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第7章「やってみたいお年頃」

「と、言うわけでな、フェニックス。ラリイの社会勉強も兼ねてだから、
ラリイを俺と同行させて欲しいわけだ。」
「で、ですが・・・」

オーディンは、フェニックスが仕事から帰ってきた時間を見計らって、
再度、フェニックスの屋敷を訪ね、ラリイにした話を、フェニックスにもした。
しかし、フェニックスは渋る。やっと、ラリイがしばらくは家に居てくれるのを
喜んでいた矢先だったので、こんな話をオーディンからされるとは思っていなかったのだ。
答えに渋るフェニックスにオーディンは耳元で小声で言う。

「ラリイが心配なのはわかるが、あんまり年頃の息子を無理に閉じ込めると反抗期に
なった時に大変かもしれんぞ?こういう事は、後々に恨まれることにも繋がるしな?」
「?!」

オーディンはフェニックスの心を揺さぶるような事を敢えて言った。
どうせ、フェニックスが最初はいい顔しないのは、オーディンも計算済みだ。
フェニックスの親馬鹿加減を伊達に長年見てきているわけではない。

「フェニ!お願い!僕はフレンに会ってみたい!フェニからも、
小さい頃から聞いてたから!」
「ラリイ・・・」

目をキラキラと輝かせ、可愛い顔でラリイに懇願され、
流石のフェニックスも承諾するしかなかった。

「フェニックス。安心してくれ。俺が絶対にラリイは守るし、
何よりフレンに会うだけだ。然したる危険など、あるわけがない。」
「そうですね。オーディンが同行してくれるのですがら、心配する方が、
オーディンに失礼ですね。わかりました。息子のラリイをどうかよろしくお願いします。」
「うんうん。任せてくれ!な?ラリイ?」
「はい!絶対に、フェニを心配させないです!」
「ふぅ・・・ラリイは、本当にオーディンが好きですね。」

オーディンと仲良くするラリイに、フェニックスは少しオーディンに嫉妬する。
しかし、ラリイがオーディンを慕うのはしょうがないことだ。
ラリイがあの心を閉ざした事件の時に何よりも助けてくれたのは、
このオーディンなのだから。
それに、フレンに会うのが早い分には、確かに悪くない。
ラリイが人間界に今後も行くのなら、いざと言う時に、
フレンの助けが必要なこともあるかもしれないからだ。
フェニックスは、それも認めて、渋々に許した。

「ラリイ、いいですか?絶対に、オーディンの言う事を聞くのですよ?
それから、絶対に前回のような無理はしてはいけません。わかりましたか?」
「フェニ・・・もう、それ10回ほど、聞きました。」

オーディンとフレンに会いに行く日の朝に、ラリイは耳に
タコが出来そうなくらいに、フェニックスから、注意を受けていた。
フェニックスは念入りに、ラリイの出掛ける準備を手伝い、
オーディンにラリイを託した。
オーディンは、フェニックスの相変わらずぶりのラリイへの溺愛に、
ラリイに内心、同情する。

「ラリイも毎度、大変だな。あんなに愛されていると。」
「いつもの事なので、慣れました。」
「そうか。この調子じゃ、年頃になって、今度はラリイに、
彼女でも出来たら、きっともっと大騒ぎだろうな。」
「げほげほ!!」
「大丈夫か?ラリイ?」
「は、はい・・・」

オーディンに彼女などと言われて、ラリイはつい動揺して、咽込んだ。
確かに、今後、もし自分に好きな人が出来たら、あの親の事だから、
かなり大騒ぎするだろう。それを考えるとラリイは、何故か
恐怖に近い何かを感じてしまう。
ラリイは、怖い思いをしたくなくて、今は無理に考えない事にした。
このやり取りの後で、ラリイ達は、1時間もかからないうちに、フレンと無事に出会う。
この頃のフレンは、外見こそ若々しいが、年齢は50近くになっていた。

「フレン!久しぶりだな!」
「オーディン!お久しぶりです!お元気そうですね!」
「ああ!俺はいつでも元気だぞ!そうだ、今日はな!
お前に会わせたい奴が居たので連れて来てやったぞ!」
「おお!誰ですか?」

オーディンはラリイをフレンの目の前に立たせた。
ラリイは緊張したが、フレンは笑顔でラリイを見ていた。
そして、ハッとした顔になり、ラリイをマジマジと見ると、
まさか!と言う顔になる。

「もしかして、この子は、あのフェニックス様の子の?!」
「そうだ!あの赤ん坊だったラリイだ!」
「おおお!こんなに、立派になられて♪ラリイ様!大変にお久しぶりですね♪」

フレンは暖かい笑顔でラリイを見つめる。ラリイは、
そんなフレンの笑顔に人柄の良さをすぐに感じた。
ラリイは急いで、自分もフレンに挨拶をする。

「あ、あのう、改めて初めまして!フェニックスの息子のラリイです。
こうして、お会い出来て光栄です!」
「あはは!そうですよね。ラリイ様はまだ赤ん坊でしたから、俺の事は
覚えてませんよね。これは失礼!俺はフレンです。
ラリイ様、よく会いに来てくれましたね♪」

フレンはラリイに手を差し出し、ラリイもフレンの手を素直に握り、握手を交わす。
フレンの手は外見に似合わず、とても逞しいものだった。

「フレン!聞いてくれ!このラリイはな!あのヒュドラと人生で初めての戦いで勝負し、
しかも、無事に倒したんだぞ!どうだ!凄い子だろ?!」
「な、なんと!我々がどう倒そうか、苦労し悩んでいた、あのヒュドラをですか?!」
「そうだ!優秀な子だろ?」
「なんか、そんな言い方をされると、まるでオーディンの子みたいですね。」
「そうだな、このラリイは俺の可愛い教え子でもあるからな!
可愛い存在であるのは違いがないな!ははは!」

オーディンはフレンにラリイを自慢し、大笑いをしている。
フェニックスがもしこの場に居たら、笑顔でピキっと怒りマークを
出していたかもしれない。
ラリイは、心の中でフェニックスがこの場にいなくて良かったと思った。

「ところで、フレン。あの問題は解決したのか?」

ラリイ達は、フレンの案内で聖星団の一室で対談していた。
オーディンはある事を思い出し、フレンにそれを聞いている。

「それが・・・なかなか上手く行かなくてですね・・・」
「やっぱり、リィヴァシャイン族は、あの件を許しそうにないか?」
「はい。我々も何度も謝罪をしているのですが、聞き入れてくれない状況なので、
どうにも出来ない状態です。」
「そうか・・・それは困ったな。あの一族は、仲間になってくれるなら、
心強いが、今後、敵に回るようなことになれば、厄介だぞ?」
「ですよね・・・」

オーディン達が何やら真剣に話し込んでいる。
ラリイは何の話かわからずに、ただ静かに黙って見守っていた。
そこへ、オーディンと目が合い、オーディンはラリイの顔を
じーっと見ると、もしかしたら?!と言う顔をする。

「おい!フレン!もしかしたら、このラリイが、この問題の解決口に
なってくれるかもしれないぞ!」
「え?ラリイ様がですか?」
「そうだとも!ラリイは、未来も有望な若者だ。それに、性格も素直で優しい子だ。
あの堅物のビスマルクも、ラリイの話なら聞くかもしれん!」

ラリイは、勝手にオーディンに期待され、何がなんだかわからずじまいであった。
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