第5章「離れゆく心」
「ラリイ、俺の声が聞こえるか?」
オーディンは、現実の方でラリイに話しかける。
ラリイは、ゆっくりではあるが、顔上げ、オーディンを見て頷いた。
「よしよし!いい子だ!ラリイ!」
オーディンは、再びラリイの頭を撫でてやる。ラリイは、少しだけ照れていた。
表面上は、まだ無表情に見えてるが、オーディンには照れているのがわかる。
「今は無理に感情を戻すことはない。お前の意識が現実に
帰ってくることが今回は大事だったからな。」
「はい・・・」
「それから、ラリイ。心の中でも話したが、お前の親が
有名な幻獣のフェニックスであってもだ、互いに会話はしなければ、
何も分かり合えはしない。ましてや、心閉ざしたままなら余計にな。
それだけは忘れるな?いいな?」
「はい・・・」
「うんうん!今日はそれだけ分かれば十分だ!意識が現実に戻って来たのなら、
肉体もまた元気になるだろう。その時は、俺がお前の剣の先生になってやるからな!
楽しみにしてろ?」
「はい・・・お願いします・・・」
オーディンは、嬉しそうな顔でラリイを見つめ、ここぞとばかりに、
ラリイの頭を撫で続けた。
考えれば、ラリイは、魔法院で魔法を学んでいた時に、
こんなにも褒められたりすることもなかった。
出来て当たり前、出来なければ、虐められる。そんな世界しか、
あの時のラリイは知らなかった。
フェニックス以外の存在に、褒めて貰えることが、こんなにも、
心地よいものだと言う事をラリイはオーディンから学んだ。
そんな中で、一気に廊下が騒がしくなり、オーディンは騒ぎの声に耳を傾ける。
「どういうことですか?!私のラリイに何をしているのです?!」
「フェニックス様、落ち着いて下さい!」
「オーディン様は、ラリイ様とお会いしたいだけなのです!
どうか、お気持ちを鎮められて下さい!」
「なら!私を今すぐに、この部屋に入れなさい!!
いくら、貴方達が、オーディンの部下でも、私は容赦しませんよ?」
どうやら、フェニックスが屋敷に帰ってきて、オーディン達の事を知り、
慌てて、ラリイの部屋の前に来たようだ。
「ふぅ・・・お前の親のフェニックスは、本当に心配性だな。
だけど、このままにしておくと、俺が燃やされそうだ。
お前の部屋にフェニックスを入れるがいいな?」
「はい・・・大丈夫・・・です・・・」
「よし!おーい!フギン、ムニン!構わん!フェニックスを通せ!」
オーディンは大声でドアの向こうのフェニックス達に言った。
すると、ドアが勢い良く開いて、フェニックスが飛び込んできた。
ラリイを抱きしめ、フェニックスはオーディンを睨む。
「どういうことですか?オーディン?何故、私の不在を狙って、
ラリイと?」
オーディンは両手を上げ、おどけて見せる。敵意はないと。
「どうしてもな・・・ラリイとフェニックスが気になってな。」
「心配をしてくれたと言うのですか?」
「ああ、そうだ。」
「なら!私が居ない時に、わざとラリイと会わなくても?!」
フェニックスがオーディンを睨んだまま、掴みかかろうとした瞬間、
ラリイはフェニックスの体をギュッと掴んだ。
「フェニ・・・駄目・・・やめて・・・」
「?!」
久しぶりに聞いたラリイの声に、フェニックスは、ハッとする。
フェニックスは息子のラリイをまじまじと見た。
ラリイの目は、虚ろな目でなくなり、僅かに光が戻っていたことに
フェニックスは気づく。
「ラリイ・・・まさか?・・・そんな・・・」
「フェニックス、ラリイはもう大丈夫だ。」
オーディンは穏やかに微笑みながら、ラリイの部屋から出て行こうとする。
「オーディン!待って下さい!まさか、ラリイを、ラリイを
救ってくれたのですか?!」
フェニックスはオーディンの背中に向かい叫んだ。
オーディンは顔だけ振り返り、フェニックスに言った。
「気まぐれで手助けしただけだ。それに、ラリイには剣術を教える約束があったからな。
俺は楽しみにしてた約束が破られるのは大嫌いなんだ。
それだけだよ。じゃあ、邪魔したな、フェニックス。」
「オーディン・・・すいません。私はなんて酷い誤解を・・・」
「気にするな。謝罪なら別の日にいつでも聞くさ。それより、
今日は、ラリイの側に居てやってくれ。その方が、回復も早くなるだろう。」
「オーディン・・・有難うございます。本当に・・・」
フェニックスは深く頭を下げて、オーディンに感謝する。
オーディンはそんなフェニックスの感謝の言葉を聞いて、片手で合図して、
部下達を連れて帰っていった。
静かになった部屋の中で、フェニックスは、再度ラリイを見る。
「ラリイ・・・私の声が聞こえますか?」
フェニックスは泣き出しそうな顔でラリイに尋ねる。
「うん・・・」
ラリイは弱々しい感じではあったが、フェニックスに答えた。
その目はちゃんとフェニックスを見ていた。
「ラリイ・・・良かった・・・ラリイ・・・」
フェニックスは力強くラリイを抱きしめ、泣いた。
ラリイも、薄っすらと涙を流す。フェニックスの深い愛情に
久しぶりに触れたから。
「ラリイ・・・これだけは絶対に忘れないで下さい!
