第9章「ついに息子に・・・?」
「俺は、妻と共に魔界に身を置くことになった。最初の頃は、
何も問題がなかった。俺が魔界に身を置こうとも、文句を言うやつなどいなかったのだ。
しかし、時が経つにつれ、妻の一族は勢力が衰え出した事に焦りを感じ、
俺に幻獣界にいる仲間をもっと引き入れるように言い出した。
俺は、バハムート達に魔界に来ないか?などと気軽に言ってしまった。
そのことが、後で俺とバハムートの仲を裂く結果になるとも知らずにな。」
「イルルヤンカシュ・・・」
「その時の俺は自分の状況を、きちんと理解していなかったのだ。
誇り高きドラゴン族が、魔族の下僕になっていると、噂されていたことにな。
そして、裏で、バハムート達に迷惑をかけていたことも。
俺は、自分のしたいようにしていただけのつもりだった。
その頃には、妻との間に子も居たし、魔界にいるとは言え、平穏そのものだと。
だが、妻の一族はそんな事を望んでなどいなかった。バハムート達が自分達の
仲間にならないのであれば、バハムート達を倒し、バハムート達が作ろうと
していた幻獣界を奪えと、命令された。
妻の一族はな、ラリイ?私を家族などとは見ていなかったのだ。
娘が運よく手に入れた強力な道具くらいに見ていたのだろうよ。」
「そんな・・・それはあんまりにも・・・」
「ふっ。それが魔族と言うものだ。ラリイもそれは今後しっかり覚えておくのだ。」
「は・・・はい。」
イルルヤンカシュは、過去を思い出した所為か、少し怖い顔に
なってしまってはいたが、殺気立ったりはしていなかった。
ただ、自分の経験をラリイの今後の何かの参考になればと、
一生懸命に話してくれている。
ラリイは、そんなイルルヤンカシュに感謝し、しっかりと話しの続きを聞いた。
「私は素直にバハムートに事情を話し、戦う気はないと言った。
それを聞いた、バハムート達は、激怒し、俺に自分達の所に戻ってこいと言った。
そして、妻の一族を一緒に滅ぼそうとも。
ドラゴン族のプライドを著しく傷つけた存在だから許せないとな。
俺は、そんな事はやめてくれと必死にバハムート達に頼んだ。
確かに妻の一族のしようとしてることは、最低だ。それは俺も認める。
でも、それでも俺には大事な妻だった・・・妻に泣かれもした。
私の一族の言う事を聞いてくれと。」
イルルヤンカシュは辛そうな声で、それでも話を続ける。
その姿に、ラリイは胸を痛めたが、黙って話を聞いた。
それが、今のラリイに出来ることなのだと、ラリイは思ったから。
「バハムート達と、酷い仲違いをした日、俺は、妻の一族で、
一番危ない存在であった、妻の父、俺の義理の父にあたる存在を、
その日の夜に俺が殺した。
俺は妻の一族に言った。幻獣界を攻めるのは諦めろとな。
俺くらいが、お前達に加勢しても、勝ち目などないと、はっきり言ってやった。
俺は、妻と子を連れて逃げ出すつもりだったのだが・・・
妻は俺を拒んだ。もうお前は愛する夫ではない。父を殺した憎い存在、
仇だとな・・・あの顔を俺は一生忘れまい。」
「イルル・・・」
ラリイは、その話を聞き、イルルヤンカシュの名前を何とか呼ぶことしか出来ない。
イルルヤンカシュは、悲しげな笑顔でラリイを見て笑う。
「息子にもな、言われたものだ。お母さんを苦しめる、お父さんなんていらない!とな・・・
いずれ、おじいちゃんの仇は自分が取るとも・・・
何とも情けない父親だろ?ラリイ・・・」
「そんなことない!!!イルルは!イルルヤンカシュは、
最も誇らしい決断をしたんだ!!両者が激突してたら、被害はもっと酷かったはずだ!
いや、確実にイルルの妻の一族が、全滅させられていたはずだ・・・」
「流石ラリイだな。あの頃のフェニックスの様な事を言う。
お前達は本当に親子だな・・・羨ましいぞ・・・」
「え?」
イルルヤンカシュに、心の底から羨ましそうに言われ、ラリイは唖然としてしまった。
フェニックスも、自分の親も過去にそんな事を?
「ドラゴン族に見捨てられ、多くの幻獣に忌み嫌われた俺に、
何かと世話を焼いてくれたのは、フェニックスだけよ。
魔族からも幻獣からも、一時期、何度も命を狙われ、本当に危なかった時、
フェニックスは何の損得もなく、俺を助けた。
過去に何度も、バハムートから自分を匿ってくれたお礼だと言ってな。」
「フェニが・・・それがあったから、フェニとイルルは・・・」
「そうだ。種族を超えて絆が出来たと言っていい。俺には感謝しきれん恩が、
ラリイ、お前の親にあるのだ。」
「けど、きっとそんなことをフェニに言っても、拒否するでしょ?
