このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第8章「ザ・ストップ!反抗期!」

「ありえない・・・あの力で呼び出した、ゼイアス・ヴィイングを
倒しただと・・・?
いくら、フェニックス息子であろうとも・・・あれは?!」

デスロードは、竜巻から無事に出て来たラリイを見て、驚愕しながらも、
ラリイの手にあった、アルゥイントを見て、更に驚いた声を上げた。

「フェニックスの息子は、七星具を持っていたのか!
しかも、七星具の中で、最も最高傑作と言われた、
あのアルゥイント・ガルトを?!」

デスロードは、今の今まで、ラリイがアルゥイントを、フィニアが、
シャディヴァを持っていたことに気づいていなかったようだ。
通りで強いわけだと、デスロードは、やっと納得した。
しかし、自分は最後の切り札を使い、もうラリイ達に抵抗する術はない。

「頼む・・・見逃してくれ・・・」

デスロードは、ラリイ達に囲まれて、最後は命乞いをした。
が、ラリイ達がこれを聞き入れるわけがない。
トゥバンが、デスロードに何かを言おうとした時に、急に、
デスロードの前に、黒い靄が現れた。
ラリイ達は、新しい敵かと、瞬時に身構える。
デスロードは、嬉しそうな声で、その黒い靄に助けを求めた。

「ああ!助けに来て下さったのですね!お願いです!
私を助けて下さい!次こそは、必ず!・・・え?」

黒い靄は何も、デスロードには語らず、デスロードの身体が、
徐々に崩れ落ちていくのを静かに見守っていた。
どうやら、黒い靄の存在は、デスロードを助ける気など、全くないらしい。

「ど、どうしてですか?!どうか、お願いです!見捨てないで下さい!
私は、貴方が理想とする世界に賛同しています!絶対に力になります!だから、だから!!」

デスロードは悲痛な声を上げながらも、黒い靄に向かって、必死に懇願する。
ラリイ達は、それを哀れむ気持ちで見ていた。

「もう、お前は使えぬ。あの古代魔法は、不死である貴様でも、
全ての力と引き換えに使う魔法だったのだ。
だから、あの魔法を使った時点で、貴様はこいつらに勝てたとしても、
消える運命だったのよ。」
「そ、そんな・・・」

黒い靄はやっとしゃべったかと思えば、消えかけているデスロードに
残酷な真実しか言わなかった。
しかし、それは自業自得と言うものだ。どんな存在かもわからないモノに頼り、
仲間を裏切り、デスロードになって、罪のない人間を多く殺した。
それから、トゥバン達を殺そうと、あんな危険極まりない、
七大竜の1体をドラゴンゾンビ化して召喚したのだ。
ラリイ達がすぐに倒せたから良かったが、もし、あのまま放置されていたら、
人間界への損害は、もっと大きいものになっていただろう。
最悪は、ディスザード国は滅んでいたかもしれない。
悲しいが、今の聖星団の力だけで、倒すのは困難に近かった。
トゥバンは、ラリイ達が居てくれて、本当に良かったと心底思った。

「巨大な力には、それなりの対価が必要だ。そんなこともわからぬ愚か者を仲間になど出来ぬ。
静かに消えるが良い。お前の今までの働きは無駄ではなかったぞ。」
「い・・・や・・・です・・・やっとここまで・・・k」

デスロードは、最後に寂しがって泣き出しそうな子供みたいな声で、
黒い靄に懇願しながら消えた。崩れた落ちた砂の身体は、
風と共に流れて、消えていった。本当に跡形もなく消えたのだ。
それを見届けた、ラリイ達と黒い靄は、静かに対峙した。
ラリイ達は、いつ戦いになってもいいように身構えていたが、
黒い靄は、ラリイだけをじっと見ていた。
けど、ラリイは自分だけが見られていることには気づいていない。

