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第6章「悩ましき自立心?」

ラリイは、朝食後に無理にルリから、イーグル達の居場所を聞き出し、
その場所に向かった。
あの優しそうなグリフィンも、今は難しい顔をしながらも、
エイシェントバードズ達と戦いの準備をしているところであった。
そこにラリイが来たので、グリフィンは驚く。

「ラリイ様?!何故、このような場所に!いけませんぞ!
すぐに里にお帰り下さい!
ここはいつ危険な場所になるかわからぬ場所です!」

グリフィンは、ラリイであっても、やや厳しい口調で、里に帰るように促す。
しかし、ラリイは、首を横に振り、拒否をした。

「いいや。グリフィン。私は、グリフィン達の手助けをしたいと思って来たんだ。」
「しかし、ラリイ様に、もしもの事があれば、わしはフェニックス様に
顔向けが出来ませぬ。」
「それは心配不要です。逆にフェニだったら、絶対にグリフィンの手助けをしろと言うはずです。
フェニは話してました。いつか、私が人間界に行き、その時にグリフィンが
困っていたら、自分の代わりに助けて欲しいと。」
「フェニックス様が・・・そんな事を・・・」

グリフィンはラリイの言葉を聞いて、目を見開いていた。
そんなことを託されていたなど、グリフィンも知る由はない。
グリフィンは、ラリイの力強い眼差しに、甘えることにした。

「ラリイ様・・・有難うございます。ですが、危険だと感じたら、
すぐにお逃げ下され。それだけは、どうかお約束を。」
「わかった。その時は絶対に逃げると誓う。」

ラリイはグリフィンに余計な心配をさせない為にも、すぐに承諾した。
そして、ラリイの護衛の為に、グリフィンはイーグルをつけることにした。
イーグルは気まずそうにしながら、ラリイの側にいる。
イーグルは、あの後で、すぐにラリイに謝罪し、許されはしたものの、
ラリイに行った自分の無礼を許せなかった。自分自身を。
その為に、ラリイに素直になれなかった。

「あの・・・ラリイ様?」
「ん?どうした?」
「どうして、俺達を助けようとするんです?ラリイ様には関係ないことなのでは・・・?」

イーグルは、悪いと思いながらも、ラリイにこっそりと聞く。
ラリイが手助けしてくれるなら、これほど心強いことはないと、
わかりきっているのに。
ラリイは、そんなイーグルに嫌味なく笑う。

「私はもう無関係なわけじゃない。グリフィンとは、フェニを通じて、
私の大事な友になったわけだし、そのグリフィンが大事にしている、
エイシェントバードズの皆も大事な存在だ。それを助けたいと
思うのはおかしいことか?」

ラリイは笑顔でイーグルに質問し返した。
イーグルは、ラリイがここまで思っていてくれたことに感謝しながら、
自分した質問に情けなさを感じた。
自分よりも年下のラリイの方がよっぽど大人だったのだ。

「すいません。ラリイ様。俺は愚か者です。どうか、お許しを。」

イーグルは膝を折り、ラリイに頭を下げて、忠誠を誓う体制を取る。
ラリイは、そんなイーグルの肩に手を乗せ、イーグルに言う。

「そんなことは必要ないよ。イーグル。良かったら、今後も、私の良き友になって欲しい。
だから、こんな堅苦しいことは止めよう!」
「ラリイ様・・・貴方と言う方は・・・」

イーグルは微笑むラリイを見て、少し感動してしまった。
そして、誓った。絶対にラリイを命がけで守ろうと。
それは、母のルリも大いに望んでいることだろうとも思った。
このやり取りの後で、ラリイはグリフィンから、今の状況を、
詳しく教えて貰う。