自分も匿って貰った恩があるからとか、言って。」
「ははは。そうだな。お前の親はそんな幻獣だ。」
ラリイとイルルヤンカシュは、互いに微笑み合った。
フェニックスと言う幻獣が居てくれたからこそ、今のラリイと、
イルルヤンカシュの関係もあるのだ。
これも何かの巡り合わせとしか言いようがない。
ラリイは、イルルヤンカシュと知り合えた事を誇りに思っている。
フェニックスに、その点は十分に感謝さえしていた。
じゃなければ、ラリイが人生の中で、深刻な相談を受けてくれる相談相手も
1体減っていたと言うわけだ。
ラリイはそれだけは正直嫌だと思う。オーディンも、
助けてくれた存在ではあるが、またラリイの中では違うのだ。
オーディンは、やっぱり「師」であり、友情もあるが、一概に友だけの存在と言えない。
ラリイの中で、純粋な友はやっぱり、イルルヤンカシュであった。
ラリイは、しばらくイルルヤンカシュから、結婚には色々な事があるのだと教えられて、
そして幻獣界に帰ろうとしていた。
イルルヤンカシュの巣から、それなりに離れたところで、ラリイがある魔族の女に出会った。
その魔族の女は、まだ少女であり、か弱そうなに見える。
ラリイは思った。こんな場所で珍しい存在にあったと。
「あ!あのう!待って下さい!」
「ん?」
ラリイが遠巻きに、その魔族の少女を見ていると、少女も
ラリイに気付いて、声を掛けてきた。
「あのう・・・ここらへんで、銀の大きな竜を見なかったでしょうか?」
魔族の少女は、ラリイにおどおどしながらも、聞いてくる。
銀の大きな竜と言ったら、今さっきまで一緒にいた、イルルヤンカシュしかいまい。
ラリイは、魔族の少女を警戒する。まさか、こんな少女のなりを
しているが、イルルヤンカシュの刺客か?
「なんでだ?」
ラリイは、少し睨んで、魔族の少女を警戒しながら見た。
魔族の少女は、ラリイに困った顔をしながらも、ラリイに力を貸して欲しかったのか、素直に話す。
「実は、ここらへんに、私の父が居るはずなのです。幻獣イルルヤンカシュが!」
「父?!娘?!」
ラリイは、今さっきまでイルルヤンカシュから家族の話を聞いていただけに、
目を真ん丸にして、その魔族の少女を見た。
何も問題がなかった。俺が魔界に身を置こうとも、文句を言うやつなどいなかったのだ。
しかし、時が経つにつれ、妻の一族は勢力が衰え出した事に焦りを感じ、
俺に幻獣界にいる仲間をもっと引き入れるように言い出した。
俺は、バハムート達に魔界に来ないか?などと気軽に言ってしまった。
そのことが、後で俺とバハムートの仲を裂く結果になるとも知らずにな。」
「イルルヤンカシュ・・・」
「その時の俺は自分の状況を、きちんと理解していなかったのだ。
誇り高きドラゴン族が、魔族の下僕になっていると、噂されていたことにな。
そして、裏で、バハムート達に迷惑をかけていたことも。
俺は、自分のしたいようにしていただけのつもりだった。
その頃には、妻との間に子も居たし、魔界にいるとは言え、平穏そのものだと。
だが、妻の一族はそんな事を望んでなどいなかった。バハムート達が自分達の
仲間にならないのであれば、バハムート達を倒し、バハムート達が作ろうと
していた幻獣界を奪えと、命令された。
妻の一族はな、ラリイ?私を家族などとは見ていなかったのだ。
娘が運よく手に入れた強力な道具くらいに見ていたのだろうよ。」
「そんな・・・それはあんまりにも・・・」
「ふっ。それが魔族と言うものだ。ラリイもそれは今後しっかり覚えておくのだ。」
「は・・・はい。」
イルルヤンカシュは、過去を思い出した所為か、少し怖い顔に
なってしまってはいたが、殺気立ったりはしていなかった。
ただ、自分の経験をラリイの今後の何かの参考になればと、
一生懸命に話してくれている。
ラリイは、そんなイルルヤンカシュに感謝し、しっかりと話しの続きを聞いた。
「私は素直にバハムートに事情を話し、戦う気はないと言った。
それを聞いた、バハムート達は、激怒し、俺に自分達の所に戻ってこいと言った。
そして、妻の一族を一緒に滅ぼそうとも。
ドラゴン族のプライドを著しく傷つけた存在だから許せないとな。
俺は、そんな事はやめてくれと必死にバハムート達に頼んだ。
確かに妻の一族のしようとしてることは、最低だ。それは俺も認める。
でも、それでも俺には大事な妻だった・・・妻に泣かれもした。
私の一族の言う事を聞いてくれと。」
イルルヤンカシュは辛そうな声で、それでも話を続ける。
その姿に、ラリイは胸を痛めたが、黙って話を聞いた。
それが、今のラリイに出来ることなのだと、ラリイは思ったから。
「バハムート達と、酷い仲違いをした日、俺は、妻の一族で、
一番危ない存在であった、妻の父、俺の義理の父にあたる存在を、
その日の夜に俺が殺した。
俺は妻の一族に言った。幻獣界を攻めるのは諦めろとな。
俺くらいが、お前達に加勢しても、勝ち目などないと、はっきり言ってやった。
俺は、妻と子を連れて逃げ出すつもりだったのだが・・・
妻は俺を拒んだ。もうお前は愛する夫ではない。父を殺した憎い存在、
仇だとな・・・あの顔を俺は一生忘れまい。」
「イルル・・・」
ラリイは、その話を聞き、イルルヤンカシュの名前を何とか呼ぶことしか出来ない。
イルルヤンカシュは、悲しげな笑顔でラリイを見て笑う。
「息子にもな、言われたものだ。お母さんを苦しめる、お父さんなんていらない!とな・・・
いずれ、おじいちゃんの仇は自分が取るとも・・・
何とも情けない父親だろ?ラリイ・・・」
「そんなことない!!!イルルは!イルルヤンカシュは、
最も誇らしい決断をしたんだ!!両者が激突してたら、被害はもっと酷かったはずだ!
