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第8章「ザ・ストップ!反抗期!」

「ラリイも成人したし、そろそろ、お嫁さん候補とか考えた方がいいのかな?
ラリイはどう思う?」

ある日の朝食に、フェニックスは息子のラリイに、こんな話題を振る。
ラリイは、20歳になり、立派に成人していた。
性格も、もっと冷静になり、無口な青年へと変わっていたが、
心優しい性格は変わっていない。

「フェニ・・・その話題はまだ早いです。私は、まだ、しばらく結婚する気はないです。」

ラリイは、フェニックスに素っ気なく短く答え、食事を済ませると、
この話題から逃げる為に、さっさとフェニックスの前から、姿を消した。
ラリイ的には、結婚の話題は最も苦手であったのだ。
年頃になったラリイには、多くのお見合い相手が、一気に集中して集まってきた。
バハムートやオーディン、ラムウでさえ、自分の娘か、
または孫娘はどうだ?と、勧めてくるほどに。
フェニックスは、ラリイの意思を尊重し、無理にはお見合いなどさせはしないが、
それでも、さっきみたいに少しは話題に出して、ラリイの意見を聞こうとする。
フェニックス的にも、誰か1人か1体でもいいから、婚約者が
決まってくれればと思っていたのだ。
でないと、フェニックスにも多くの者が、息子のラリイを
婿に、義理の息子に下さいと、せがまれている状況だったのだ。

「ああ、ラリイは今日も逃げちゃいましたか。困りましたね。
私のラリイが、モテモテなのは嫌な気がしませんが。
ラリイには、浮いた話題の1つもないので、逆に少しは不安です。
まさか、誰とも恋愛をしないような子になってしまったら、どうしたら・・・
私はラリイが誰かと結婚して、子供を儲けてくれるのも、凄く楽しみにしているのに・・・
孫が見れないのは、流石に私も寂しいですよ。ラリイ・・・」

フェニックスは、自分しかいない、食堂で悲しく呟くしかなかった。
当のラリイは、今は恋愛よりも、イーグルとフィニアで、人間界を
冒険するのが、何よりも楽しい時期であった。
14歳で、両者と知り合い、あれから、親友になった3人は、
各地に出向いては、悪さをする、存在を懲らしめていたのだ。
それは、人間界だけでなく、時には魔界にさえ行くこともあった。
ラリイのこの行動は、自分の腕試しでしている事であったのだが、
フレン達に感謝もされてる。
人間達の脅威になる存在が、少しでも減るのだから。
フレン達、聖星団から、感謝されてもおかしくはなかったのである。
ラリイは、必要以上に感謝を貰ったりはしないが。

「ラリイ様!今日は何処に行きますか?」
「今日は、ディスザード方面に行きませんか?」

ラリイは日課のように、人間界でイーグル、フィニアと合流すると、
今日は何処に行こうか話し合いをする。
今回はフィニアが、ディスザード方面を勧めてくるので、
ラリイはそちらの方面に行くことを決めて行動を開始した。
フィニアは人魚族ではあったが、今は魔法で人間の姿になっている。
リィヴァシャイン一族は、イーグルと同じで古代種族なので、
他の人魚族と違い、かなりの高い能力がある。
その気になれば、一生人間の姿で、地上で生活が出来るほどの
存在でもあった。
だから、フィニアはラリイと人間界の地上でも冒険に付き合えた。

「フィニアよー何で、今日はディスザード方面なんだ?」

イーグルは、ちょっとつまらなさそうな顔をし、フィニアに聞く。
イーグルとフィニアは、今でこそ、かなり関係が良くなった方だが、
それでも時々変なとこで対立したりもする。
どっちがラリイの相方に最もふさわしいのか。それが理由で。
今日はフィニアの意見が通ったので、イーグルがちょっとだけ、
嫉妬したのだ。

