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第4章「よそはよそ、うちはうち!」

「フェニックス、ちょっといいか?」
「え?あ、はい。何でしょうか?バハムート?」
「個人的な話があるんだ、俺の部屋に一緒に来てくれるか?」
「わかりました。」

バハムートは、古代神兵器を封印し終わった後で、すぐにフェニックスに声を掛けた。
フェニックスの様子が変なことが、どうしても気になったからだ。
しかし、他の者は別段気にしてはいない。
バハムートだけが、直感的にそう感じただけだ。
バハムートは、この心配が、自分だけの取り越し苦労で終わるなら、
それでいいと思っていた。
フェニックスの方は、早く自分の屋敷に帰りたいと思ってはいたが、
こうバハムートに言われてしまったのでは、従うしかない。
バハムートは、普段こそ、仕事では甘えたがりや、ふざけたりもするが、
何かを感じ取る力はやはり王らしく、凄いものがあった。
フェニックスは覚悟した。バハムートに動揺した自分を感じ取られたのだろうと。

「どうした?フェニックス。お前、何か・・・古代神兵器に言われたのか?」
「どうして、それを・・・」

バハムートはフェニックスと自分の部屋に入るなり、すぐに
フェニックスに気になることを聞く。
フェニックスは、バハムートの質問に少し戸惑う。

「いや、なんとなくだ。最初は平然としていたお前が、
封印が終わる直後に嫌な顔してたからな。だから、古代神兵器に、
何か言われたんじゃないかと思ってな。」
「バハムート・・・貴方という方は・・・」

フェニックスは、久しぶりにバハムートの偉大を思い出す。
いや、本当はいつも尊敬はしている・・・つもりではある。
日頃のあんなやり取りが、もう少し少なければ。

「バハムート。実は聞いて欲しい話があります。」
「お?何だ、何でも話せ。俺とお前の仲だ。何でも聞くぞ。」
「はい、実は・・・」

フェニックスは覚悟を決めて、前世のラリイが見せた、オルトロスとの過去から、
古代神兵器に言われた言葉などを、全部正直にバハムートに報告した。
バハムートは、フェニックスの報告を聞く間、変に感情を出すことなく、
淡々と聞いていた。
フェニックスの話を全て聞いてから、バハムートは口を開く。

「そんなことがあったのか・・・」
「すいません、バハムート。隠すべきではなかったのですが・・・」
「いや、皆の前で言うのは、お前も躊躇うだろうよ。
ましてや、息子のラリイが関わっているからな。ラムウなどが
聞けば、やっぱり人間の血がと、騒ぐだろうしな。」
「申し訳ありません・・・バハムート。」

フェニックスは、身を縮め、うな垂れる。バハムートの前で、
こんな姿を見せるは実に久しぶりのことだった。
だが、バハムートはフェニックスを責めることはしなかった。

「フェニックス。そんな顔をするな。何で、俺が個人的な話にしたと思っている?」
「バハムート・・・?」

フェニックスは、未だ情けない顔であるが、バハムートをしっかりと見た。
バハムートは、いつもより頼もしい笑顔で、フェニックスを見ていた。

「言っただろう?俺とお前の仲だと?一緒に、この幻獣界と
この国を作り上げた仲だぞ?そんなことくらいで、お前との信頼を
無くすほど、俺は器の小さい王ではないぞ?」
「バハムート・・・いいのですか・・・?私は・・・」
「気にするな、フェニックス。今は俺だけが知っていればいい。
大体、害も何もないしな。前世のラリイが見た記憶で、
古代神兵器は早く見つかり、封印が出来た。
それに、古代神兵器の話だって、いつの事を言っているのか、わからん。
そんな起きるかわからん、未来の話で、今のお前を誰か裁ける?
だから、フェニックス。これからも変わらず、俺の側で、
同志として居てくれ?いいな?」
「有難うございます。バハムート。この忠誠はあの時と変わらず、永遠に貴方に捧げます。」

フェニックスは、数百年ぶりにバハムートの前で膝を折り、頭を深く下げた。
こうして気を使ってくれたバハムートにフェニックスはただただ、
感謝するしかない。
本来であれば、何か罰せられてもおかしくない話なのだから。
幻獣同士で、隠し事は、話の内容によって重い罪になってもおかしくないのだ。

「あーもう、いい加減、頭を上げてくれ、フェニックス。
なんか、お前にすげー久しぶりにそうされると、こう、なんか、
落ち着かない。」

バハムートは、何故か照れた感じにフェニックスに言う。
フェニックスも、そんなバハムートがおかしくて、
穏やかな笑顔で、立ち上がりバハムートを見た。

「酷いですね。せっかく、久しぶりに王らしい、バハムートが見れて、
感動していたと言うのに。」
「そうか?なら、俺に惚れ直しただろう?」
「ふふ、そうですね。バハムート。」

この時は、フェニックスも変にツッコミを入れずに、バハムートを認めた。
バハムートの寛大さには、感謝し、尊敬しているのは事実だから。
この時くらいは、フェニックスもバハムートの冗談に乗ろうと思った。

「そんな偉大なバハムート王に聞きたいことがあるんですが?」
「おう!なんだ、フェニックス?」
「ラムウと書類業務してくれたんだそうですね?」
「む・・・そ、それは・・・」
「その割には、全然終わってないみたいですが・・・それは、
どういうことなのでしょうか?教えて頂けませんでしょうか?
バハムート王?」

フェニックスは穏やかな笑顔のまま、バハムートに確認する。
バハムートは、気まずそうな苦笑いをしたまま、回答に困る。

「ラムウにな・・・説教されてた・・・」
「そうですか。そんな気がしてました。」

観念して、答えるバハムートに、フェニックスは責めなかった。
自分がバハムートに許して貰ったのだから、自分も今回は許すしかあるまい。

「お・・・珍しく、フェニックスも説教しないな?」
「私にまで、されたいのですか?ご希望でしたら、しますが?」
「ヤダ!断る!!」

バハムートは全力でフェニックスの説教を断った。
フェニックスはそんなバハムートも最近、なんだかんだと
気に入ってる自分がいることに気づいてしまった。
気難しいだけの王なら、やっぱり魅力はないのだろう。
フェニックスはそんな感じがした。

「わかりました。ラムウにはラムウのやり方があるでしょう。
私と一緒に仕事して頂く時には、バハムート。私のやり方で、
して貰いますね?」
「うん。お手柔らかに頼む。」
「はい、はい。お任せ下さい。」

フェニックスは、バハムートとまた絆が深まった感じがしていた。
今後は、絶対にどんな些細なことも、バハムートに話そうと。
バハムートから、そう歩み寄ってくれたのだから、信頼すべきだ。
と、フェニックスは実感していた。
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