誰が貴方に何を言おうとも、貴方が私の大事で愛しい息子の
ラリイであるのは、永遠に変わりません!
だから、ラリイ・・・自分の存在を否定しないで下さい。
何かを憎むなら、私を憎んで下さい。親として未熟な私を。」
「フェニ・・・」
フェニックスはラリイにそう懇願しながら、再度ラリイを強く抱きしめる。
ラリイも、それに答えるように、フェニックスにしがみつく。
フェニックスは、ラリイの頬に自分の頬を当て、スリスリする。
ラリイが赤ん坊のだった頃に散々したことを。
ラリイは、まだ感情が戻っていなかったので、無表情に
近かったが、内心は喜んでいた。
フェニックスは、ラリイが嫌がっていないことを気で察する。
「ラリイ。今日はもうずっと一緒に居ましょう?やっと・・・
ラリイとまた会話出来るようになったのだから・・・」
「うん・・・フェニ・・・僕も一緒に・・・居たい・・・」
フェニックスはラリイを優しい笑顔で見つめ、頭を撫でる。
そして、夕食はフェニックスが腕によりをかけて、
ラリイの好物なものをたくさん作った。
それをラリイは、元気よく食べていく。前世のラリイのように。
その姿を見て、フェニックスはやっと報われた気がした。
その後で、久しぶりに一緒にお風呂にも入り、お風呂の中で、
一緒に遊んだりもした。
ラリイは、まだ言葉数が少なくしか話せないが、いつかは
元に戻ってくれるだろうと、フェニックスも、今は変に焦らないことにした。
今日は何よりも、ラリイの意識が戻った事を喜ぶべきだと思った。
オーディンは、現実の方でラリイに話しかける。
ラリイは、ゆっくりではあるが、顔上げ、オーディンを見て頷いた。
「よしよし!いい子だ!ラリイ!」
オーディンは、再びラリイの頭を撫でてやる。ラリイは、少しだけ照れていた。
表面上は、まだ無表情に見えてるが、オーディンには照れているのがわかる。
「今は無理に感情を戻すことはない。お前の意識が現実に
帰ってくることが今回は大事だったからな。」
「はい・・・」
「それから、ラリイ。心の中でも話したが、お前の親が
有名な幻獣のフェニックスであってもだ、互いに会話はしなければ、
何も分かり合えはしない。ましてや、心閉ざしたままなら余計にな。
それだけは忘れるな?いいな?」
「はい・・・」
「うんうん!今日はそれだけ分かれば十分だ!意識が現実に戻って来たのなら、
肉体もまた元気になるだろう。その時は、俺がお前の剣の先生になってやるからな!
楽しみにしてろ?」
「はい・・・お願いします・・・」
オーディンは、嬉しそうな顔でラリイを見つめ、ここぞとばかりに、
ラリイの頭を撫で続けた。
考えれば、ラリイは、魔法院で魔法を学んでいた時に、
こんなにも褒められたりすることもなかった。
出来て当たり前、出来なければ、虐められる。そんな世界しか、
あの時のラリイは知らなかった。
フェニックス以外の存在に、褒めて貰えることが、こんなにも、
心地よいものだと言う事をラリイはオーディンから学んだ。
そんな中で、一気に廊下が騒がしくなり、オーディンは騒ぎの声に耳を傾ける。
「どういうことですか?!私のラリイに何をしているのです?!」
「フェニックス様、落ち着いて下さい!」
「オーディン様は、ラリイ様とお会いしたいだけなのです!
どうか、お気持ちを鎮められて下さい!」
「なら!私を今すぐに、この部屋に入れなさい!!