いや、確実にイルルの妻の一族が、全滅させられていたはずだ・・・」
「流石ラリイだな。あの頃のフェニックスの様な事を言う。
お前達は本当に親子だな・・・羨ましいぞ・・・」
「え?」
イルルヤンカシュに、心の底から羨ましそうに言われ、ラリイは唖然としてしまった。
フェニックスも、自分の親も過去にそんな事を?
「ドラゴン族に見捨てられ、多くの幻獣に忌み嫌われた俺に、
何かと世話を焼いてくれたのは、フェニックスだけよ。
魔族からも幻獣からも、一時期、何度も命を狙われ、本当に危なかった時、
フェニックスは何の損得もなく、俺を助けた。
過去に何度も、バハムートから自分を匿ってくれたお礼だと言ってな。」
「フェニが・・・それがあったから、フェニとイルルは・・・」
「そうだ。種族を超えて絆が出来たと言っていい。俺には感謝しきれん恩が、
ラリイ、お前の親にあるのだ。」
「けど、きっとそんなことをフェニに言っても、拒否するでしょ?
自分も匿って貰った恩があるからとか、言って。」
「ははは。そうだな。お前の親はそんな幻獣だ。」
ラリイとイルルヤンカシュは、互いに微笑み合った。
フェニックスと言う幻獣が居てくれたからこそ、今のラリイと、
イルルヤンカシュの関係もあるのだ。
これも何かの巡り合わせとしか言いようがない。
ラリイは、イルルヤンカシュと知り合えた事を誇りに思っている。
フェニックスに、その点は十分に感謝さえしていた。
じゃなければ、ラリイが人生の中で、深刻な相談を受けてくれる相談相手も
1体減っていたと言うわけだ。
ラリイはそれだけは正直嫌だと思う。オーディンも、
助けてくれた存在ではあるが、またラリイの中では違うのだ。
オーディンは、やっぱり「師」であり、友情もあるが、一概に友だけの存在と言えない。
ラリイの中で、純粋な友はやっぱり、イルルヤンカシュであった。
ラリイは、しばらくイルルヤンカシュから、結婚には色々な事があるのだと教えられて、
そして幻獣界に帰ろうとしていた。
イルルヤンカシュの巣から、それなりに離れたところで、ラリイがある魔族の女に出会った。
その魔族の女は、まだ少女であり、か弱そうなに見える。
ラリイは思った。こんな場所で珍しい存在にあったと。
「あ!あのう!待って下さい!」
「ん?」
ラリイが遠巻きに、その魔族の少女を見ていると、少女も
ラリイに気付いて、声を掛けてきた。
「あのう・・・ここらへんで、銀の大きな竜を見なかったでしょうか?」
魔族の少女は、ラリイにおどおどしながらも、聞いてくる。
銀の大きな竜と言ったら、今さっきまで一緒にいた、イルルヤンカシュしかいまい。
ラリイは、魔族の少女を警戒する。まさか、こんな少女のなりを
しているが、イルルヤンカシュの刺客か?
「なんでだ?」
ラリイは、少し睨んで、魔族の少女を警戒しながら見た。
魔族の少女は、ラリイに困った顔をしながらも、ラリイに力を貸して欲しかったのか、素直に話す。
「実は、ここらへんに、私の父が居るはずなのです。幻獣イルルヤンカシュが!」
「父?!娘?!」
ラリイは、今さっきまでイルルヤンカシュから家族の話を聞いていただけに、
目を真ん丸にして、その魔族の少女を見た。