「永い、永い時をかけ、やっと、その素質に近いものが誕生したか。」
「な、何の事だ?」
「貴様らには関係のないことよ。それに、今はまだ・・・」

黒い靄はラリイの質問に答えず、中途半端な言葉のままで、
スーッと消えた。
ラリイ達は、お互いの顔を見合わせ、困惑するしかなかった。
けれど、これでやっとデスロードの件は解決した。
黒い靄も再び現れることはなかったので、これ以上の戦闘も
避けられ、ラリイ達は安心する。
これ以上の戦いは、流石にラリイ達もきつかったし、
デスロードよりも絶対に強いであろう、あの黒い靄と戦う事に
なったら、勝てる見込みもなかった。

「やっぱり、あの古文書はないみたいですね。」

デスロードを倒した後で、ラリイ達は、例の古文書を探したのだが、
見つからなかった。
また誰かが、その古文書を手にしたら、今回の事件の二の舞に、
なりそうだと危惧して、探し出そうとしたのだが、駄目だった。

「あの黒い靄みたいなのが、古文書を回収したのでは?」
「その可能性は十分にありますね。」
「トゥバンは、その古文書の中身は見たのですか?」
「いえ、中身までは見てないです。ただ、表紙は見ました。
真っ黒で、雰囲気も禁断の書みたいな感じがありましたね。
今思えばですが・・・」
「なら、その情報を聖星団の方でしっかり残した方がいいですね。」
「ええ、そうしようと思います。」

トゥバンとフィニアは、そんな会話をしながら、トゥバンはラリイ達を見送ろうと、
人目のつきにくい場所に案内していた。

「ここから、東に向かってお帰り下さい。そうすれば、ディスザード国の騎士に
見つかることもなく、無事に帰れると思います。」
「いいのか?トゥバン。私達はいなくても?」
「ええ、ラリイ様達は、これ以上、関わらない方が良いかと思います。
ディスザード国の王を始め、騎士達は、あんまり、褒められた存在ではありませんので。
ラリイ様達の事を知れば、何をするかわかりません。
助けて貰った恩を仇で返す確率の方が高そうなので、残念ではありますが、
ここでお別れした方が良いでしょう。」

トゥバンは少し悲しそうな笑顔で、ラリイ達に話した。
トゥバンのような人間もいるのに、それでも、大半はまだまだ、
信用できない人間が多い。
トゥバンの言う通り、先のゴルド騎士団長みたいな人間が多いのも事実だった。

「トゥバン、気遣ってくれて有難う。今回はトゥバンの言葉に甘えることにしよう。」
「何を言いますか!私こそ、ラリイ様達に助けて頂いて、本当に心から感謝しております。
この事は聖星団にしっかり報告し、今度改めて、お礼をさせて貰いますので!」

トゥバンは深々とラリイ達に頭を下げ、感謝した。
イーグルは頭を下げるトゥバンの肩に手を置いて、陽気な声で言う。

「よせよ、トゥバン。ラリイ様はそんなこと望んでない。」
「で、ですが・・・」

トゥバンは、顔を上げ、困った顔でイーグルやラリイとフィニアを見る。

「ラリイ様は、人間界が少しでも良くなればと、思ってしてるだけの事です。
それに、本来の目的は、ご自身の腕試しですからね・・・」
「そ、そうなのですか?」
「そうそう。俺達のラリイ様はな、そんな方なんだよ。
だから、ラリイ様の事に関しては、大層に報告なんかしなくていいぞ?」

イーグルと、フィニアは穏やかにトゥバンに言った。

「いいんですか?ラリイ様?」

トゥバンは、本当にいいの?みたいな顔でラリイを見る。
ラリイも笑顔で「それでいいんだ。」と答えた。
ラリイは今回の事も、誰かに褒め称えられたくてしてるわけではない。
ただ、親であるフェニックスの約束も、守っただけだ。

「アンデットで困っている人間達がいたら、救ってあげて欲しい」

と、過去に言ったフェニックスの言葉を。
6/7ページ
スキ