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第8章「ザ・ストップ!反抗期!」

ラリイ達が協力を申し出たことで、トゥバンは、遠回りな事は
やめて、ラリイ達と直接にデスロードの所に行こうと提案した。
トゥバンは、すでにデスロードのアジトは突き止めてはいたらしいのだが、
ディスザード国側は、トゥバンへの協力を渋っていたようで、
どの騎士団が一緒に行くかなどで、揉めて困っていたらしい。
自分達が困って、聖星団に頼ったのに、実に都合の良い話である。

「虫唾の走る話ですね。助けを求めておいて、それとは。」
「あはは。お恥ずかしい限りです。まだまだ、人間達はこんな感じで。」
「そんな。トゥバンは悪くないですよ。私も言いすぎました。」

フィニアは、トゥバンと会話をして、こんな話をしていた。
フィニアから見れば、自分の種族ではありえない話だったから、
こう言ってしまったのだろう。
人間は、どうしても数が多い分、なかなか一つに纏まらない。
フレン達も、いつももどかしい思いをしているだろうな。と、
ラリイは心の中で思っていた。

「しかし、デスロードなんて、凄そうな名前だけどよ。
そのネクロマンサーは、どうして、そんな奴になってしまったんだ?
前々から、そんな危なそうな奴だったのか?」

イーグルは、トゥバンに今度は敵の事を聞こうとしていた。
ラリイも、もちろん気になっていた。前々から、危なそうな人物なら、
フレン達だって監視してないわけがない。じゃなければ、
こんなに数か所の村が犠牲になるわけがないのだ。
トゥバンのその質問を受けて、表情が暗くなる。

「実は、そのネクロマンサーは、私達、聖星団の仲間になる予定の者だったのです。」
「本当か?トゥバン?」
「はい、ラリイ様。いい腕を持ってる男でした。
将来を、私よりも期待されていたくらいの奴だったのですが・・・」
「なのに、どうして、トゥバン達を裏切ったんだ?」
「それが、ある1冊の古文書を手にしてから、変な事を言い出すようになりまして・・・」
「変な事?」
「はい。自分は選ばれた者だと・・・」
「選ばれた者とは?」
「それが、失われた神皇帝の代行者を蘇らせる任に就いたと。」
「なんだ、それは?」
「私にもさっぱりでして。それから、他の者達は、気でも狂ってしまったのだと、
相手にしなくなりまして・・・聖星団からも、破門されて、
気づいたら、その古文書と一緒に消えておりました。」

トゥバンは、悲しそうな顔で、事情を話した。
トゥバンの表情を見るに、そのネクロマンサーの男とは、
少なからず他人ではないようだ。

「それで、トゥバン達の元から離れ、次に姿を現した時には、
こんな状態だったわけか?」
「はい。実は・・・聖星団にも、連絡は来ていたのです。
今の人間達が、再度、神々の時代をやり直せる為の行動だから、
自分の邪魔はしないでくれと。」
「うーん・・・」
「また、凄い事を・・・」

トゥバンの話を聞いて、ラリイは唸り、イーグルは呆れていた。
人間達が、遥か昔の神々の時代をやり直す為の行動?
ラリイは、それを聞いて、嫌な気分にしかならなかった。
そんな夢物語を、本気にして、今の罪もない人間を大勢殺すことが
許されていいはずがない。
きっと、トゥバン達だって同じ考えのはずだ。

「それで、我々はすぐに動きました。ディスザード国からの要請も
あるのもあったのですが。」
「そうだったんだな。」
「実は、そのネクロマンサーは、ディスザード国出身でもあるので、
だから、この国で活動を始めたのだと思います。
その男は、すでに人間を辞めているでしょう。死者達の王(デスロード)として、
今は、アンデットになってしまってると思います。
アンデットにとって、自分の生まれた国の地は、重要な要素ですから。」

トゥバンは、気持ちを切り替え、敵となってしまった、
元仲間のネクロマンサーの情報をラリイ達にしっかりと伝えた。

「それで、そのネクロマンサー、いや、デスロードは、
ディスザード国内のどこにいる?」
「はい。自分の実家だった場所を拠点にしています。」
「まさか・・・家族も?」
「はい・・・家族も皆殺しにしたみたいです・・・たぶん、
その付近の知り合いも含め、全て・・・」
「酷い事をしますね・・・」

ラリイが危惧したことは当たってしまったようだ。
悔しそうにするトゥバンに、フィニアも同情するように、ボソっと短く言った。
例の古文書を手に入れてから、そんなに人が変わってしまうなど、
一体どんな本だと言うのか。
ラリイは、その古文書の存在も凄く気になった。
場合によっては、オーディンや、ラムウに相談した方がいいと、
ラリイは考えた。
フレンも、きっと同じことを考えるだろう。

「とにかく、急ごう!これ以上の犠牲者は出してはいけない。」
「はい!ラリイ様!それから、イーグル、フィニアも、協力してくれますか?」
「当たり前だ!トゥバン!ラリイ様が行くなら、俺はどんな場所でも行くぜ!」
「私もイーグルと同じです。ラリイ様をお守りするのが、私の使命ですから。」
「ふふ。イーグルも、フィニアも、いつも、それを言うな。」

ラリイは、親友達の言葉につい微笑んでしまう。
自分達は親友なのだからといつも言うのに、いざと言う時は、
こういう態度を取るのだから。嬉しい反面、申し訳ないとも、
ラリイは思っていた。

「ラリイ様は、本当に人望が厚い方ですね。」
「そうか?自分では、そんなつもりはないが。」

トゥバンに羨ましそうに言われて、ラリイは自分の素直に思ったことを返事した。
ラリイは、別に深い考えなどなくて、イーグルやフィニアといる。
親友だから、居心地がいいから、ただ一緒に冒険しているだけだった。
もちろん、イーグルやフィニアが困っているのなら、ラリイだって、
命を懸けて助けたりもする。
が、実際はラリイがそこまでしようとしたら、グリフィンや、
ビスマルクが、ラリイを守りに来てしまうが。
そして、何よりも、フェニックスが、すぐに来るだろう。
フェニックスは、息子が20歳を超えても、ラリイの事は、
今でも深く愛して大事にしている。
最近は、嫁の話などで、ラリイはフェニックスに反抗期気味だが。
それでも、フェニックスの息子への愛は変わらない。
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