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プロローグ

幻獣城の会議室に、バハムート、フェニックス、オーディン、
そして、使い魔のカラスを通してラムウと、オーディンが連れて来た、例の人間が居た。
オーディンの言う通り、これだけの有名な幻獣に囲まれても、その若い
人間の男は、平然とした態度だった。
普通なら、少しは恐縮してもいいものだが、その男は何も怖がって
などいなかった。
確かに度胸がある。バハムートは、それだけでも、この人間の男に興味が出たようだ。
男は陽気そうな感じで、歳は20代後半と言ったところだろうか、
澄んだ空のような水色の髪に、濃い蒼い瞳をした、整った顔の青年だった。

「バハムート、その他の方々、彼が俺が言っていた、
例の人間界から来た訪問者です。おい、自己紹介しろ!」

オーディンは、例の訪問者の青年に自己紹介を促す。
その青年は、軽やかな笑顔で、バハムート達に挨拶から始める。

「初めまして!高名な幻獣の皆様に、こうしてお会いすることが
出来て、大変に光栄でございます。
私の名前は、フレン・アステリア・エドソストと申します。
我が祖母は、縁あって、リヴァイアサンと友愛の契約を交わし、
私もその縁で、今回は幻獣界の存在を教えて貰い、皆様に
ご協力して欲しいことがあって、参りました。」

フレンと名乗った青年は、そう言うと深々と頭を下げた。
その口調からは確かに嫌味など感じることもなく、オーディンの
言っていた、気質は悪いものではなさそうだった。

「おー俺の義兄弟のリヴァイアサンは元気か?」

バハムートは嬉しそうに早速、フレンにそう質問する。
フレンは顔を上げて、すぐにバハムートに答える。

「はい!とてもお元気です!リヴァイアサンは、最近は人間の作った音楽に
興味があるようで、時々、人の姿になり、演奏会などに、
こっそり参加したりしておられます。」
「ほう!あいつは、最近はそんな趣味が出来たのか!」
「こほん。バハムート、そういう話は後にして下さい。」

フェニックスは、わざと咳をして、バハムートの話を止める。
そうでないと、肝心の話し合いが進みそうにないからだ。
バハムートは、子供のように少し不貞腐れて、フェニックスの指示に従う。

「ちぇ。せっかく、義兄弟の面白そうな話が聞けそうだと思ったのに。
ま、でも、先に、大事な話をするべきなのは確かだな。
で、フレンとやら、我々、幻獣界に協力して欲しい事とは何か?」

さっきまでの気さくな雰囲気とは、一気に変わり、バハムートも、
真面目な顔で、威厳のある態度で話を始めた。
これには、フレンも、それを感じ取ったようで、気を引き締めた顔になった。

「はい。幻獣界の王バハムート様。私は、今後の人間界をより、
平和に良い世界にする為に、聖星団と言う組織を作り、陰から、
世界を平和に導く為の存在を作りたいと思っております。」
「ほう?それで?」
「はい。その為に、幻獣界にいる皆様には、今後、人間の起こす
戦争には極力関わらないで頂きたいのです。いや、出来るのなら、
一切の関わりを持たないで欲しいのです。」
「ほう・・・だが、お前は人間だろう?我々の力を今後は欲しくはないと?」
「私は確かに人間です。ですが、人間の醜い、くだらない、争いに、
多くの幻獣が傷つき、人間を憎むようになったのを知っております。
私は、そうした悲劇を今後も繰り返したくはないのです。」

フレンは、しっかりとした眼差しで、バハムートを見ていた。
フェニックスもオーディンも、フレンと言う青年から、
何かを感じ取ろうと見ていた。

「なるほど。では、お前は我々、幻獣の為にも、
今後は人間の争いには関わるなと言うのだな?」
「はい。私のような人間が、この様な願いを言うのは、
差し出がましいとは、わかっております。ですが、私は、
友でもある、リヴァイアサンを、この先も、戦争の道具としてなど
見たくはないのです。その為には、幻獣界の皆様のご協力が欲しいのです。」

フレンはそう言って、再び頭を下げて、願いを告げた。
フェニックスは、その姿に前世のラリイを感じた。
死ぬ間際まで、親友として接してくれた、初めてにして最後の親友を。

「だ、そうだが、お前達の意見はどうだ?」

フレンの言葉を聞いて、バハムートは、三大重臣達の意見を求めた。

「私は彼の意見に賛成です。」
「俺も、悪い話じゃないと思いますね。」
「・・・・・・」
「ラムウ。お前はどう思う?」

フェニックスとオーディンがそう答え、ラムウは黙ったままで
あったが、バハムートが意見を促す。

「わしも概ね賛成じゃ。だが、人間界には、服従の輪や、その他、
我らが幻獣において、忌むべきものが多くある。
それについては、そなたはどう思う?」

使い魔のカラスを通じ、ラムウは意見を述べた。
フレンは再度、顔を上げて答える。

「それらについては、今後は、見つけ次第、破壊か、出来なければ
封印していければと思ってます。他にも、わからないことが
あれば、すぐに幻獣界と相談出来ればとも考えてます。」
「確かにそうした脅威がなくなるのは、我々にも有益だな。」

バハムートは感心したように聞いている。

「それが本当に実行されるのであれば、わしもこの話には賛成だ。」

フレンの答えを聞いて、あのラムウも賛成した。
フェニックスが期待していた通りの話し合いが行われ、この話し合いは、
その後も長い時間を要して、色々と、仮の取り決めも行われた。

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