いくら、貴方達が、オーディンの部下でも、私は容赦しませんよ?」
どうやら、フェニックスが屋敷に帰ってきて、オーディン達の事を知り、
慌てて、ラリイの部屋の前に来たようだ。
「ふぅ・・・お前の親のフェニックスは、本当に心配性だな。
だけど、このままにしておくと、俺が燃やされそうだ。
お前の部屋にフェニックスを入れるがいいな?」
「はい・・・大丈夫・・・です・・・」
「よし!おーい!フギン、ムニン!構わん!フェニックスを通せ!」
オーディンは大声でドアの向こうのフェニックス達に言った。
すると、ドアが勢い良く開いて、フェニックスが飛び込んできた。
ラリイを抱きしめ、フェニックスはオーディンを睨む。
「どういうことですか?オーディン?何故、私の不在を狙って、
ラリイと?」
オーディンは両手を上げ、おどけて見せる。敵意はないと。
「どうしてもな・・・ラリイとフェニックスが気になってな。」
「心配をしてくれたと言うのですか?」
「ああ、そうだ。」
「なら!私が居ない時に、わざとラリイと会わなくても?!」
フェニックスがオーディンを睨んだまま、掴みかかろうとした瞬間、
ラリイはフェニックスの体をギュッと掴んだ。
「フェニ・・・駄目・・・やめて・・・」
「?!」
久しぶりに聞いたラリイの声に、フェニックスは、ハッとする。
フェニックスは息子のラリイをまじまじと見た。
ラリイの目は、虚ろな目でなくなり、僅かに光が戻っていたことに
フェニックスは気づく。
「ラリイ・・・まさか?・・・そんな・・・」
「フェニックス、ラリイはもう大丈夫だ。」
オーディンは穏やかに微笑みながら、ラリイの部屋から出て行こうとする。
「オーディン!待って下さい!まさか、ラリイを、ラリイを
救ってくれたのですか?!」
フェニックスはオーディンの背中に向かい叫んだ。
オーディンは顔だけ振り返り、フェニックスに言った。
「気まぐれで手助けしただけだ。それに、ラリイには剣術を教える約束があったからな。
俺は楽しみにしてた約束が破られるのは大嫌いなんだ。
それだけだよ。じゃあ、邪魔したな、フェニックス。」
「オーディン・・・すいません。私はなんて酷い誤解を・・・」
「気にするな。謝罪なら別の日にいつでも聞くさ。それより、
今日は、ラリイの側に居てやってくれ。その方が、回復も早くなるだろう。」
「オーディン・・・有難うございます。本当に・・・」
フェニックスは深く頭を下げて、オーディンに感謝する。
オーディンはそんなフェニックスの感謝の言葉を聞いて、片手で合図して、
部下達を連れて帰っていった。
静かになった部屋の中で、フェニックスは、再度ラリイを見る。
「ラリイ・・・私の声が聞こえますか?」
フェニックスは泣き出しそうな顔でラリイに尋ねる。
「うん・・・」
ラリイは弱々しい感じではあったが、フェニックスに答えた。
その目はちゃんとフェニックスを見ていた。
「ラリイ・・・良かった・・・ラリイ・・・」
フェニックスは力強くラリイを抱きしめ、泣いた。
ラリイも、薄っすらと涙を流す。フェニックスの深い愛情に
久しぶりに触れたから。
「ラリイ・・・これだけは絶対に忘れないで下さい!
誰が貴方に何を言おうとも、貴方が私の大事で愛しい息子の
ラリイであるのは、永遠に変わりません!
だから、ラリイ・・・自分の存在を否定しないで下さい。
何かを憎むなら、私を憎んで下さい。親として未熟な私を。」
「フェニ・・・」
フェニックスはラリイにそう懇願しながら、再度ラリイを強く抱きしめる。
ラリイも、それに答えるように、フェニックスにしがみつく。
フェニックスは、ラリイの頬に自分の頬を当て、スリスリする。
ラリイが赤ん坊のだった頃に散々したことを。
ラリイは、まだ感情が戻っていなかったので、無表情に
近かったが、内心は喜んでいた。
フェニックスは、ラリイが嫌がっていないことを気で察する。
「ラリイ。今日はもうずっと一緒に居ましょう?やっと・・・
ラリイとまた会話出来るようになったのだから・・・」
「うん・・・フェニ・・・僕も一緒に・・・居たい・・・」
フェニックスはラリイを優しい笑顔で見つめ、頭を撫でる。
そして、夕食はフェニックスが腕によりをかけて、
ラリイの好物なものをたくさん作った。
それをラリイは、元気よく食べていく。前世のラリイのように。
その姿を見て、フェニックスはやっと報われた気がした。
その後で、久しぶりに一緒にお風呂にも入り、お風呂の中で、
一緒に遊んだりもした。
ラリイは、まだ言葉数が少なくしか話せないが、いつかは
元に戻ってくれるだろうと、フェニックスも、今は変に焦らないことにした。
今日は何よりも、ラリイの意識が戻った事を喜ぶべきだと思った。