「我らが里を襲おうとしている魔族どもは、人間界を攻める為の足掛かりに、
まずはこの森を拠点にしようと考えているようです。」
「その為に、グリフィン達を邪魔者だと考えたわけか。」
「そのようですじゃ。我々がいなくなれば、この森を自分達のモノにするのは
簡単だと考えたのでしょう。実に愚かな事ですが。」
「そうだな。グリフィンとエイシェントバードズ達の力を、
甘く見ているとしか思えない。」

ラリイは、敵の魔族の浅はかな考えに、つい頬を緩めた。
いくら、魔族側に何か勝算があるにしても、この森を知り尽くした
グリフィンやエイシェントバードズ達が本気になったら、
どれほど怖い存在かをちゃんと考えているのだろうか?
しかも、エイシェントバードズ達は古代から存在している種族だ。
その力は並み大抵の鳥人族とは、格が違う。
同じ鳥人と甘く見ているのなら、きっと大打撃を受けることだろう。
ラリイは考えられる限りの事を考え、オーディンに
教わったことも思い出しながら、敵の襲撃に備える。
森に様々な罠を仕掛け、里の周りにも強固な守りの結界をグリフィンと一緒に張る。
オーディンに教わった事をラリイが話す度に、グリフィン達は感心する。

「長!今後は、その対策も我らの里に取り入れましょう!」

イーグルは興奮気味に、グリフィンに提案しているくらいだった。
グリフィンも、うむうむと素直に頷く。

「ラリイ様が、こうして、里に来て下さったのは、何かの導きかもしれませんな。」

グリフィンは、険しかった顔を少しだけ緩め、ラリイにそう微笑んだ。
ラリイも、少しでもグリフィン達の役に立ててると実感し、嬉しかった。
そして、その日の夜に、タイミング良く、敵が襲撃を仕掛けてきた。
エイシェントバードズ達は、指示された通りに素早く動き、
グリフィンの指示の下で、すぐに敵の魔族の指揮官を捕えた。
エイシェントバードズ達は、多少の軽度の怪我人を出しただけで済み、
里の者達は一同に安堵し、ラリイも事なきを得て、胸を撫で下した。
そして、敵の指揮官の尋問にラリイも付き合う事にする。
敵側の魔族の指揮官は、ナーガ系だった。鳥は蛇に弱いとでも思ったのだろうか?
敵の指揮官は悔しそうにグリフィン達を睨んでいた。

「こんなにまで、用意周到に準備するとはな。油断したわ。
小賢しい雛鳥どもめ。」

敵の指揮官は、そう皮肉を言いながらも、グリフィン達を見下していた。
それに怒りを感じたイーグルは、敵の指揮官の尻尾に容赦なく、槍を突き刺し1度黙らせる。

「ぐぅうう・・・」
「よせ、イーグル。愚か者の戯言に反応するでない。」

グリフィンはやんわりとイーグルの行動を止める。
だが、それは本心でないことが誰の目からも、わかる事だった。
グリフィンの目にも、冷酷さが宿っていたのだから。
里を危険に晒す者に、慈悲などありはしない。

「お主の親玉は誰だ?素直に話せ。そうすれば、命ばかりは助けよう。」
「ふん・・・誰がお前らみたいな鳥どものに教えるもの・・・がぁああああ!!!」

懲りずに悪態をつく、敵の指揮官に、他のエイシェントバードズ達も、
容赦なく致命傷を避けて、槍で攻撃を開始する。
残酷な行為であるが、仕方がない。彼らだって、守るべき家族があるのだ。
ラリイは、その光景を、目を逸らさずに、しっかりと胸に留めた。
これが戦いだと言う事を知る為に。
数十分後に、敵の指揮官は、何とか自分の親玉の情報を吐いた。
グリフィンは里の者達に、敵の指揮官の手当てを命じる。
グリフィンは、ちゃんと約束を果たしたのだ。命までは奪わないと。
しかし、敵側をその行動に逆上し、更に激しい戦いを強いてくる
結果となってしまった。
魔族側からすれば、プライドを傷つけられたのだ。
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