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第6章「悩ましき自立心?」

ラリイは、あれから14歳にまで成長した。
剣の腕もさることながら、魔法もかなり上達していた。
そのおかげもあり、人間界へ1人で遊びにまで行けるまでになっていた。
今のラリイからすれば、幻獣界にいるよりも、人間界に居た方が、
心地良さえある。
昔よりは、人間嫌いの幻獣達の嫌がらせも減ったとは言え、
全く無くなったわけではない。
だから、変に争いになる前に、ラリイが人間界に行ってしまえば、
そうした揉め事に巻き込まれないで済むのだ。
フェニックスも、ラリイが人間界にすぐ行ってしまうことを悲しんではいるのだが、
その方がラリイには良いならと、しょうがなく許していた。
ラリイへ向けられる悪意が、それで回避出来るのなら、悪くないと。

「ラリイは、今日も人間界に行ってしまったのですね・・・」

フェニックスは屋敷の窓の外を見て、愛しいラリイの事を想う。
時が過ぎるのは早いなとも、思わずにはいられない。
ラリイが14歳の誕生日を迎えた日の事をフェニックスは思い出す。

「ラリイ。今日はお誕生日おめでとうございます♥♥♥」
「有難うございます。フェニ。」

ラリイが誕生日を迎えた朝に、フェニックスは、あのアルゥイントを出してきて、
ラリイに大切に手渡した。

「ラリイ。今日から、この剣は貴方の物です。オーディンもラリイの剣の腕を認め、
この剣を託しても大丈夫だろうと言ってくれました。なので、
私も貴方にこの大事な剣を託そうと思います。
前世のラリイも、きっと喜んでくれるでしょう。だから、
どうか、大事にして下さいね?ラリイ♥」
「わかりました。絶対に大事にします。」

普段はなかなか笑う事がない、ラリイもこの日は久しぶりに
可愛い笑顔をフェニックスに見せた。
フェニックスは、どうにも我慢が出来ずにラリイを抱きしめる。
ラリイはびっくりするものの、いつもの事なので、フェニックスの熱い抱擁を受け入れる。
誕生日の今日は、フェニックスの愛情を素直に受け入れるのも、
悪くないとラリイは思ったのだ。
照れくさい歳にはなっていたが。

「ああーラリイ♥どんなに成長しようとも!♥
貴方は私の大事な大事な愛しい息子です♥
今後も、どうか健やかに成長して下さいね♥
後、無茶したりしたら、駄目ですからね?♥♥♥」
「フェニ・・・わかりましたから・・・」

ラリイは恥ずかしさのあまりに、苦笑いして、フェニックスの抱擁を受けていた。
アルゥイントはそんな親子の関係を楽しむかのように、淡い輝きを放っていた。
アルゥイントも喜んでいたのだ。転生したとは言え、
ラリイとまた出会えたことを。
アルゥイントを託された事で、ラリイは今まで以上の強さを持つことになった。
今のラリイは、前世のラリイよりも、もっとアルゥイントを上手に扱えた。
それもあるから、フェニックスはラリイが人間界に1人で
行っても大丈夫だろうと、安心していた部分もある。
アルゥイントほど、ラリイを損得なしで守ってくれる存在もないだろう。武器と言え。

「ラリイ・・・遊びに行くのはいいのですが。あんまり、
長居はしないで下さいね・・・私も寂しいんですから。」

本音を言えば、フェニックスは、自分も一緒にラリイと人間界に行きたかった。
なんだかんだ、フェニックスがラリイと一緒に人間界に行けたのは、
ラリイが赤ちゃんだった、あの時にしかない。
あれ以降は、仕事の忙しさなどもあり、ゆっくりラリイと
人間界に行くことは出来なかったのだ。
そんな寂しがってるフェニックスの気持ちも知らず、ラリイは、
人間界の様々な場所の自然を楽しんでいた。

「そうだ。今日は最初にイルルのとこに行こう。」

1人で人間界に行くようになったラリイは、すっかりイルルヤンカシュを慕い、
時間があれば、訪ねるようになっていた。
イルルヤンカシュの方も友である、フェニックスの息子のラリイを気に入っていた。

「ラリイ。今日も人間界に来ていたのか?」
「はい。イルルに、どうしても見せたいものがあって。」
「ほう?なんだ?」
「この剣なのですが・・・」

ラリイは誕生日にフェニックスから託された、アルゥイントを、
嬉しそうにイルルヤンカシュにも見せた。
イルルヤンカシュはその剣を見て、驚く。

「まさか、あの七幻主の1つをラリイが所持することになるとはな。」
「14歳の誕生日に、オーディンが剣の腕を認めてくれた際に、
フェニも認めてくれて、それで譲り受けました。」
「そうか。どうやら、その剣はラリイと深い縁があるようだ。」
「そうなんです。前世の私が持っていたものなんだとか。」
「ほう。なるほどな。」

イルルヤンカシュは、ラリイのお話を楽しそうに聞く。
さぞや、フェニックスも喜んでいることだろうと、そこまで、
イルルヤンカシュは察する。

「だが、ラリイは最近は人間界に来すぎているのではないか?
よく、あのフェニックスが許しているものだ。
お前と離れて、寂しがっているように思えるがな。」

イルルヤンカシュは、悪戯っ子のような笑顔で、ラリイをからかう。
ラリイは少し困惑した顔で返事をする。

「フェニの愛情は嬉しいのですが、それでも過剰に心配しすぎです。
私も14歳になったのに、まだまだ子供扱いする。」
「ははは。それは、無理と言うものだ、ラリイよ。」

ちょっと不機嫌そうなラリイを暖かく見守りながら、イルルヤンカシュは、
フェニックスが初めてラリイを連れて来た日を思い出しながら、話を聞かせる。

「あの大の人間嫌いだった、あいつが、息子であるお前を
連れて来た時の変わりようと言ったら、凄かったのだぞ?
俺も人生であんなに驚いたのは、滅多にない。
赤ん坊のお前を自分の命よりも大事そうに抱きしめ、俺に会わせてくれた時は、
俺も嬉しかったものよ。」
「そ、そんなにですか?」
「ああ。お前をこの場所でハイハイさせて、歓喜でおかしくなっていたぐらいだからからな。」
「・・・・・」

イルルヤンカシュにそんな話を聞かされて、ラリイは簡単に
その光景が想像出来て、恥ずかしくなる。
14歳のあの誕生日だって、自分が少し笑顔になっただけで、抱きしめられ、
歓喜していたくらいだ。きっとあんな感じだろうと、ラリイは思った。
けど、それだけ、フェニックスに自分が深く愛されているのだとも知る。
ラリイは恥ずかしさもかなりあったが、内心は嬉しさもあった。
親馬鹿が炸裂していた、過去のフェニックスの話を聞けて。

「とにかく、人間界で遊ぶのは良いが、親のフェニックスに心配はかけるな。いいな?」
「はい。気を付けます。イルル。」

ラリイはイルルヤンカシュに苦笑いして、答えた。
イルルヤンカシュは、ラリイがこうして訪ねてくることを、心から喜んでいる。
ラリイは、イルルヤンカシュと2時間程会話をした後に、
人間界の別の場所の森に移動することにした。
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