第3章「歩き出す時に」
ある日の幻獣国の会議室でのこと。会議室には重い空気が漂っていた。
バハムートと三大重臣達が集まり、今後の事を話し合っていた。
話し合いの中心はフレンの話と、人間界と今後、どう関わっていくか。
それが課題であった為に、ラムウの機嫌が良くないのは、全員わかっている。
それもあるから、重い空気の中で、ラムウ以外の幻獣は、慎重に
意見を言い合っていたのだ。
ラムウが少しでも機嫌を損ね、会議を止めてしまえば、
人間界への協力は不可能に近くなってしまう。
バハムートも中立の立場でいなければならないので、フェニックス達の意見に
賛同ばかりも出来ない。個人的には反対ではなくても。
「わしは、人間同士の戦争に力を貸さないのと、我々幻獣にとって、
脅威になるものの除外への手助けは賛成したが、それ以上の人間への協力する話には
賛成するつもりはない。」
ラムウはフェニックス達が想像していた通りの答えを出した。
「人間と魔族との戦いには、一切協力しないで良いとお考えですか?ラムウ?」
「そうじゃ。何故、人間が起こした問題に、我々、幻獣が関わり、
あまつさえ助けてやらねばならぬ?」
「それは、そうですが・・・」
ラムウはフェニックスを鋭く睨み、同じ幻獣であっても、冷酷な態度であった。
この時ばかりは、人間に味方するフェニックスを、ラムウは容赦なく攻撃する。
「ラムウ殿の言う通りですね。人間など助ける価値もない。」
オーディンも陽気な声で、ラムウを擁護した。
「オーディン・・・貴方まで・・・」
フェニックスは、少しだけ悲しげな表情でオーディンを見た。
「そうであろう?オーディン。」
「はい。ですが、ラムウ殿。助ける価値はありませんが、利用する価値なら、
あると思いませんか?」
「どういうことだ?オーディン。」
オーディンの言葉に、ラムウが訝しむ。
しかし、オーディンは陽気な声のままで話を続ける。
「そのままの意味です、ラムウ殿。我々の世界を守る為に、人間を利用するのです。」
「ほう?と言うと?」
「人間界には、我ら幻獣界を守る為の「盾」になって貰うのです。
人間界がどうなろうが、知ったことでないのは確かですが、けど、
人間界がなくなれば、次に魔族が狙うのは、この幻獣界だと思われます。
遅かれ早かれですが。」
「うむ、それは一理あるが・・・」
「それに、幻獣界も、まだ守りには不安な要素がございます。
せめて、それがなくなるまでは、人間界と人間を利用し、
「盾」しての役目を負わせるのはどうでしょうか?
その為に、我らはあくまでも、一時的な協力をするだけに留め、
魔族との戦いは全部、人間側に任せればいいのです。
戦いで犠牲が出るのは人間だけ。そうなるよう上手く交渉するのは、
俺がしましょう。」
オーディンは、あくどい笑顔でラムウに、そう提案する。
ラムウは、しばらく黙り、考え込む。
「今まで人間に散々、我々は利用されたのです。
今度は、こちらが利用してもいいはず。人間には過去の過ちを
しっかり清算して貰わなければ。
バハムート王もそう思いませんか?それにフェニックスも。」
オーディンはバハムートとフェニックスにも賛同を求めた。
その時、オーディンはフェニックスにだけ分かるように、
目で合図した。今は黙って聞いて欲しいと。
「そうだな。オーディンの考えも悪くないな。」
「そうですね。オーディンの言うこともあるかと思います。」
バハムートもフェニックスも、オーディンの提案は悪くないと、
賛同してみせた。
「オーディンよ。それにわしも賛同しよう。そう考え、人間を利用すると
言うのなら、悪くはない。」
「そうです、ラムウ殿。せっかく使える駒があるなら、使いましょう。
それに、何も人間への協力は永遠にと言うわけではないでしょう。
人間界が平和になるまでの間。そして、もし人間界が魔界に負けると言う、
最悪な結果になった時は、容赦なく人間界を切り捨てれば良い。
それからでも、遅くはないかと思いますよ?ラムウ殿。」
「ふむ。お主の考えには、恐れ入る。オーディン。」
「お褒めの言葉を頂け、何よりです。」
ラムウとオーディンは互いに不敵に笑い合う。
バハムートとフェニックスも、この2体の幻獣の会話に、
