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第8章「ザ・ストップ!反抗期!」

あの戦いから数日後に、ラリイは幻獣城に呼び出された。
バハムートが、珍しく難しい顔をしており、横に居る親のフェニックスも
複雑そうな顔をしていた。
ラリイは、自分が何か、失態を犯したのかと不安になった。

「ラリイ。今回、お前を呼び出したのは、他でもない。
数日前に、お前は、人間界で、聖星団の1人と一緒にデスロードを倒したそうだな?」
「はい。倒しました。」
「その時に、そのデスロードは、七大竜の1竜である、
ゼイアス・ヴィイングを呼び出したと言うが本当か?
しかも、ドラゴンゾンビ化された状態で召喚されたと?」
「本当です。」

ラリイはバハムートの質問に正直に答えた。バハムートは、
眉間に皺を寄せて、更にイライラした様子になる。

「どこの人間か、わからぬが、今回は流石に俺も頭にきている。
我がドラゴン族に、ここまで恥をかかせた人間を、俺を始め、
リヴァイアサンなども許しはしまい。
ラリイ。事の経緯を、もっと詳しく俺に話せ。いいな?」

ラリイは本気のバハムートに睨まれ、ビクッとしたが、自分が悪いことを
したわけではないので、ありのままに、あの日の体験したことを話しした。
フェニックスも、心配そうな顔をして、ラリイの話を聞く。
数十分後に、バハムートは王座についている、手摺の部分を
怒りの所為で強く握りすぎた所為で、バキっと嫌な音を立てて、壊した。
これには、横に居たフェニックスもビクッとした程だ。

「なら、結局は、そのデスロードの背後に居た存在の正体はわからないと言うんだな?」

バハムートの声は、相当に怒っていた。今回の件は、それほどまでに、
バハムート達、ドラゴン族にとっては許せない事態だったのだ。
しかし、ラリイには、事情がよくわからない為に、ただただ、
バハムートが怒りを鎮めてくれるのを、今は待つしかなかった。
きっと、フェニックスも同じ気持ちだろう。
けど、ラリイはこの件は、ちゃんと、あの日に帰ってきた時に報告はしてあった。
だから、何かを隠したとか、そういうことは一切してはいない。

「はい。黒い靄の様に現れ、私達では理解出来ない事を呟きながら、
最後は消えました。」
「どういう呟きだったか、覚えているか?」
「確か・・・永い、永い時をかけ、やっとその素質に近いものが誕生したか・・・
とか、言っていたと思います。」
「うむ・・・。フェニックス。お前は今回の件はどう思う?」
「そうですね・・・」

急にバハムートに意見を求められ、フェニックスも、かなり困った顔をしていた。

「今の時代の人間に、七大竜を呼び出せる程の力を持つ、
存在はいないに等しいと思います。
ですが、ラリイが言うには、そのデスロードが古代魔法を使い、
自身のすべての力を使って召喚したと。
この真実がある以上は、今後の事を踏まえて、聖星団と慎重に相談すべきかと。
事件に関わりのある、その古文書の事も気になりますね。」
「そうだな。」
「現状では、デスロードの裏側に居た存在が何であったかは、特定は難しいかと・・・。」
「はぁ・・・そうだな。俺も先ほどから大人気ない態度だった。
ラリイ、フェニックス、許せ。」

バハムートは、やっといつもの感じに戻り、ラリイもフェニックスも、安堵した。
バハムートは、真面目な顔でラリイに感謝した。

「ラリイよ。お前にお礼を言うのが遅れたな。
よく、我らがドラゴン族の偉大なる祖の1竜、ゼイアス・ヴィイングを救ってくれた。」
「いえ、そんな、私は・・・」
「今回は謙遜など、本気でいらないぞ?ラリイは、俺達ドラゴン族のプライドを守ったのだ。
あのまま、ドラゴンゾンビ化した、ゼイアスをデスロードに操られたままであったのなら、
俺もリヴァイアサンも、他のドラゴン達も怒りに任せて、
人間界そのものも、どうしていたかわからんからな。」
「・・・・・」
「バハムート・・・お気持ちはわかるのですが、
ラリイが怖がってしまうので、それくらいにしてあげて貰えませんか?」

フェニックスは、ラリイを庇う為に、バハムートに困った顔をしながら、そう言った。

「すまん。だが、今回は俺も冗談ではない。七大竜に関しては特にな。
この世界のドラゴン達にとっては、それだけ偉大な存在なのだ。
特にヴァルゥルゥタは、全てのドラゴンの父とも言われている。
そして、そのヴァルゥルゥタを守ってきたドラゴンの中に、ゼイアスもいたのだ。」
「そうだったのですね。」

フェニックスも真剣にバハムートの話を聞いている。
七大竜の話は、ドラゴン達の間では、有名な話ではあるが、
人間界では、ほとんどものが知らない。
七大竜に仕えた、ある竜使い人間達の存在は、その存在を快く思わない別の人間達から、隠されたのだ。
トゥバンが今回、ゼイアスを知っていたのは、たまたまトゥバンが、
その竜使いの人間達側の存在だったからだ。
フェニックスも、七大竜の存在自体は、バハムートから少し聞いているくらいで、
詳しくはなかった。
フェニックスは、今後の事も考えて、七大竜の話を出来る限り、
バハムートから聞いて、書物に纏めるべきだと考えた。

「今日は、珍しくバハムートが真面目でしたねぇ・・・
ラリイ・・・大丈夫でしたか?」
「はい。私は大丈夫です。」

バハムートと話が終わったラリイは、屋敷に帰ってきていた。
それから、1時間もしないで、フェニックスも帰ってきて、
息子のラリイの事を心配する。
ラリイは良い事をしたのだ。アンデットに苦しめられた人間達を救う。
フェニックスが、いつかそういう存在になってくれればと、
期待していたことを、ラリイはちゃんとやってくれた。
けど、そのデスロードが、七大竜を召喚した事で、事態は
ややっこしくなってしまったのだ。

「今回のことで、バハムートの人間嫌いが悪化しなければいいのですが。
最近、やっと、見直してくれるようになったと思ったのに。
今は、全ての人間を憎むほどではないと思いますが・・・
今後も、人間達が、その黒い靄の様な存在に唆されて、
七大竜をまた召喚するなんてことになったらと思うと不安です。」
「フェニ・・・確かにそうですね。私も不安です。」

親のフェニックスの不安げな顔を見て、ラリイも同調した。
バハムートが、そんな存在にならないことを、ラリイも心から願うばかりだ。

「フェニ。私は、人間達が、そんな愚かな行為を繰り返さないように、
出来る限りですが、阻止出来るように努力してみます。」
「ラリイ・・・お願いしますね。それが出来るのは、
この幻獣界では貴方だけでしょうから。
でも、無理はしないで下さいね?貴方は、私の大事な子。
私も、もしラリイを別の人間の手によって、失う事になったら、
私もまた人間を恨む存在に戻ってしまうかもしれない・・・」

フェニックスは悲しい顔になって、ラリイを見つめた。
ラリイは、そんな親に静かに微笑んだ。

「絶対にフェニをそんな存在になんてさせません。私の中の、
前世の私が、絶対にそんな事を許しはしない。
だから、安心して下さい。ね?フェニ?」
「ラリイ・・・」

フェニックスは、気持ちが抑えきれなくなり、久しぶりに息子を抱きしめた。
ラリイも、いつもは嫌がって逃げるのだが、今回は親のフェニックスを
安心させる為に大人しくした。
フェニックスは心の中で思う。
ラリイは、別に反抗期なんかではなかったのかな・・・と。
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