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プロローグ

フェニックスは、ラムウにさっきの話を伝えに、最近、
ラムウがよくいると言う、魔法院を訪ねた。
魔法院は作られたばかりなのもあってか、外観も内部も、とても美しい場所だった。
何より幻獣にとって環境が良いように整備されている。
そうした、魔法陣などを、この場所に施してあるのだろう。
ラムウはオーディンよりも、古代魔法や、自然の摂理などにも詳しい幻獣だ。
エンガイスと言う世界にいる幻獣達の中で、1,2位を
争うほどの長生きな幻獣でもある。
昔に神々の時代があったとされる時代よりも、昔から、ラムウは
すでに存在していたとの噂もあるほどだった。

「さて、ラムウは、今回の私の話を聞いてくれるでしょうか・・・
人間の持ち込んだ話ですから、心配ですが・・・」

フェニックスは、小さい声で独り言を言いつつ、ラムウの居る、一室に向かった。
ラムウの居た部屋は、何やら研究室のようであった。
試験管やら、ビーカーが並び、書類の束がいっぱいある机の前に
座り、何やら、1つの石をじっと見つめていた。
どうやら、フェニックスが訪ねて来たことに、まだ気づいていない様子だ。

「これが・・・あの幻獣石か。幻獣そのものを、魔石に変え、
その幻獣の意思も関係なく、その幻獣の持つ力を使う事が出来るようにする、
我ら幻獣にとって忌まわしき禁忌魔法。人間め・・・
こんな魔法を考えおって・・・」
「ラムウ?失礼します。フェニックスですが・・・」

何やら、ラムウは小さい声で呟いていたが、フェニックスは、申し訳ないと思いつつも声を掛けた。
ラムウは、突然声を掛けられ、驚いた顔をしたが、すぐに真顔に
戻り、フェニックスを軽く睨んだ。

「フェニックスか・・・老いた幻獣を、驚かすのは感心せぬな。」
「すいません。どうしても、お話しなければならない事態が
起きたので、お伺いしたのです。」
「うぬ・・・ならば、仕方がない。」

ラムウは、じっと見ていた石を、静かに机に戻し、フェニックスと
椅子に座ったままで対峙した。

「悪いが、わしは座ったままで失礼するが、良いかね?」
「はい。どうぞ、そのままで、聞いて頂ければ。」
「で?話とは何か?」
「実は、つい先ほど、人間界から、変わった人間が訪問に来まして。」
「ほう?人間が?」
「はい。リヴァイアサンから紹介されて、幻獣界に来たそうで、
自分の作る組織に、我々、幻獣界に協力して欲しいと言うのです。」
「あのリヴァイアサンが、人間にこの幻獣界を紹介しただと?」

ラムウも、やはりその事には、驚いた様子だった。
だが、すぐに不穏な空気に変わる。ラムウにとっては、気持ちの
良い話ではない。今は超絶人間嫌い中なのだから。
一気に機嫌が悪くなったとしても仕方がない話だった。

「いくら、リヴァイアサンとは言え、そう気軽に人間に、
この幻獣界を教えるのは、どうなのだ?我々で取り決めた、
約束を破るつもりか?」

ラムウは険しく、厳しい顔でフェニックスにそう言う。
こうなることは、フェニックスには、もうわかっていた。
絶対に、今のラムウでは、人間が関わると気分を害して、
いい話し合いにはならないだろうと。

「ラムウ。言いたい事は、わかります。でも、その人間は、
今後、人間界から大戦争を無くしたいと言っています。
そして、我々の幻獣界との繋がりを大事にしたいと。」
「つまりは、今後は幻獣を使った、人間の戦争は辞めさせたいと?」
「私は、そういう話なのではないかと思ってます。」
「・・・・・・」

ラムウは黙り、考え込んだ。そういう話であるのなら、人間嫌いのラムウであっても、
興味があるのではないかと、フェニックスは思ったのだ。
今後の幻獣界においても、決して無駄な話ではない。
その人間との話で、何か大きな事が決まりそうでもあった。
だから、尚更に三大重臣の1体でもあるラムウにも、参加して欲しかった。
しばらくの沈黙が続く、フェニックスはただ静かにラムウの返答を待った。

「わしも参加しよう・・・ただ、人間の前に実体を見せるのだけは、嫌じゃ。
だから、使い魔を通しての参加だが、それでも良いか?」
「はい。それでも、参加して頂けるのなら、私はそれで。」
「なら、その人間との話し合いが開始されたら、わしに知らせをくれ。」
「承知しました。ラムウ。では、これで失礼します。」
「うむ。連絡、感謝する。」

ラムウは、話が終わると、さっきまでの不機嫌な態度を普通に戻し、
フェニックスに、お礼を告げる。
人間が関わる話が嫌いなだけで、それ以外では、別に厳かな
雰囲気はあっても、ラムウは穏やかなものであった。
人間以外であれば、ラムウは昔の様に寛大ですらある。
フェニックスには、それが何故か寂しかった。
ラムウは長生きなだけあって、人間に関する知識も、実は、
どの幻獣よりも詳しいはずなのだ。
けれど、今は人間を憎んでいるので、その知識が良い方向に
使われる可能性は低い。
いつか、人間と和解して欲しいと、フェニックスは心の中で、
人間達に代わって切に願っていた。
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