苦笑いするしかなかった。
しかし、どうであれ、オーディンのおかげで、幻獣界は、
人間界に協力出来ることになった。建前上は、人間を利用すると
言う事になってしまったが。
「上手い具合に、どうにかなったな。オーディン。」
会議が終わり、ラムウはさっさと魔法院に帰っていった。
会議室に残ったバハムート達は、まだ会話を続けていた。
「ええ、何とかなりましたね。フェニックスには、不愉快な言い方になってしまったが。」
「いいえ、オーディン。貴方が、ああでも、言わなければ、
今のラムウは絶対に、今回の件は認めなかったでしょう。むしろ、感謝しています。」
「そう言って貰えて良かったです。ラムウには正攻法は
通じないと思いましてね。
それに、俺は嘘は言ってるつもりはないですよ。俺はラムウほど、
人間が嫌いってわけではないですが、だからと言って、フェニックスほど、
人間を信頼してないのも事実ですからね。」
「オーディン。貴方は貴方で、それでいいと思います。」
フェニックスは、オーディンに微笑んでいった。
幻獣同士だからとは言え、すべてが同意出来なくてもいいのだ。
今は、オーディンはやや人間側の味方であるのは変わりない。
それだけで、フェニックスは満足している。
言い方はどうであれ、オーディンの機転で、人間界に
協力出来る方向になったのは間違いではない。
(俺があんな言い方したとしても、ラムウは、俺の本心に気づいてるだろうな。
なんだかんだで、人間を気に入ってることを。それでも、賛成したのは、
ラムウにとっても都合がいいことがあったと言うことか。
やれやれ、フェニックスも先が思いやられそうだな。)
オーディンは心の中で、フェニックスとラムウの人間に関する
確執はまだまだ解決しそうにないなと思った。
バハムートと三大重臣達が集まり、今後の事を話し合っていた。
話し合いの中心はフレンの話と、人間界と今後、どう関わっていくか。
それが課題であった為に、ラムウの機嫌が良くないのは、全員わかっている。
それもあるから、重い空気の中で、ラムウ以外の幻獣は、慎重に
意見を言い合っていたのだ。
ラムウが少しでも機嫌を損ね、会議を止めてしまえば、
人間界への協力は不可能に近くなってしまう。
バハムートも中立の立場でいなければならないので、フェニックス達の意見に
賛同ばかりも出来ない。個人的には反対ではなくても。
「わしは、人間同士の戦争に力を貸さないのと、我々幻獣にとって、
脅威になるものの除外への手助けは賛成したが、それ以上の人間への協力する話には
賛成するつもりはない。」
ラムウはフェニックス達が想像していた通りの答えを出した。
「人間と魔族との戦いには、一切協力しないで良いとお考えですか?ラムウ?」
「そうじゃ。何故、人間が起こした問題に、我々、幻獣が関わり、
あまつさえ助けてやらねばならぬ?」
「それは、そうですが・・・」
ラムウはフェニックスを鋭く睨み、同じ幻獣であっても、冷酷な態度であった。
この時ばかりは、人間に味方するフェニックスを、ラムウは容赦なく攻撃する。
「ラムウ殿の言う通りですね。人間など助ける価値もない。」
オーディンも陽気な声で、ラムウを擁護した。
「オーディン・・・貴方まで・・・」
フェニックスは、少しだけ悲しげな表情でオーディンを見た。
「そうであろう?オーディン。」
「はい。ですが、ラムウ殿。助ける価値はありませんが、利用する価値なら、
あると思いませんか?」
「どういうことだ?オーディン。」
オーディンの言葉に、ラムウが訝しむ。
しかし、オーディンは陽気な声のままで話を続ける。
「そのままの意味です、ラムウ殿。我々の世界を守る為に、人間を利用するのです。」
「ほう?と言うと?」
「人間界には、我ら幻獣界を守る為の「盾」になって貰うのです。
人間界がどうなろうが、知ったことでないのは確かですが、けど、
人間界がなくなれば、次に魔族が狙うのは、この幻獣界だと思われます。
遅かれ早かれですが。」
「うむ、それは一理あるが・・・」
「それに、幻獣界も、まだ守りには不安な要素がございます。
せめて、それがなくなるまでは、人間界と人間を利用し、
「盾」しての役目を負わせるのはどうでしょうか?
