカシュの元に来た。
その態度は、少しは父に認めて貰えたのかもしれないと言う、
期待に満ちたものであった。
「あの・・・おはようございます。イルルヤンカシュ様。ラリイ。」
「おはよう、シルヴィル。」
「うむ。」
ラリイは、シルヴィアに静かに微笑んで答え、イルルヤンカシュは、
まだ少しぎこちない感じで短く答えた。
シルヴィルも、そんな態度のイルルヤンカシュに、ぎこちなくなってしまう。
ラリイは、何とも気の毒な親子だなぁと、思ってしまった。
だが、今はまだ、それも仕方がない。シルヴィルが、
本当にイルルヤンカシュの娘だと証明されないのだから。
イルルヤンカシュが妻の元に行くまでは。
「実は、昨日、私が帰った後で、兄の方で、進展があったみたいです。」
「何?それは真か?」
「はい。1週間後に、作戦を決行すると話してました。
私が、何度か見た、ディスザード国の人間も居たので、間違いはないかと・・・」
「1週間後か・・・」
ラリイと、イルルヤンカシュはシルヴィルの話を聞き、再度話し合うことになった。
イルルヤンカシュは、息子と妻に会うべきタイミングを考え直すかもしれないとラリイに言う。
シルヴィルは、イルルヤンカシュが自分の兄と母に会ってくれると言う事に、
思わず喜び笑顔になっていたが、ラリイは複雑な気分になった。
シルヴィルが望んでいるであろう、感動の再会とはいかないからだ。
最悪は、シルヴィルは、父である、イルルヤンカシュを憎むかもしれない。
兄を殺した父として・・・
ラリイは、そうなって欲しくはないと、本気で思った。