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第3章「歩き出す時に」

バハムートとリヴァイアサンは、幻獣城の中のバハムート専用の
部屋で会話をしていた。
2体とも、深刻な顔で会話をしている。

「バハムート。人間達は、今後、本当に不利な状況に陥るやもしれん。」
「そんなに、魔界との戦いは熾烈そうなのか?」

リヴァイアサンはいつもの兄弟呼びでバハムートの事を呼ばなかった。
幻獣同士が互いの名前をちゃんと呼び合う時は、それだけに真面目な話と言うことなのだ。

「嫌な噂が魔界から出ている。」
「嫌な噂?」
「神々の時代に作られた、古代神兵器を魔界側が保有しているかもしれないと言う噂だ。」
「な、なんだと?」

リヴァイアサンの言葉に、バハムートも目を見開く。
古代神兵器。
それは、人間達の遥か遠い昔の祖先達が、まだ神々と言われた頃の時代。
その時代の最後の大戦争をした際に、使用されたとされる、生きた兵器の事である。
それは人の形をしていたとされるが、実際はどうであったは誰も知らない。
そして、何体、存在していたさえも。
今の時代には、名前と大雑把な記録しか残されていないからだ。
いや、人間どころか、幻獣達さえ、その存在を知っているものは、
限られている。
それだけ、危険なものであり、隠されておくべき存在であった。

「馬鹿な・・・あれが、魔界に有ったと言うのか?」
「経緯は私にもわからん。だが、人間達が争っている間に、
一部の有力な魔族が探し出したと言う話だ。」
「なんてことだ。もし、魔界があれを使用出来るようになったら、
人間界がどころの話ではないぞ?」
「だな。幻獣界さえ、余裕で支配出来よう。いざとなれば、神界さえも。」

神界。今はどんな世界なのか、誰もわかっていない世界。
ただ、そこに辿り着くことが出来れば、世界の根源を底から
ひっくり返し、変えることが出来るとだけ言われている世界。
そんな場所に魔族達が辿り着いてしまえば、エンガイスと言う
世界がどうなるか、誰にも想像出来ない。

「早急に確認する必要があることだな。」
「そうなのだ。だが、私はこの事は、公しない方が良いと考えている。」
「何故だ?人間界では一大事な事だろう?」
「もちろん。しかし、この事を今、人間界で知っているのは、
フレンと4大神官の土の大神官だけだろう。」
「どうして、それしか教えない?」

バハムートはリヴァイアサンの行動を不思議がる。
バハムートには、リヴァイアサンの考えが理解出来ていなかった。

「人間界で公にすれば、また人間達はそれを求めて、同種争いを起こすだろう。
それがあれば、同種どころか、魔界さえ怖くなくなる。
幻獣界にさえ牙も剥くことも考えられる。」
「確かに。人間は油断ならない存在だ。魔族ほどにな。」
「私はフレンのような人間を信じてはいる。でも、それでも、
今の人間界は欲望に支配されている者が、大多数だ。
そんな者達が、この情報を知れば、今後どうなるかなど、目に見ている。
最悪はフレン達を殺すやもしれぬ。人間界を有利にする為にな。」

リヴァイアサンは、悔しそうにそう話す。
バハムートもそれを聞いて、リヴァイアサンに同調する。
過剰な力は、新しい争いを生むだけ。
リヴァイアサンは、人間界と魔界の戦いを、更に大きな戦いにしたくなかったのだ。

「なら、どうする?古代神兵器の対処は?」
「一部の人間と幻獣界で処理してはどうかと考えている。
再度、封印だなんだとすることを考えてもな。
人間と違い、我々は私欲の為に、古代神兵器を使うなどとは考えまい?」
「まぁ、我ら幻獣は人間よりは欲望に負けないだろう。
うーん・・・人間界に引き渡すよりは、断然、安全か・・・」

バハムートは、リヴァイアサンの言葉に悩んだ。
この戦いに、まさか古代神兵器まで出てくるなど、バハムートも
考えもしていなかった。
リヴァイアサンは悪い噂としてはいるが、今回、わざわざ幻獣界に出向き、
こうして相談までしに来たのなら、信憑性が高い話なのだろうとバハムートは確信している。

「リヴァイアサン。この話は、事が事なだけに、フェニックス達にも
聞かせたいのだが、いいか?」
「ああ。3大重臣達も、知っておいてた方が良いだろう。
特に、私の考えでは、ラムウが一番役に立つ知識を持っていると思う。」
「それは間違いないだろうな。ラムウはこのエンガイスでは、
一番、長生きな幻獣だ。
古代神兵器のことも、絶対に何か知っているだろう。」

バハムートと、リヴァイアサンは互いに顔を見合い、頷き合う。
やるべきことが決まったのなら、後は行動あるのみだ。

「最悪な事態だけは、絶対に阻止しなければだな。リヴァイアサン。」
「うむ。これは、人間界だけの問題では済まなさそうだからな。」
「それに、お前が、また昔の様に協力してくれるんだろう?リヴァイアサン?」
「流石に、今回の件は特にな。だが、私は人間界には戻るぞ?」
「なんだ?幻獣界に居てくれるのではないのか?」

バハムートは寂しそうにリヴァイアサンに言う。
リヴァイアサンも、いつものアレかと、苦笑いする。

「常に連絡や、すぐに人間界で行動する為にも、私が人間界に
居た方が都合が良いはずだ。
バハムートには、フェニックス達がいるから、余裕であろう?」
「そうなんだけどな・・・フェニックスは冷たいからな・・・
お前と違って・・・」
「何を言う。最近のフェニックスは、すっかり丸くなり、
優しくなったではないか。
過去のフェニックスは、火の鳥のはずが、冷酷鳥などと言われていたが、
今は慈愛の幻獣とまで言われてるそうではないか。」

リヴァイアサンは、そうバハムートに言い聞かせる。
リヴァイアサンは、フェニックスに同情していた。
バハムートの悪い癖の甘えたがりに苦悩させらていることを。

「バハムートも、時に王らしくして、フェニックスに振られないようにせぬとな。」
「むぅ・・・あいつは人間界に行った時に、お前に俺の事を愚痴ったのか?」
「ほどほどにはな。」

フッと、リヴァイアサンは静かに笑った。
こんな甘えたがりになったのも、最大の原因は、イルルヤンカシュの所為だが、
今は、いない存在を責めてもしょうがない。
リヴァイアサンは、上手にバハムートを扱いながら、
今後の事をフェニックス達にも話そうと部屋を移動した。
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