その為に、我らはあくまでも、一時的な協力をするだけに留め、
魔族との戦いは全部、人間側に任せればいいのです。
戦いで犠牲が出るのは人間だけ。そうなるよう上手く交渉するのは、
俺がしましょう。」
オーディンは、あくどい笑顔でラムウに、そう提案する。
ラムウは、しばらく黙り、考え込む。
「今まで人間に散々、我々は利用されたのです。
今度は、こちらが利用してもいいはず。人間には過去の過ちを
しっかり清算して貰わなければ。
バハムート王もそう思いませんか?それにフェニックスも。」
オーディンはバハムートとフェニックスにも賛同を求めた。
その時、オーディンはフェニックスにだけ分かるように、
目で合図した。今は黙って聞いて欲しいと。
「そうだな。オーディンの考えも悪くないな。」
「そうですね。オーディンの言うこともあるかと思います。」
バハムートもフェニックスも、オーディンの提案は悪くないと、
賛同してみせた。
「オーディンよ。それにわしも賛同しよう。そう考え、人間を利用すると
言うのなら、悪くはない。」
「そうです、ラムウ殿。せっかく使える駒があるなら、使いましょう。
それに、何も人間への協力は永遠にと言うわけではないでしょう。
人間界が平和になるまでの間。そして、もし人間界が魔界に負けると言う、
最悪な結果になった時は、容赦なく人間界を切り捨てれば良い。
それからでも、遅くはないかと思いますよ?ラムウ殿。」
「ふむ。お主の考えには、恐れ入る。オーディン。」
「お褒めの言葉を頂け、何よりです。」
ラムウとオーディンは互いに不敵に笑い合う。
バハムートとフェニックスも、この2体の幻獣の会話に、
苦笑いするしかなかった。
しかし、どうであれ、オーディンのおかげで、幻獣界は、
人間界に協力出来ることになった。建前上は、人間を利用すると
言う事になってしまったが。
「上手い具合に、どうにかなったな。オーディン。」
会議が終わり、ラムウはさっさと魔法院に帰っていった。
会議室に残ったバハムート達は、まだ会話を続けていた。
「ええ、何とかなりましたね。フェニックスには、不愉快な言い方になってしまったが。」
「いいえ、オーディン。貴方が、ああでも、言わなければ、
今のラムウは絶対に、今回の件は認めなかったでしょう。むしろ、感謝しています。」
「そう言って貰えて良かったです。ラムウには正攻法は
通じないと思いましてね。
それに、俺は嘘は言ってるつもりはないですよ。俺はラムウほど、
人間が嫌いってわけではないですが、だからと言って、フェニックスほど、
人間を信頼してないのも事実ですからね。」
「オーディン。貴方は貴方で、それでいいと思います。」
フェニックスは、オーディンに微笑んでいった。
幻獣同士だからとは言え、すべてが同意出来なくてもいいのだ。
今は、オーディンはやや人間側の味方であるのは変わりない。
それだけで、フェニックスは満足している。
言い方はどうであれ、オーディンの機転で、人間界に
協力出来る方向になったのは間違いではない。
(俺があんな言い方したとしても、ラムウは、俺の本心に気づいてるだろうな。
なんだかんだで、人間を気に入ってることを。それでも、賛成したのは、
ラムウにとっても都合がいいことがあったと言うことか。
やれやれ、フェニックスも先が思いやられそうだな。)
オーディンは心の中で、フェニックスとラムウの人間に関する
確執はまだまだ解決しそうにないなと思った。