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第4章「よそはよそ、うちはうち!」

フェニックスは、リヴァイアサンとすぐに合流して、魔界に向かう途中だった。

「よく、あのバハムートが許したな。」
「ええ、バハムートも王らしい判断をしてくれて、嬉しく思います。
それに、リヴァイアサン。貴方の事を頼むと、心配してましたよ?」
「そうか・・・バハムートもやる時はやる男だ。流石、我らの王ではないか。
な?フェニックス。」
「ふふ、そうですね。リヴァイアサン。」

2体の幻獣は、そう穏やかに会話していた。
そして、魔界に入る直前に、フェニックスは、リヴァイアサンに、
ある提案をする。

「リヴァイアサン。実はお願いがあるのですが・・・」
「どうした?願い事とは?」
「今回の件に、イルルヤンカシュの力も借りたいのですが、駄目ですか?」
「イルルヤンカシュか・・・」

フェニックスの提案に、リヴァイアサンは少し渋い顔をする。
バハムートと同じで、リヴァイアサンも、イルルヤンカシュとは揉めた仲だ。
正直言えば、気持ちの良い提案ではないだろう。
それは、フェニックスもわかってはいるのだが、提案したかった。
駄目かもしれなくても。

「フェニックス、お前のことだ、何か理由があるのだろう。
私は別に構わないが、しかし、あの頑固者のイルルヤンカシュが、
我々に同行してくれるか?」
「そこは、私が誠意を尽くして頼み込むつもりです。」
「ならば、私はこれ以上は何も言うまい。」

リヴァイアサンは、優しい顔で、フェニックスの提案を承諾してくれた。
フェニックスは、静かに頭を下げて感謝する。
そして、前に来た、イルルヤンカシュの住処に向かう。

「ここ最近は、珍しい来客が多いものだ。まさか、フェニックスの次に、
リヴァイアサンが訪れるとはな。」
「イルルヤンカシュ。久しぶりだな。」

リヴァイアサンとイルルヤンカシュは、数百年ぶりの再会であった。
一瞬だけ、緊迫した空気が出るが、すぐにそれは解消された。
フェニックスも、2体が戦うようなことにならなくて、安堵する。

「あの時以来か、しかし、元気そうで何よりだ。」

リヴァイアサンが、先にイルルヤンカシュに声を掛けた。
きっと、フェニックスの気持ちを汲み取り、歩み寄ってくれたに違いない。
フェニックスは心の中で深く感謝していた。

「お前も元気そうだな。リヴァイアサン。少し気が変わったような感じがするが。」
「そうかもしれん。私も最近は人間界にいることが多いのでな。」
「そうなのか?」

イルルヤンカシュも、リヴァイアサンに歩み寄ったので、2体の雰囲気は良いものになった。
フェニックスは、この調子ならと、イルルヤンカシュに声を
掛けるタイミングを見計らう。

「にしても、リヴァイアサンまで連れてくるとは、フェニックスよ。
俺に何か用事でもあるのか?ただ、再会させたかったからではあるまい?」
「流石、イルルヤンカシュ。私の企みなんて、わかってしまいますか。
実はですね、魔界に古代神兵器を探しに、今からリヴァイアサンと向かうのです。」
「それは、本当か?!フェニックス!」
「はい。」

フェニックスの言葉に、イルルヤンカシュでさえも、驚く。
どうやら、イルルヤンカシュの元には、例の噂の話は来てなかったようだ。

「なるほど・・・と言う事は、フェニックス。お前のことだ。
俺にも協力して欲しいと言う事か?」
「そうです。出来るなら、イルルヤンカシュの力を借りたいのです。」
「私からも頼みたい。イルルヤンカシュ。」

フェニックスと合わせるように、リヴァイアサンも一緒に協力を頼んでくれた。
これを機に、リヴァイアサンも昔の蟠りを無くしたいのかもしれない。
今後も同じ人間界に留まるなら、仲を戻したいと思ってもおかしくはないはずだ。

「だが、俺は・・・忘れられし幻獣だぞ?俺が関われば、
お前達に迷惑が掛からないか?」

イルルヤンカシュは、そう心配し、フェニックス達を見る。
フェニックス達は互いに顔を見合わせて、穏やかに笑う。

「そんな事は、関係ありません。イルルヤンカシュ。
私は前にも言いましたが、友の貴方だから頼みに来たんです。」
「イルルヤンカシュ。昔の事をすぐに水に流せとは言えないだろう。
だが、今回は事が事だ。頼む。我々に力を貸してくれ。」

2体の声に、イルルヤンカシュも、穏やかな顔で返した。

「こうも、大事な同志達に頼まれて、断れようか。わかった。
俺が役に立つかもしれないのであれば、お前達と同行しよう。」

イルルヤンカシュは重そうな体を起こし、すぐにでも、同行出来ると体で示した。
フェニックス達は嬉しそうにして、イルルヤンカシュも仲間に
加えて、今度こそ魔界に向かった。

「イルルヤンカシュ、聞きたいことが・・・」
「何だ?フェニックス?」
「オルトロスと言う魔獣とその仲間が今、どんな状況か、ご存じありませんか?」
「あいつらか・・・」

フェニックスの言葉を聞いて、イルルヤンカシュは考え事をする。
どうやら、何か心当たりがありそうだ。

「そう言えば、オルトロスの姿は最近は全然見なかったな。
噂では、ある人間に倒されたとも聞くが・・・
代わりに、兄弟分に当たる、テュポーンとケルベロスが活発的に
行動しているのは聞いている。」
「今は、魔界のどの辺で活動しているか、わかるか?イルルヤンカシュ?」

リヴァイアサンもイルルヤンカシュに、質問する。
すると、魔界のある方角を指して、イルルヤンカシュは答える。

「過去の縄張りから、変わっていなければ、あそこら辺のはずだ。
俺はの読みでは、過去から縄張りは、変わっていないはず。」
「そうか・・・では、ラムウに託された使い魔達を、あそこら辺から解き放とう。」

イルルヤンカシュは、護符のようなものを手から出し、放った。
護符は黒いカラスの姿に変わり、一斉にそれぞれの場所に飛んでいく。
それを見た、イルルヤンカシュは感嘆の声を上げる。

「ほう。あれがラムウの魔法の1つか。噂に聞いてはいるが、
凄いな。」
「今回は、そのラムウも本気なんですよ。」

フェニックスは、ふっと短く笑い、イルルヤンカシュに教えた。
これで、後は古代新兵器が、無事に見つかってくれればいいのだが、
とフェニックスは思った。
活気がある魔界の風は、フェニックス達にとっては、嫌な風でしかなかった。

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