「実は、ディスザード方面で悪い噂を聞いたんだ。」
「悪い噂?どんなのだ?」
「ある村で忽然と村の人間が全員、綺麗に消えたらしい。」
「村の人間が、全員?マジかよ?」
「噂だから、私も正確にはわからんが、その村人が全員消えて、
数日後に別の村で大量のゾンビが現れたと言うんだ。」
「おいおい・・・ゾンビって、それは・・・」
「ネクロマンサー・・・か・・・」
「ええ、そうです。ラリイ様。ネクロマンサーの強敵が、あの方面に
潜んでるかもしれません。村単位で、行動を起こせる程の力を持つ、ネクロマンサーが。」

フィニアは、少し暗い顔になって、イーグルとラリイに答えた。
もし、フィニアの言うような存在がいるのなら、放置しておくのは危険だ。
村単位でゾンビを増やせるのなら、かなりの強敵だろう。
ラリイは、子供の頃から、フェニックスに聞かされたことを思い出す。

「ラリイ。貴方は私の子です。不死系のモンスターで、
苦しめられている人間達が居たら、絶対に助けてあげて下さいね?」

と。ラリイも、フェニックスの言葉には賛成だった。
別に不死系のモンスターでなくとも、ラリイは、腕試しも兼ねて、
幻獣や人間を多く助けて来たつもりではある。
だからこそ、今回も戦うべきだろうと考えてはいた。

「ネクロマンサーですか。これはまた、厄介な敵ですね。
早くに方をつけないと、被害が倍々で増えていきますからね。」
「そうだな。イーグル。アンデットには、先手必勝。
これは、私の師である、オーディンも言っていた。早く対応するほど良いと。」

ラリイ達は、話し合いをしながらも、ディスザード方面に急いで向かった。
ラリイ達は、人間じゃない、森の動物や、種族から、そのネクロマンサーの情報を集める。
イーグルは古代鳥人族なので、鳥達とも会話出来るし、フィニアはフィニアで、
水の精霊の力を借りて、水辺の近くの事なら、何かを聞き出すことも出来た。
生き物にとって、水は貴重なものだから、意外な情報が、結構入ってくるものなのだ。
そうして、情報を集めていくうちに、最初に被害にあったであろう、村がわかった。

「ラリイ様。どうやら、この泉の近くの村で、村の人間達が一斉に消えたらしいです。
ある日、禍々しい巨大な気を感じたと思ったら、それっきり、
村人を一切見なくなったと、水の精霊が言ってます。」
「俺の方も、鳥達が、そう噂してました。」
「じゃあ、決定だな。」

ラリイ達は互いに顔を合わせて、頷く。
フィニアとイーグルの情報を元にして、その例の村に向かう。
村に着くと、ラリイ達は、村の異様な静けさに、警戒心が増す。
油断してはならないと、本能的な危険をラリイ達は感じる。

「嫌な空気ですね。まるで、まだ敵がここにいるような。」
「本当だぜ。これだけ、静かなのに、嫌悪感が半端ない。
しかも、それなりの人数の村人が居たはずなのに、
争ったような形跡も全く無くて、全員が一気に消えたとか・・・」
「相当、出来る相手ですね。そいつは。」
「うん。油断はせずに、ここでも行動すべきだな。」

ラリイ達は慎重に、村の様子を調べることにし、各自で村の中を探索した。

「何か痕跡になりそうなものはあったか?」

ラリイは、イーグルやフィニアに聞くが、どちらも良い答えは返ってこなかった。
ラリイ達が悩んでいると、そこにいきなり数人の騎士のような恰好をした男達が現れ、
ラリイ達を取り囲む。

「なんだお前達は?どこから紛れ込んだ?」

馬に乗った、他の騎士よりは地位が上そうな中年の男は、
ラリイ達を怪しみ、睨んで聞いてきた。どうやら、ラリイ達の
存在を何か疑っているようだ。
ラリイは変に誤解されない為に、その男と慎重に会話をしようと
試みることにした。
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