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第4章「よそはよそ、うちはうち!」

「幻獣は、我を利用する気がないと?」

少しの沈黙の後に、古代神兵器は、再度そうラムウに聞く。

「そうじゃ。貴殿の力を使う気はない。ただ幻獣界で静かに
沈黙されて居て欲しいだけじゃ。」

ラムウも再度迷いなく、古代神兵器に告げた。
これは、幻獣界に居る、ほとんどの幻獣の願いと言っていい。

「俺は、幻獣界の王のバハムートだ。古代神兵器よ。お前の身柄は俺達で
確保させて欲しい。ラムウの言う通り、我らはお前を利用などしない。
静かに幻獣界で眠られるといい。」

ラムウに代わり、バハムートも呼びかける。
これには、ケルベロスも驚いた顔で見守っていた。

「そうか・・・わかった。我は幻獣界へ行く。その方が無用な争いに
巻き込まれずに済みそうだ。」

古代神兵器は、フェニックス達の説得に応じた。
フェニックス達も互いに顔を見合わせ頷く。これで事は終わったのだ。
ケルベロスも、抵抗する気はなさそうであった。

「では、古代神兵器は、私達が貰い受けますね。」
「ふん。好きにしろ。使えぬ力などに興味はない。」

最後にフェニックスは、ケルベロスに言葉をかけるが、
ケルベロスは、つまらなさそうにそう答えるだけだった。
フェニックスは、そんなケルベロスに回復の魔法をかける。

「何の真似だ?フェニックス・・・」

ケルベロスは、回復して貰ったお礼を言うどころか、鋭い目でフェニックスを睨んだ。
情けをかけられたことに、ケルベロスは怒ったのだ。
でも、フェニックスは気にせずに言った。

「したいから、したまでです。深い意味などありません。」

と。
このやり取りに、イルルヤンカシュは、心の中で笑う。
相変わらず、フェニックスは甘い考えをする幻獣だと。
フェニックスは、きっと魔獣とも、今後無理に争わないで
いたいと願っているのではないかと、イルルヤンカシュは思った。

「ちぃ。余計なことを・・・」

ケルベロスは、それだけ吐き捨てると、闇に姿を消した。
フェニックス達は、光の球体と、共に幻獣界に帰ってきた。
途中で、イルルヤンカシュと別れて。
幻獣界に無事に戻り、古代神兵器は、ラムウの魔法院の地下に
厳重に封印されることになった。

「今後、誰の手にも渡らぬようにせねばな。」
「そうだな。それにはどうすればいい?ラムウ?」

ラムウの言葉に、バハムートが尋ねる。
ラムウは前から考えていたことがあったのか、すぐにバハムートに答える。

「古代神兵器の封印を解こうとするものに、禍が起こるように
呪いもかけましょうぞ。
この幻獣界で、そんなことをしてまで、古代神兵器を手に入れようと
するものなどおりますまい。仮に、別の種族が手に入れようとしても、
その事を隠しておけば、手に入れようとも呪いで、無理になる。
それに、どのみち、古代神兵器が使用されることを拒みましょう。」
「だな。今後は幻獣界にあるのだ。他の者が、これだけの封印を破り、
幻獣界に古代神兵器を奪いに来るような、命知らずが今後、出ないことを願おう。」

古代神兵器を取り囲むように、バハムート、ラムウ、フェニックス、オーディン、
リヴァイアサンが古代神兵器に向かい、両手を掲げる。

「では、我らの力を集め、封印するぞ!」

バハムートの掛け声で、ラムウに最初に指示された通りに、
フェニックス達は封印をする為の儀式を開始する。
それぞれの幻獣が意識を集中させた。

「ラリイ・・・ラリイとはな・・・フェニックスが、まさか・・・何たる巡り合わせよ・・・」
「?」

古代神兵器は、フェニックスにだけ聞こえるように、そう呟いていた。
しかし、フェニックスから、すれば、古代神兵器の言いたいことが、何なのか何もわからない。

(ラリイと言っていたようですが・・・古代神兵器が、何故ラリイの名前を?)

フェニックスは、心の中で気になりはしたが、封印が完成するまでは、
無理に考えないようにし、封印に集中した。
封印は、その数分後には無事に済んだ。

「これで、封印は無事に出来たようだな。」
「そのようじゃ。これで、一旦は安心出来よう。」

バハムートとラムウは互いに確認して頷いていた。

「フレン達と相談しないまま、こうなってしまったが、この事は、私がうまく話しておこう。」
「ああ、頼むぞ、リヴァイアサン。お前から話せば、フレン達は
納得してくれそうだけどな。」
「そうですよね。危険が早く去ったのですから、フレンの奴も、
文句言わないんじゃないですか?」

リヴァイアサンの言葉に、バハムートとオーディンがそう返す。
フレンも、きっと問題が早く解決したことには、何も言うまい。
幻獣界で封印されている方が安心も出来るはずだ。
リヴァイアサンとフレンの信頼関係があれば、悪い方向になることはないだろう。
フェニックス達は、古代神兵器を無事に封印出来たことに安堵し、
部屋を出ようとした矢先。

「フェニックス・・・お前とはいずれ、またいつか関わろう。」

古代神兵器は、最後にまたフェニックスだけ聞こえるように言ってきた。
フェニックスは、ハッとして振り返り、古代神兵器を見たが、
もう、古代神兵器は深い眠りについてしまっていた。

(またいつか、私と関わる?どういうことでしょうか?
私が古代神兵器を必要とする日が来るとでも言うのですか・・・)

フェニックスは、古代神兵器に嫌な予言をされ、心配する。
まさか、いつかラリイが古代神兵器を欲しがったりするとでも言うのか?
古代神兵器は、ラリイの名前も出していたのが、尚更気になった。
フェニックスの様子が変なことにバハムートだけが気づく。

(どうしたんだ?フェニックスの奴・・・なんか、すげぇー嫌な顔してるけど。
後で、何かあったのか聞いてやるか。)

バハムートはバハムートで、ちゃんと皆の様子はいつも見ていたのだ。
フェニックスの方は、早くラリイに会いたかった。
嫌な事は忘れて、ラリイとまた穏やかに過ごしたかった。
古代神兵器と関わるような事態にならないように、フェニックスは、
ラリイとしっかりと暮らそうと決意する。幻獣界はこのまま平和であるはずだ。
それに今後は人間界とも、もっと協力していく。
世界が平和になっていけば、ますます古代神兵器の力などを
必要とすることもないだろう。

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