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第4章「よそはよそ、うちはうち!」

「俺の書斎に、古い地図になってしまいますが、魔界の事が
書かれていた本があったので、持ってきました。」

オーディンはまず最初に、魔界の全体が載ってる地図のページを開いた。

「魔族の勢力図は変わっていると思いますが、魔界の全体は、
こんな感じで、地形はそんなに変わってないと思います。」
「おお、良いものを持って来てくれたな。オーディン。」

リヴァイアサンは嬉しそうな声で、オーディンの持ってきた本を見ている。
ラムウも覗き込んで見ている。

「オーディン。その本には、オルトロスと言う魔獣の事は書かれていますか?」

フェニックスは気になっていた魔獣の名前を、オーディンに聞いてみた。
オーディンは、フェニックスの質問に、陽気に答える。

「ああ、書いてあるぞ。確か、俺の記憶が正しければ、オルトロスとか魔獣系の奴らは、
過去はここいらを拠点にしていたはずだ。」

オーディンは地図でその場所を指さし、フェニックスに教えた。

「そうですか、その辺ですか。」
「どうした?フェニックス、何か気になることでもあったのか?」

リヴァイアサンが、フェニックスを気に掛ける。
フェニックスは、イルルヤンカシュに申し訳ないと思いつつも、
ラリイのあの出来事を隠す為に、イルルヤンカシュの名前を借りることにした。

「あ、いえ。前にイルルヤンカシュに会った時に、言われた事を
思い出したのです。オルトロスの仲間に、何か兵器を探している者がいたらしいと。」
「なんと?!そうだったのか?」
「すいません。私も最初は何の事かわからず、流して聞いてしまっていたので。」
「いや、今思い出してくれたのなら、問題ない。そうなると
ラムウよ。この辺を重点に調べるべきかもしれぬな。」
「そうじゃな。魔界全体を調べつつも、その辺りを重点に置こう。」

リヴァイアサンとラムウは、フェニックスの意見を取り入れ、
詳しく調べる場所の目星をつけた。

「後は、もし古代神兵器が無事に見つかったとしても、魔族側も、おいそれと簡単には渡すまい。
激しい抵抗があると思うが、どうする?バハムート?」
「その時は、しょうがない。リヴァイアサンを援助すべく、何体か
戦いに参加するしかないな。」
「バハムート、私に行かせてくれませんか?」
「あ、俺も行きますよ!」

フェニックスとオーディンは、すぐに名乗り出た。

「わしは、幻獣界から援助しよう。使い魔があれだけいれば、
戦いでも回復でも、何でも出来るからな。」

ラムウはラムウなりに、力になるとバハムートに言う。

「リヴァイアサンはモテモテだな。3大重臣達が、揃って、お前を助けるとさ。」
「義兄貴。こんな時に嫉妬している場合ではないぞ?」

リヴァイアサンは、ついバハムートに苦笑いした。

「冗談だ。では、俺はお前達が魔界で戦うことになったら、
死に物狂いで、この幻獣界を守ろう。それで良いな?」
「はい。」
「承知しました。」
「了解した。」

フェニックス、オーディン、ラムウは、それぞれにバハムートの言葉に応じた。
リヴァイアサンは、すぐにラムウの使い魔達を連れ、魔界に旅立った。

「心配そうな顔だな。フェニックス?」
「バハムート・・・。」

フェニックスを顔を見て、バハムートは、いつになく真面目な態度だった。

「お前も本当はすぐに一緒に行きたかったんだろう?」
「そうですが・・・でも・・・」
「なら、俺が許可する。お前も急いで、リヴァイアサンを追え。」
「いいのですか?バハムート?」
「構わないさ。俺はこの幻獣界の王だぞ?今回の件は、急を要するのだ。
出来る対策は事前にした方がいい。」
「有難うございます。バハムート。では、すぐにリヴァイアサンを
追いかけ、共に、行動します。」
「俺の義弟を頼む。」
「わかりました。任せて下さい。」

フェニックスは、急いで政務室を出て、リヴァイアサンを後を追った。

「フェニックスが一緒に行けば、リヴァイアサンの戦いもかなり有利になりますね。」

オーディンは、嬉しそうな顔で、バハムートに言う。

「フェニックスがリヴァイアサンの補佐役に回るのであれば、
フェニックスが不在の間は、このわしが、バハムートの補佐役に
回ろうではないか。」
「え?そんな、ラムウ。何も無理しなくても、俺は大丈夫だぞ?」

ラムウの意外な提案に、バハムートは動揺する。

「いや、たまにはバハムートの王としての仕事ぶりも見たいのでな。遠慮するな。」
「そ、そうか・・・?あはは・・・」

ラムウにここまで言われてしまい、バハムートは、もう断ることなど、出来る状況ではなかった。

(うわぁ・・・気の毒だな。可哀想にバハムート・・・)

オーディンは心の中で、バハムートに心底同情した。
あんなにやる気あるラムウも珍しいが、その分、その仕事ぶりは、
きっとフェニックスの比ではない。
ラムウに甘えようものなら・・・どんな事になるか。誰にも想像出来ない。

「では、俺は幻獣界の警備ありますので、これで失礼致します。」
「お、オーディン?何もそんなに急がなくてもいいんじゃないか?」

バハムートは、必死にオーディンに助けを求めるような顔で、
そう言うが、バハムートの背後にいるラムウに、無言の圧力をかけられ、
可哀想であったが、見捨てるしかなかった。

「いえ、バハムート王の仕事は邪魔出来ませんので!では!」
「おい!オーディン!!」
「さ、バハムート王。王の仕事に入りますぞ?」
「は、はい・・・」

バハムートもラムウの圧力を感じたらしく、素直に従う。
こうなれば、気持ちを引き締め、ラムウと書類仕事をするしかない。
フェニックスが、帰ってきたら、驚くほど、仕事が片付いていることだろう。
ラムウは、書類を見て、不敵に笑っているほどだ。
バハムートは、この時に、本気で幻獣王になったことを、
後悔したと言う。
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