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第6章「悩ましき自立心?」

「ラリイ!しっかり!しっかりなさい!ラリイ!!」

イーグルからラリイを急いで引き取ったフェニックスは、ラリイの状態を確認する。
緊急事態だと感じたフェニックスは、その場でラリイの応急処置を開始した。
まず、ヒュドラに噛まれたラリイの身体の一部分を火の魔法で熱消毒し、
それから、ラリイと自分の気の流れを合わせ、ラリイの免疫力を最大にまで高める。
そして、最後には、持てる限りの魔力を使い、名もなき生命の精霊に力を借り、
最大級の回復魔法を息子のラリイに丹念に掛けた。
おかげで、早急な処置もあり、ラリイは一命を取り留めることが出来た。
これは、フェニックスとラリイの親子であったからこそ出来た奇跡である。

「ああ、私の愛しいラリイ。あんなヒュドラなんて、毒蛇ごときの低俗な毒なんぞに、
負けてはなりません!貴方は私の大事な大事な子・・・
私を置いていくなんて・・・絶対に許しませんよ・・・ラリイ。」

フェニックスは周りが恐怖を感じるほどに、ラリイを溺愛している。
イーグルは、恐怖のあまり口が聞けず。
グリフィンでさえも、冷や汗を搔いていた。
その後、ラリイは後日にこの話を聞くことになるが、怒りが収まらないフェニックスは、
気絶しているラリイを一時的にグリフィンに託すと、ヒュドラの首が、
まだいるであろう洞窟に入り、何度も凄い音と共に、ヒュドラに壮絶な悲鳴を上げさせ、
最後には冷酷な笑顔で帰ってきたと言う。

「グリフィン。安心して下さい。ヒュドラは、今後もう二度と、
絶対に貴方に「迷惑は掛けない」と、誓わせて来ましたから♪」
「あ、有難うございます。フェニックス様・・・」

フェニックスの背筋も凍るような恐ろしい笑顔に、流石のグリフィンも、
余計なことは聞けなかったと言う。
それから、「辺りを「掃除」してきます♪」と言ったフェニックスは、
逃げたヒュドラの眷属達を悉くに排除したとも言う。
その時帰ってきたフェニックスは、小声でこんな事を言ったらしい。

「冷酷だった当時の私に戻すような事を、するから悪いのですよ・・・
ククク・・・」

と。
これを物陰で聞いてしまったイーグルは、しばらく悪夢を見ることになったらしい。
ラリイは、悪夢にうなされることになったイーグルに、
物凄く同情してあげた。
こうして、何はともあれ、グリフィンとエイシェントバードズ達は、
自分達の森と里を無事に守ることが出来た。
ラリイは状態が状態な為に、目を覚ますまで、エイシェントバードズ達の里で
安静にさせて貰うことになった。
その間に、フェニックスはグリフィンから、事の顛末を全て聞かされる。

「私のラリイは本当に、何て良い子に育ったのでしょうか?♥
グリフィンに会いたいばかりか、すぐに手助けを申し入れるなんて♥♥♥」
「フェニックス様・・・本当に申し訳ない限りです。
わしが絶対に命を懸けて守ると誓ったのに・・・」
「グリフィン。そんなに自分を責めないで下さい。私のラリイは、
こうして無事だったのです。グリフィンの事を、そうしてまで助けたいと
思ったラリイの気持ちを、どうか遠慮なく受け取ってやって下さい。」
「フェニックス様・・・有難うございます。有難うございます。」

グリフィンは、薄っすらと泣きながら、フェニックスに何度も頭を下げて感謝した。
フェニックスは穏やかな笑顔でグリフィンの肩をポンポンと叩く。
まるで優しく慰めるように。

「しかし、流石!我が子ラリイですね♥いきなり、あのヒュドラと戦うとは♥
そして、見事に勝ち、私の大事な友の貴方を救うとは♥
最後は爪が甘かったですが、それはそれで、
ラリイは、まだまだ子供ですから♥そんな未熟なとこも可愛いと言うか♥♥♥」
「あはは。そうですな、フェニックス様。ラリイ様のご成長は
まだまだこれからです!きっと、将来は幻獣王にさえなられるかもしれませんな!」
「ラリイが幻獣王にですか?!そうですね・・・もしラリイが今後それを望むのなら・・・
私はラリイの親としてでなく、このまま、三大重臣として愛しの息子に
仕えることが出来るわけですか・・・♥♥♥」

グリフィンの言葉に、フェニックスは遠い未来を勝手に想像して、昇天しかけていた。
こんな状態になってしまったフェニックスに、グリフィンも微笑まずにはいられなかった。
翌朝、ラリイは無事に目を覚まし、フェニックスがやっぱり
自分を迎えに来ていたことを知る。

「もう!ラリイ!貴方と言う子は!私がどんなに心配したか!
わかっているのですか!!!」

フェニックスは、表面では怒った振りをするが、内心は昨日と同じで、喜びが隠せずにいた。
フェニックスは、問答無用でラリイを抱きしめ、頬のスリスリをラリイにする。
ラリイは、恥ずかしいと嫌がるが、フェニックスは、今日ばかりは絶対に止めなかった。

「駄目です!貴方は、昨日死にかけたんですからね?!
もし、ラリイを失うなんて事になったら、私がどんな事になっていたか!反省しなさい!!」
「あうぅううう?!」

ラリイは更に激しくフェニックスの愛情を受けることになってしまった。
これには、グリフィンもイーグル達も笑っていた。
この後、2時間程経った頃に、ラリイの体調がすっかり大丈夫だと
分かったフェニックスは、ラリイと一緒に幻獣界へと帰る。
別れ際に、グリフィンとイーグルはラリイに再度深く感謝した。

「ラリイ様。本当に有難うございました。フェニックス様と
同じように、我々は今後、ラリイ様に何かあれば、全力で力になりましょう。」
「ラリイ様。俺も、心から感謝致します。ラリイ様が、
今後も人間界に来ることがあれば、俺をお供にお加え下さい。
どこまでもお付き合いし、守らせて頂ければと思います。」

2匹の熱い感謝の言葉に、ラリイは泣きそうになった。
それに気づいたフェニックスは、ラリイの側に来て、ラリイの肩に手を乗せ頷いてみせる。
ちゃんと、その言葉に答えなさいと。

「グリフィン。そして、イーグル。私達は今後も大事な友です。
困った時はお互い様です!だから、これからも、どうぞよろしくお願いします♪」

ラリイは元気な笑顔で、グリフィン達に答えた。
ラリイの回答に、エイシェントバードズ達が歓喜の声を上げる。
ラリイ達は暖かい見送りを受け、幻獣界へ帰ることになった。
フェニックスはラリイの横顔を見ながら思う。

(今回の事で、ラリイはきっと大きく成長しましたね。
この調子でいくと、私から早く自立したいなどと言うかもしれませんね?
困りました。成長してくれるのは、嬉しいですが・・・
巣立ちを許す気は当分ないですからねぇ・・・
けど、そこは、追い追い悩むことにしましょうか。ふふふ。)

フェニックスはラリイと一緒に最高の気分で人間界を後にしたのだった。

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