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第6章「悩ましき自立心?」

グリフィンは優しい眼差しでラリイを見ている。
ラリイは、話が分かって貰えそうな存在が来てくれて、安堵した。

「ラリイ様。どうか、我が里の者達の無礼をお許し下さい。
最近、魔族との戦いが続いていた為に無用に殺気立っておったのです。
そのイーグルめも、若いが故に先走ってしまったようで・・・
どうか、このわしに免じてお許しを・・・」

グリフィンは深々と頭を下げて、ラリイに許しを請う。
ラリイも静かに微笑んで、グリフィンに言った。

「いや、私は何も怒っていない。私も軽率だったんだ。
グリフィン。頭を上げて下さい。謝る必要なんてない。」

ラリイは、イーグルに使った魔法をすぐに消した。
イーグルは炎の檻から解放されて、すぐにグリフィンの存在に気づき、ラリイと見比べた。
このラリイ達の関係を見て、イーグルはラリイが嘘をついていなかったのだと、わかった。
イーグルはグリフィンに、凄い剣幕で睨まれる。

「全く、お前は、父親と違い、とんだ恥晒し者じゃ。ラリイ様が
お優しかったから良かったものを。
そうでなければ、お前なぞ、すぐに丸焼きにされておっただろうよ。」
「ですが・・・長・・・その者の気は只者では・・・」
「この大馬鹿者がぁあああ!!!」

イーグルが言い訳をしようとすると、グリフィンは大声で怒鳴った。
ラリイは、それにビックリした顔をする。
イーグルも、ビクッと身体を震わせて、グリフィンを怖がっている。

「お前は魔族の気と高貴な方の気の違いもわからんのか!
この方は、我らが里に恩あるお方、フェニックス様のご子息のラリイ様だぞ!
それをよりにもよって、魔族と間違えるなど!わしは、
フェニックス様に死んでも詫びきれぬわ!!!」

グリフィンはここぞとばかりにイーグルを叱る。
イーグルはすいませんでしたと、連呼するばかりであった。
この様子を見るに、イーグルは普段から、何かやらかしては、
グリフィンに怒られてるようだった。
ラリイはそう感じて、少し笑ってしまった。

「ラリイ様。どうか、ラリイ様にしてしまった無礼を、再度、里で謝罪させて下さいませ。
それに傷の手当てに、服も新調せねば。」
「グリフィン。有難うございます。実は、グリフィンに会いたいと思って、
今日はこの森に来たんです。」
「なんと!!そうだったのですか!それなのに、里の者は、
何たる無礼を・・・本当にお恥ずかしい限りですじゃ。」

グリフィンはラリイの言葉を聞き、喜んだ反面、また罪悪感を感じたようだ。
自分が一早く、ラリイの気に気づければ、こんな失態を犯すことはなかったと。
ラリイは、そんなグリフィンが気の毒に思い、グリフィンの側に
近寄り、グリフィンの手を取った。

「グリフィン。そんなに気にしないで下さい。こうして、無事にグリフィンと会えて、
私は凄く嬉しいです。だから、悲しい顔をしないで。
フェニと親しい貴方をこれ以上は悲しませたくないです。」
「ラリイ様・・・なんてお優しい。本当、フェニックス様に会っているかのようです。」

グリフィンは、ラリイの中にフェニックスを感じ、喜んでいる。
ラリイはグリフィンに丁寧に案内され、エイシェントバードズ達の里に再び来ていた。
そこへ、今のイーグルの母親で、過去に赤ん坊のラリイの世話を
していた、
ルリが顔を出す。ルリはすっかり、中年のそれでも美しい大人の女性になっていた。
少し涙ぐみながらも、ラリイと再会を果たした。
幻獣界と人間界では、少し時間の流れが違うことがある。
人間界の方が時の進み方が早いのだ。
だから、ラリイが赤ん坊でこの里に来て以来、この時には2倍近くの歳月が経っていた。

「ラリイ様。本当にご立派になられて。夫も生きていたら、きっと喜んだことでしょう。
それなのに、まさか我が子のイーグルが、ラリイ様に槍を向けたなんて、
本当に申し訳ない限りです。どうか、ラリイ様。愚かな息子の所業をお許し下さい。」

ルリは、泣きながらラリイに謝罪している。ラリイは、困った顔をしながらも、ルリに優しく答えた。

「泣かないでルリ。私は赤ん坊だったから、記憶がないけど、
貴女の事はフェニから聞いてます。私の面倒を見てくれた存在だと。
そんな恩義ある貴女を私は悲しませたりしない。イーグルは、
立派に里を守ろうとしただけです。だから、私は何もイーグルを
怒ったりなんかしてない。なので安心して?」
「ラリイ様・・・有難うございます。」

ルリは感極まって、ラリイを優しく抱きしめていた。
ラリイは、少し驚いたものの、まるで母親に抱きしめられているみたいで、少し嬉しかった。
フェニックスとは、また違う優しさをルリから感じる。
グリフィンもそんなラリイ達のやり取りを微笑みながら見守っていた。
それから、ラリイは今日は里に泊まることとなった。
グリフィンと積もる話が沢山あったのと、グリフィンが自分を
訪ねて来てくれた、ラリイをすぐに手放したくなかったのだ。
ラリイから、今のフェニックスの話を聞けるのも何より楽しい。

「ほほほ。何とも、フェニックス様らしい。ラリイ様とこの里に、
いらした時にも、あの喜びようでしたからな。」
「フェニは、どこでもそんな感じだったんですね。」

グリフィンから、その当時のフェニックス話を聞き、ラリイは、
呆れるばかりであった。
どれだけ、周りに親馬鹿のアピールしていたことやら。
幻獣界では、あまり聞けない話にラリイも、苦笑いばかりだ。
その日は、色々な話で盛り上がったラリイは、すっかり、
グリフィンとも仲良くなり、今後も世話になることになる。

「ラリイ様。おはようございます。昨日は良く寝られましたか?」

翌日、ラリイは、深夜までグリフィンと話した後に深い眠りに
落ち、昼近くまで寝てしまっていた。
ラリイが起きて、グリフィンを探そうとすると、ルリがすぐに対応し、
ラリイに遅めの朝食を用意してくれた。ラリイはそれを喜んで食す。
まるで実家に帰ってきたような安心感を感じた。

「うふふ。ラリイ様は赤ちゃんの頃も、そのメニューがお好きでしたね。」
「そうなのか?」
「はい♪あの時も喜んで食べて下さいました。
それをフェニックス様に言ったら、ぜひ、そのレシピを教えて欲しいと、言われたものです♪」

ルリはその時の事を思い出したのか、笑顔でラリイに教えた。
ラリイは、急に恥ずかしくなり、顔を赤くしてしまった。

「フェニは・・・相変わらずなんだから・・・」

ラリイは、そう言いながらも、少しだけフェニックスが恋しくなった。
けれども、グリフィンの気配を感じることがないのに、疑問を
感じ、ラリイはルリに尋ねた。

「グリフィンはどうしたの?何かあったの?」

ラリイの質問に、ルリは少し顔を暗くする。少し答えにくい質問だったようだ。
ルリは少し考えた後にラリイに答える。

「実は、イーグル達と一緒に、魔族との戦いに備えています。
近々、この里を襲ってくるのではと、噂がありまして。」

ラリイは、それを聞いて、他人事ではないと感じた。
出来るのなら、グリフィン達を助けたいと強く思った。
その思いに答えるように、ラリイの腰にあるアルゥイントが、
淡く輝いている。
そうするべきだと言うのように。
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